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嬉し泣き(ToT)

「それでは新、魔王様。ここに血で契約してください」


 俺は渡された針を右手の人差し指に刺し、少し傷を作ってから羊皮紙にサインした。相変わらず文字が下手である。ミミズみたいな文字から指を離すと、フェルナンドが羊皮紙を折り畳んだ。


「契約は成立しました」

「実感全くねえ」

「現実にそんなもん求めたら負けじゃよ。負け。わしはニセ神じゃ。これから悠久の時を共にしようぞ」


 神…もとい、ニセ神が握手を求めてきたので握り返した。


「偽物の神ってなんですか。神なんですかそれ」

「わしは偽物を造り出す神。いわば創造神じゃな」


 並んでみると身長差に驚いた。ニセ神は2メートルはあるが、普通の人より少し細い。おかげで見上げると首が痛い。


「ニセ神様はこちらの世界を創造した内の一柱なんですよ」

「偽物の創造神なのにか?」

「だから嫌いなアイツにまで世界造るために頼みに行ったんじゃよ。表向きにはわしは無関係ということになっておるがの」


 なるほど。それはそれは大変な過去をお持ちで。どうやらニセ神にとってそれはショックなことだったらしいので、俺は感心しているふりをした。が、すぐにジト目で睨まれ、ニセ神には心が読めるのだということを思い出した。

 突然、フェルナンドは自分の胸に片手を当て、俺に正面から向き合った。


「そうです魔王様。ボクの一族は代々魔王様の執事をしているのですが、代替わりごとに名前をつけてもらっているんです。てことで、ボクにぴったりな名前つけてください」

「えー、やだよめんどくさい」


 そんな重いこと……。と、俺が即答すると、フェルナンドの顔がみるみる真っ青になっていった。そして、懐から怪しく光る刃物を取り出し、自らの首元に押し当てる。ナイフに見えるのは気のせいだと思いたい。


「思い止まれフェルナンド!お主はまだわしの百分の一も生きてないじゃろう!?ここで死んだらわしが許さん!邪神になってやる!じゃから…」

「えい」


 ニセ神の思いは届かず、ドスン、という岩壁が壊される意外な音と、ぎゃー、という現実離れした悲鳴が同時に聞こえた。フェルナンドは神を放り投げたのだ。俺を飛ばしたときもだったが、怪力なんだな。


「魔王様はボクを必要としていない……」

「あーっ、もう悪かった!名前考えるよ!」


 なんだこれ。まるでさっきまでと同じじゃないか。魔王になってもそんなに変わってないじゃないか!?フェルナンドは何事もなかったかのようにナイフを懐に仕舞って、ニコニコとした笑顔に戻った。え、騙された?俺、騙されたの?


「あー…でも、お前のことまだ知らないからもうちょっと後でもいいか?じゃないと『ガキ』とか『チビ』ってつけそうだし」

「貴方が魔王でいる限り、子孫にもそれは受け継がれていくっていうのを頭の隅に置いておいてください」

「冗談です」


 こいつの子孫がのっぽで『チビ』って名前だったら大変だな。…と考えていると、


「ぬう……痛い」


 ニセ神が穴から這い出てきた。ハゲかかった髪の毛から、わずかながら石や砂が落ちてくる。しかしフェルナンドは『やあ』という風に片手を挙げ、ニセ神の事を少しも心配しない。さすがは悪魔だ。そこらの一般人とは違う。ニセ神は少々羽も折れてしまっているが大丈夫なのだろうか。


「クッ…もはや心配してくれるのがショウキだけとは」

「魔王様。お部屋にご案内します」

「おおっ、部屋部屋ー」

「前言撤回じゃ」


 成り行きで無視した感じになってしまったが、俺の探索心には勝てない。本当に申し訳ないと思いながらも【(魔)王室】から出て、ニセ神の非難の声を背で受け止めながら、再び洞窟の中を右へ左へとクネクネ進んで行った。ニセ神はついてこないみたいだ。それと思ったんだが、俺は実は迷路やパズルが苦手なので、早くこの道覚えないと迷子になっちゃうな。


「こちらになります」


 俺の部屋、否、【寝室】に着いたようだ。フェルナンドが分厚い扉を力一杯開ける。


「うっおお!すっげー!!」


 フカフカの赤い絨毯に、さらにフカフカの天蓋付きキングサイズベッド。【(魔)王室】並みの大きさのシャンデリアに至っては二つ付いており、明るいことこの上ない。ベッド一つのためになんでこんな大きな部屋を作ったのかが不思議だ。


「もう寝られますか?」

「あー、じゃあそうしよっ」

「かしこまりました。では失礼します」


 そう言ってフェルナンドは魔法でも使ったのか、ベッド脇のランプ以外の明かりを一瞬で消した。急なことで目も慣れないが、そのランプの光を頼りに俺は勢いよくベッドに飛び乗った。


「Fuuuuuuu!!」


 修学旅行でよくやるように、ゴロゴロする。しかし暇だな。元々眠るつもりはなかったが、よく考えてみればやることも無いので、俺はフェルナンドに言った通りに眠ることにした。一度そう考えると、すぐに眠ってしまうものだが、なんと俺が目を覚ましたのは深夜であった。おはよう?

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