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幕間話 思わぬ再会

 ジョフレとエリーズの前に現れた老婆――ミレミアがケンタウロスの元飼い主だと名乗った。

 ジョフレとエリーズは顔を見合わせて頷く。

「嘘だな」

「嘘だね」

 ふたりは、ミレミアの話を嘘だと断定した。

 それを聞いて、ミレミアは困惑する様子もなく、笑顔で尋ねた。

「どうしてそう思うの?」

 彼女の問いに、ふたりは謎解きの答えを語り合うように楽しそうに言った。

「いや、俺もエリーズも、ケンタウロスの元々の飼い主が婆ちゃんなのかどうかはわからないけれどさ――でもずっとここに監禁されていたっていうのは嘘だろ?」

「だって、お婆ちゃん、さっき私たちの後ろにいたよね。どうやって先回りしたかはわからないけど」

 ジョフレとエリーズがそう言うと、ミレミアは驚き目を見開いた。

「気付いていたの?」

「当然だろ。そもそも、あれだけの人数で動かれて気付かないはずがないだろ」

「私が門を開けた時、『ありがとう』って言ったよね?」

「あれが聞こえていたの――そう、道中の不思議な会話は全部演技だったっていうわけね」

「「演技?」」

 ジョフレとエリーズはふたりで首を傾げた。

 ふたりは尾行されていることには気付いていたが、だからといってなにか特別な演技をした覚えはない。

 いつも通り過ごしていた。

「でも、信じてくれるかしら? 私がこの子の元々の飼い主だったことは本当だし、ここに監禁されたことも本当よ。ずっと――というのは嘘だけどね」

「なんだ、そうなのか。でも、今のケンタウロスの飼い主は俺たちだぞ」

「うん。ガリソンから買った名馬だもんね」

 ジョフレとエリーズがケンタウロスの所有権を主張したそのとき、彼らが入ってきた場所から先ほどまでジョフレたちを尾行していた数人のフードを被った者たちがやってくる。

「無理やり奪おうっていうのか?」

 ジョフレが不敵な笑みを浮かべ剣を構え、エリーズも鞭を構えた。

「いいえ、違うわ。彼らはここの牢獄に無実の罪で囚われている悪魔族の救出にやってきたのよ」

 ミレミアがそう言うと、彼らは牢の扉をいとも簡単に開けて地下牢中に散っていった

 ただひとり、ミレミアと一緒に残った人間を除き。

「はぁ……これで俺も脱獄幇助の仲間入りか……」

 その声を聞いて、ジョフレとエリーズは先ほどよりも驚いた。

 彼らにとって、その声はとても懐かしいものだったから。

「なぁ、あんた――もしかして」

 ジョフレが尋ねると、一人残った男はフードを外して顔を見せた。

「よぉ、久しぶりだな。ジョフレ、エリーズ」

「「ガリソン!」」

 そう、そこにいたのはふたりとかつて一緒にパーティを組んでいた牧場主――ガリソンだったのだ。

「なんでお前がここにいるんだ?」

「牧場クビになったの?」

「俺の牧場だ! クビになってたまるかっ!」

 ガリソンが叫んだが、

「三人とも静かに――ここが敵地だって忘れないように」

 とミレミアに釘を刺され、やりにくそうに頭を掻いた。

「ああ、いろいろあって、俺の雇い主に悪魔族を助けるように言われて、西大陸の迷宮にある秘密の転移陣を使ってやってきたんだ。ただ、魔王が作った厄介な扉のせいで困っていたら、お前らがどうやったのか扉を開けてな――その後は尾行させてもらったんだよ。お前らの目的もわからなかったしな」

「そうなんだ。じゃあ、また一緒に冒険できるな」

「私たち、勇者とモンスターマスターになったんだよ! すぐに元に戻っちゃったけど、それからも強くなってね」

「あぁ、なるほどなるほど。自分が勇者とモンスターマスターになったと勘違いして、その勘違いの元を失って元に戻ったと思って、それでもレベルを上げて強くなったのか。頑張ったんだな」

 ガリソンがヤケクソ気味に言った。

 そして、それはズバリ的を射ていた。伊達にジョフレとエリーズと最も長くパーティを組んでいない。

 その間にも先ほど散っていた者たちが悪魔族を連れて戻ってきた。

 悪魔族たちは現状を飲み込めない様子だが、このままでは最悪死罪になることを覚悟していたので、彼らに従い秘密の抜け道から脱出していく。

「ジョフレ、エリーズ。お前たちも来い」

「どこに?」

「誰のところに?」

「本物の勇者――アレッシオのところだよ」

 ジョフレとエリーズは顔を見合わせると、特に考えることもなく頷いた。

「そこでなにをしているっ!」

 その時、見張りに気付かれた。ジョフレとエリーズは完全に顔を見られたが、ふたりは勇者に久しぶりに会えることを喜び、秘密の抜け道を戻っていったのだった。

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