心島-ことう-へ
心島―ことう―へ
広い海の上にぽつぽつと
様々な大きさや形の島々がありました
そのなかのひとつに
私の島がありました
ある日 向こうのあの島から
紙飛行機が飛んできました
それには種が乗せられていました
とても小さいものでしたが
地に埋めて水をあげてみたら
色鮮やかな花を咲かせました
その花は種を増やし
殺風景だったこの場所へ
少しずつ広がっていきました
種をくれたあの島を見てみると
あの島は周りの色々な島とのあいだに
種を紙飛行機や綿毛などにのせ
たくさん飛ばしあっていました
私もあの島の真似をして
あの島や周りの島に
いくつかの紙飛行機を放ちましたが
どの島にも届かずに海へ落ちました
だからちゃんと届くように
丈夫な矢にのせて放ちました
しかし種は海へこぼれ落ち
鋭い矢だけが
島々に突き刺さってしまいました
そんなことも知らず
私は種がなくなるまで矢を放ち続けました
しばらくして
無数の矢やミサイルが
飛んでくるようになりました
それは瞬く間に大切な花を散らし
島も大きく削っていきました
私はわずかに残った花とこの島を守るために
高い塀を築きました
砲撃は激しくなっていき
しまいには塀が島を覆ってしまいました
私のもとへは何も辿りつかなくなりました
太陽の光さえもほとんど届かなくなって
残っていた花は枯れていき
この島は荒れていきましたが
また花を散らされ
島を傷つけられることを恐れて
暗闇で震えていることしかできませんでした
そんなある日
わずかに降り注ぐ光を眺めていますと
ふと影が現れました
それは初めて私に種をくれた
あの紙飛行機でした
ふわりと目の前に舞い降りてきましたが
怖いものが乗っているのではないかと
どうしても手を出せませんでした
次の日も
光をつたって紙飛行機が飛んできました
その次の日も
紙飛行機が届けられました
やがて
紙飛行機は積み重なり
大きなやまになりました
このままだと島にあふれてしまいそうなので
ひとつひとつ片付けていくことにしました
紙飛行機を開くたびに
ぽろぽろと何かがこぼれ落ちていきます
暗いのでそれが何なのかわかりません
怖くなりましたが
それでも手を止めませんでした
すべての紙飛行機を片付けたとき
私は気づきました
光が差し込んでいるところに
花が咲いている
小さく弱々しいけれど綺麗な花
光が少なくてかわいそうだと思い
思い切って塀を少し崩しました
すると
広げた穴の光で
ようやく分かりました
いつの間にかこの場所は
小さな花で溢れています
すでに枯れてしまっていた花も
闇の中で種を差し出して待っていました
だからわたしはぽろぽろとなみだを落とし
水をあげました
工夫して痛くない矢を作り
種をのせて放ちました
するとまた新しい花の種が飛んできて
この島に芽吹きました
広い海の上にぽつぽつと
様々な大きさや形の島々がありました
そのなかのひとつに
私の島がありました
この海は広すぎて
届けることは難しい
今日も海を越えて
たくさんの種が飛んでいく
届くように願って




