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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
番外編

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コミカライズ12巻発売記念「イチノとミリ」

漫画12巻から既に五日経過していますが、発売記念と言ったら発売記念です。

小説12巻(結婚式)の続きとなります。ネタバレを含みますが、ご了承ください。


 夜中の二時。草木も眠ると言われる丑三つ時。

 マイワールドにある新築の家(ログハウスからグレードアップした)の中で、俺、ハル、キャロ、ミリの四者会談が行われていた。

 おかしい、何故こうなった?

 ミリも大人になった(体はまだまだ子供だけど)、俺とハルとキャロの結婚には賛成の立場を出してくれていたはずだ。

 なのに――


「ミリ、なんでここにいるんだ?」

「それはもちろん、おにいと一緒に寝るためよ」


 ミリがさも当然のように言う。


「妹に言うのは本来憚られるが、今日、俺たち新婚初夜なんだ」

「そうね。でも、今日は変なことしない、ううん、できないでしょ?」


 そう言われたら、確かにできない。

 俺たちの結婚式と二次会は、それぞれマレイグルリとマイワールドで二回ずつ行われることになった。

 マレイグルリに招待された人は主にマイワールドに入る事が出来ない人を招待した。

 鈴木たちや、ロリクインスさん、マーガレットさん、マティアスさん、ダイジロウさん、それに俺の主家であるパウロ伯爵をはじめ、多くの人に祝われた。

 ノルンさんに「私、諦めませんから! 三番目でも構いません!」と言われた時はかなり驚いた。

 ジョフレとエリーズは居場所がわからなかったが、何故かケンタウロスが乱入し、料理の大半がこいつに食べられた。

 ただ、ウェディングケーキが、まさかあんなことになるとは……あのせいで俺の体力の約九割が消滅したと言っても過言じゃない。(ルシルの奴、別世界の魔王なのに、こんなところにしゃしゃり出てきやがって)。

 そのせいで意識を失い、マイワールドでの結婚式は夕方から行われるはずが、夜に行われることになった。

 俺の体力に鑑みて、ダークエルフたちは後日でも構わないと言ってくれたが、まぁ、こっちは内輪だけの楽しいホームパーティになるから問題ないと決行。

 直後、女神様たちが乱入した。

 ダークエルフたちは緊張し、ピオニアやニーテは女神のお世話にかかりっきりでスタッフ不足になる。ミリは終始不機嫌そうだったし、マレイグルリから引き続き参加していたノルンさんは女神様が一斉に現れたときに泡を吹いて倒れた。

 とまぁ、そんなわけで俺の心が休まることはない。俺だけでなく、キャロや、ハルまでも精魂尽き果てた。

 結果、夜の営みは明日にすることにして、今日は三人で寝るはず……だったのだが、ミリがやってきた。


「ハルワ、キャロ、譲りなさい」

「俺の意思は? てか、ミリ。二人はお前にとってもう義姉さんなんだから、呼び捨ては……」

「おにいは黙ってて!」


 魔王の威圧に、俺は思わず竦んでしまう。いや、魔王は関係ないか。日本にいたときから、本気のミリの言葉には逆らえなかった。

 いや、でもここは妻となった二人を俺が守らないと。

 嫁と小姑のドロドロ関係なんて、昼ドラの中だけで十分だ。


「ミリ、わがままはやめて――」

「わかりました、ミリ様」

「仕方ありませんね」


 俺がビシッとミリを注意しようとしたところで、ハルとキャロが折れた。


「いや、ハル、キャロ。今日は――」

「ご主人様、今日のマイワールドでの披露宴は皆さん緊張していたようなので、明日、再度ささやかなお祝いをしましょう」

「キャロとイチノ様の新婚初夜は明日ということで」


 いやいや、二人とも物分かり良すぎるだろ。

 こうして、夫婦三人で使うはずだったキングサイズのベッドに、俺とミリの二人が並んで座ることになった。

 なに、この状況。


「はぁ……まぁいいや。寝るか」

「……ごめん、おにい。我儘言って」

「いや、いいよ」


 考えてみれば、ミリも魔王の生まれ変わりで女神になってしまったとはいえ、まだ中学生だ(……いささか前置きが強烈過ぎるが)。

 両親が死んで、親代わり(になれたかどうかはわからないけれど)の俺が結婚すれば寂しく思うのも仕方ないか。


「ノルン、三番目でもいいって言ってたね」

「……あぁ、それな……冗談だと思いたい……なんて死んでも言えないや。本気だったもんな」


 思えば、あの告白大会の日に彼女が俺を川魚の店に誘ってくれたとき、彼女の気持ちに気付くべきだった。

 いつから俺は鈍感系主人公になったんだ。


「受け入れるの?」

「さっき、ハルとキャロにも聞かれたが、二人きりになったときに謝るよ。ノルンさんは大切な人だし、可愛いけど、でもハルたちとは違う」

「……おにいらしいね。ハーレム作りたいとか言わないの?」

「言わないよ。正直、二人と結婚しただけでも幸せで死にそうで、これ以上は……そうだな、子供でもできたらそれ以上の幸せを感じるのかな。どうする? お前、叔母さんって呼ばれるんだぞ」

