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ボス部屋の奥の謎の気配

 皆が階段を下りたのを確認し、俺も階段を下りる。

 ミノタウロスを10体は倒したが、その数が減っているとは思えない。増援の方が多い。

 しかも、反対側からもミノタウロスが来て、このままだと挟み撃ちにあう。


 俺は急いで階段を下りた。


 ……ってミノタウロス、階段を下りて追ってきやがった!

 まじかよ、迷宮の中の魔物って別階層には基本的に移動しないはずなのに……いや、それだけキャロの能力が強力だってことか。


 25階層に下りると広い部屋があり、奥にはボス部屋があった。


「みんな、ボス部屋に入れ! スラッシュ!」


 俺は背後にいるミノタウロスの右足だけを狙ってスラッシュを放つ。

 右足を失ったミノタウロスが階段の途中で崩れ落ち、後続がつっかえた。


 ハルとセバスタンを先頭に、オレゲール、キャロがボス部屋に入った。

 そして、ボス部屋が閉じ始める。


――間にあえぇぇぇ!


 俺は閉じていく扉をすり抜けるように潜った。

 ふぅ、マントをつけていたら絶対マントが扉に挟まっているくらいのギリギリだ。


 これでミノタウロスも追ってこられな――て、あれ?


「ボスもミノタウロスなのかよ」


 天井の高い部屋に、身長5メートルはある金毛の巨大なミノタウロスがいた。

 鼻息を荒くしてこちらを――いや、こちらというよりかはキャロを見下ろしている。

 キャロのスキルがこいつにも効いているのか。


「キングミノタウロスです」

「強いのか?」

「――はい」

「――なら俺が倒す……倒してもボス部屋は開かなかったよな」

「はい、中から扉を開けるか、ボスが再度出現する時間までは開きません。その時は、中にいる人が全員ボス部屋から外に出ると、一度扉が閉じ、扉が開くとボスがいる仕組みになっています」


 中に入ったまま、ボスを独占できない仕組みらしい。

 てか、そろそろボスを倒してゆっくりしたい。

 ずっと戦っていたからな、経験値もたんまり貯まっていそうだ。


 強くなれば、ミノタウロスの大群くらいなんとかなりそうだと思うが。


 ……にしても、さっきからずっと、オレゲールが俺のことを睨み付けてくるんだけど……やっぱりハルの主人だってバレたのかな。


 こりゃ迷宮から脱出できたとしても一悶着ありそうだ。

 でも、とりあえずはキングミノタウロスを倒させてもらうか。


 まずは他の皆と距離を置き、そこから攻撃を――そう思った時だった。


 オレゲールが単身キングミノタウロスに突っ込んだのだ。

 刃もない金色の剣を掲げて。


「覚悟しろ、キングミノタウロス! アランデル王国、エリック=ロブッティ卿が嫡男、オレゲール=ロブッティが相手だ!」


 あの糞馬鹿貴族! 何を考えているんだ!?

 オレゲールの剣が――キングミノタウロスの向う脛……弁慶の泣き所に当たった――刺さっても切れてもいない、当たった。

 弱点と言えば弱点なのだが、キングミノタウロスはギロリとオレゲールを見ると、持っていた巨大な斧をオレゲールに構えた。


「オレゲール様!」


 セバスタンが足を怪我しているとは思えないスピードでオレゲールの前に立ち、背中でその斧を受け止めた。


「セバスタンっ!」


 オレゲールは己の執事の名を呼ぶ……がセバスタンは返事をしない。

 生きているとしても明らかに重症だ。

 キングミノタウロスは二人にとどめを刺そうと斧を再度振り上げた。


「スラッシュ!」


 俺のスラッシュがキングミノタウロスの腕に当たり、追撃を阻止した。ミノタウロスの腕から血が溢れ出る。

 早く治療しないと――もう決めさせてもらう!


 俺は横から大きく跳び、その側頭部を全力で蹴り飛ばした。

 キングミノタウロスの巨体が横に崩れ落ちる。


 そして、俺はアイテムバッグから剣を抜き、その剣をキングミノタウロスの首に突き刺した。


【イチノジョウのレベルが上がった】

【無職スキル:第二職業設定Ⅱを取得した】

【剣士スキル:剣術強化(小)が剣術強化(中)にスキルアップした】

【見習い剣士スキル:剣劣化防止を取得した】

【見習い剣士のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:見習い剣士の極みを取得した】

【拳闘士スキル:物攻強化(微)が物攻強化(小)にスキルアップした】

【狩人スキル:気配探知が気配探知Ⅱにスキルアップした】

【職業:解体士が解放された】


 いろいろと気になることも多いが、今はそれより、セバスタンの治療が先だ。


「セバスタン、セバスタン、しっかりせぬか!」


 オレゲールがセバスタンの身体をゆすっているが、あんなことをしたら逆効果だ!


「どけっ、俺が治療する! プチヒール!」


 オレゲールを突き飛ばし、職業を無職、見習い魔術師、魔術師、見習い錬金術師、見習い法術師に切り替えて魔法防御を高めて治療を開始する。

 傷口が徐々に塞がっていくが、セバスタンの顔色は青い。


 ゲームのような世界だが、ゲームではない、傷は塞がってもそれで万事OKというわけではない。

 明らかに血が足りないのだ。


「病院に連れて行って輸血をしないと……」


 だが、どうする?

 誰がセバスタンを背負っていく?


 俺やハルが背負えば、戦闘要員が減る。それだと抜けられるかわからない。


「キャロが囮になります。キャロが魔物を引き寄せている間に皆さんは逃げてください」


 それしかないか。キャロの能力ならキャロが襲われることはないんだよな。

 なら、別々に逃げたら――


「……ダメだ」


 だが、そう言ったのはオレゲールだった。


「誘惑士のスキルがあれば誘惑士は襲われない――それは誘惑士を魔物が魅力ある異性と見ているからだ。最初は魔物はその娘を取り巻き、次に求愛をする。そして、最後に、やはり彼女は魔物に襲われる――ここが地上なら、そうなる前に太陽が昇るが、ここは迷宮、彼女が地上に脱出する前にミノタウロスの巣に連れ込まれてしまうだろう」

「なら、俺とキャロの二人で先に脱出するのはどうだ。それなら……ん?」


 俺はボス部屋の奥を見る。

 扉がある。


「なぁ、あそこは女神の像がある部屋なんだよな」


 俺はそう確認を取ったうえで、こう言った。


「三つの気配があるんだが……他に誰かいるのか?」

「そんなわけはありません。女神の部屋に誰かがいたらボスは出現しません」

「……でも、確かに気配が三つ。もしかして、別の入り口があるのか? だとしたら、そこから脱出できるかも――」


 俺は一縷の希望を持って、だが、警戒しながら、女神の像のある扉を開けた。


 そこにいたのは――


「……なんでお前等がここにいるんだよ」


 そこにいたのは、ジョフレとエリーズ、そして二人に買われたロバだった。

 二人と一頭はのんきにも女神像の前で居眠りをしていた。


 女神像の部屋には他に入口らしいものはないというのに――こいつら、一体なんで――いや、どうやってここにいるんだ?

 少なくとも、キングミノタウロスはお前等の敵う相手じゃないだろ。

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