「言わせないよ。私のことはちゃんとミリお姉さんって呼ばせるんだから」

「ぷっ……お前がお姉さん?」


 俺は思わず笑ってしまった。

 どこまでいっても妹であるこいつが姉と呼ばれる未来が想像できない。

 ていうか、こいつ、女神になってしまったから、もしかして、トレールール様のように一生肉体が成長しないのだろうか?

 一生ロリ?

 うわ、やってしまった。

 いまからでもミリを人間に戻す方法を考えないと……


「おにい、別に私は女神になったことは気にしてないよ。魔王の時でも不老状態だったから変わりないし。千年くらい経って死にたくなったら、後継者適当に見つけて死ぬし」


 まるでミリが俺の心を見透かしたかのように言った。

 そっか、千年か。


「ミリ、お前って不老の薬、今でも作れるのか?」

「まぁね」

「じゃあ、俺も千年くらい付き合うよ。ていうか、俺が死んだらマイワールドの扉を開けることができなくなって、ダークエルフたちも困るだろうし。あいつらもほとぼりが冷めたときには元の大森林に戻りたいだろうからな」

「おにい、本気で言ってるの?」

「ああ、本気だぞ。ていうか、ダークエルフたちも長寿らしいし、ピオニアやニーテ、シーナ三号だって不老だろ? あぁ、ハルとキャロは俺たちに付き合うかどうかはわからないが、でも、退屈はしないって」

「……おにい、本当に……」


 ミリはそう言うと、突然、服の裾を掴んだ。

 と思った次の瞬間には、彼女は服を脱ぎ捨てていた。


「……おにい、好き。お兄ちゃんとしてじゃなくて、あなたが一人の男性として好き。あの時、一生妹でいたいって言ったけど、本当は――」


 ミリはそう言って、俺に抱き着く。

 その言葉に俺は心底驚く――ことはない。

 ノルンさんに関して言えば俺は鈍感系主人公だったかもしれないが、ミリとは彼女が生まれてからずっと一緒だった。

 彼女が俺に抱いていた感情を理解できないほど俺は愚かではない。

 それでも、最初は、「将来大きくなったらパパと結婚するの!」という子供のおままごとのような感情だと思っていたし、それが長い間続いているだけだと思っていた。

 いつかは本当に好きな人ができて、その人と結婚するのだと。


「ミリ。俺はお前のことが大好きだ」

「おにい……」

「おそらく、世界で一番お前のことを愛している。赤ん坊のころから見てきた。俺にとってお前は、誰にも変えられないたった一人の妹なんだ……妹なんだ」

「……うん、知ってる」


 ミリはそう言って俺の腕を引っ張りながら、布団に倒れこんだ。

 俺もそれに抵抗せずにミリの横で仰向けになりながら、布団を掛ける。


「まぁ、千年もあるんだし、五百年くらいは妹のままでいいかな」


 五百年か……そりゃまた先の長いプランだな。

 俺なんて、明日の朝ごはんに何を食べるかすら決まっていないのに。


「おにい、前に言ったよね。地球での神話や物語で、兄妹の結婚って珍しくないんだよ」

「……お前な、まだ言うのかよ。創作物の話で実際にあった話じゃ……」

「神話を否定するのはダメだよ。それに、最初にコショマーレから聞かなかった? 地球でのゲームやファンタジー小説って、こっちの世界の影響を受けている物が多いって。それって、神話も当てはまるんじゃない?」

「……え?」

「こっちの世界でも近親婚は禁忌とされているんだけどさ、私が女神になったのなら、その禁忌から外れるんじゃない?」

「お前、まさか――」

「正解! おにいの可愛い妹のミリは、妹でありながらおにいと結婚する方法を考えた結果、女神になったのです!」


 嘘だろ、世界を救うためでも、元魔王として責任を取るためでもなく、俺と結婚するために女神になったっていうのか?

 いやいや、まさか――でも、ミリならあり得る気がする。


「じゃ、今日は普通に寝ようね、おにい」

「あ……あぁ……」


 しばらくたって、可愛い寝息が聞こえて来た。

 その横顔を見て、俺は考える。

 五百年後、果たして俺とミリの関係はどうなっているんだろうか?

 そんなことを考えながら、俺は思う。


 せめて、寝る前に服をきちんと着てくれと。

番外編はミリ回でした。

好き嫌い別れるミリですが、作者が一番好きなキャラです。


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