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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
マレイグルリ編

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ひよこ鑑別師

 鈴木に呪いがかけられた。身代わり人形のおかげで大事には至らずに済んだ。

 身代わり人形により呪いが防がれたことは呪術者にもわからないし、呪いには代償が必要だという。同じ相手に二度、三度と呪いをかけることはまずないだろう。

 それでも一応鈴木にディスペルをかけておいた。

 鈴木はため息をつく。

「こんな時に毛利さんがいたらなぁ」

「毛利さん? 日本人の転移者か?」

「そう。毛利モトナリさん」

 鈴木が思わぬその名を告げた。

「毛利元就って、あの三本の矢のっ!?」

 戦国武将じゃないかっ! 生きていたら五百歳超えているんじゃないか?

 いや、でもミリって前世では千年以上魔王をやっていたんだし、歴史上の人物がいてもおかしくないか。

 あれ? でも転移者って若い人間が選ばれるってテト様が言っていたよな?

 毛利元就が何歳で死んだかなんて覚えていないけれど、三本の矢を教える時に成長していた息子が三人もいるくらいだし、十代や二十代ではなかったはずだ。

「いや、モトナリっていうのはこっちの名前と日本でのあだ名みたいなもので、本名は毛利素也(モトヤ)さん。普通に五十歳くらいのおじさんで、こっちの世界に来たのは三十年以上前だって言ってたよ」

 鈴木に漢字を説明されて、俺は納得した。確かに素也ってモトナリとも読めるもんな。

「その毛利さんってすごい人なのか?」

「なんか、素也さんがこっちの世界に転移するときは、有名人の探検隊のテレビ番組が流行っていた時期らしくて、天恵として探索者という職業についたらしいんだよ」

 探検隊のテレビ番組って、ジャングルの秘境で幻の生物を発見? とかそういうノリのテレビ番組だったっけ? 確か、俺が子供の頃にも二代目隊長のもとで放送をしていた気がする。

 幻の生物を発見どころか、海で大怪獣に襲われたり、森の奥で巨大な光る木とそれを守る一族と遭遇したり、砂漠で幻の地下空間を発見したり、山で幻のドラゴンと死闘を繰り広げたりと俺がやっていることの方が探検隊なのではないかと思えてくる。そういえば、あの砂漠の遺跡ってどうなったんだろ? 魔法で大量の水を流し込んでいまはオアシスの底に沈んでしまっているはずだけど。

「探索者ってどんなスキルがあるんだ?」

「面白いスキルがいっぱいあるよ。たとえば迷宮地図ってスキルは、初めて行く迷宮でもその構造が丸わかりになるんだ。幻想壁の隠し部屋とか罠の場所とか敵の場所とか」

「そりゃ便利だ。俺なんて迷宮攻略はハルの嗅覚頼りなところがあるからな。でも、今回の事件にどう役立つんだ?」

「探索者のスキルの中には、お宝探知っていう珍しいアイテムが近くにあればわかるってものもあってね。犯人がもしも職奪の宝石を対価に呪術を発動させているのなら、そのスキルを使って探し出すことができるかもしれないって思ったんだよ」

 職奪の宝石のある場所がわかる職業、職奪の宝石。

 狂乱化の呪いの代償を肩代わりできると言われている。

 確かに、探索者のスキルでその宝石の在処がわかれば、呪術師の居場所を探るのも容易いだろう。


 その日の夜、いざというときの連絡用にハルに鈴木の家で留守番を頼んだ俺は、マイワールドで宣言した。

「また求職スキルを使おうと思う」

 俺はキャロに事情を説明し、そう宣言した。

 もちろん、狙いは探索者になることだ。

「そう都合よく狙った職業が出るでしょうか?」

「いや、これまでも狙った職業ではないが、俺にとって必要な職業は出てきたんだ」

 コピーキャットのスキルがなかったら、俺は海賊のところに転移できずにニックプラン公国でダークエルフたちを助けることができなかった。

 魔法捜査研究員の職業がなければ、狂乱化の呪いに気付くことができなかった。

 勿論、これまでハズレ職業も数多くあった。

 だが、俺がこの世界にやってきたこと、無職スキルを手にしたこと、これが世界の破滅を救う運命によるものであり、今回の事件がその世界の破滅と関係しているのだとするのなら、きっとご都合主義的な職業に転職できるだろう。

 もしも探索者に転職できたとすれば、あとはマイワールドで養殖ジュエルタートルを倒して一気にレベルを上げればいいだけの話だ。

 欠点として、求職スキルを使ったら一日間、他の職業のレベルが上がらなくなるのだが、どのみち迷宮が封鎖されているいま、魔物を倒してレベルアップする手段は限られているので問題ない。

 とりあえず、運だけは上げておこう。

 第二職業、第三職業を遊び人や狩人に変更した。

 そして――

「求職!」

 スキルを発動させた。

 転職可能な職業一覧が表示される。

  ――――――――――――――――――――

  転職する職業を選んでください。

  (選択しない場合、五分後に自動で選択されます)


  悪代官:LV1

  子供社長:LV1

  司書:LV1

  邪狂戦士:LV1

  ひよこ鑑別師:LV1

  ――――――――――――――――――――


「イチノ様、どうでしたか?」

「八割、変な職業だったよ。当たりはない」

 俺は落胆しながら、キャロに転職できる職業を説明した。

 というか、本当に、まともな職業が司書しかない。

 悪代官って、犯罪職なのだろうか? この前、「あーれー」をしたせいか?

 子供社長って、二十歳の俺が転職できるものなのか? ていうか、この世界に会社というシステムがあるのだろうか?

 邪狂戦士って、俺は絶対に転職したらダメな奴だろ。こんなところで混乱状態になったら一時間の間にこの町の中心にブースト太古の浄化炎(エンシェントノヴァ)を打ち込んで焦土へとしてしまう。なにより目の前のキャロを殺してしまいかねない。

 ひよこ鑑別師って、これこそどうしろっていうんだ? ひよこ鑑定士じゃないのか?

 そもそも、ひよこの雄雌を区別すること以外にできることがあるのか?

「ハハハ……」

 俺の職業のラインナップを聞いて、キャロは乾いた笑い声を出した。

「ですが、ひよこ鑑別師は少しいい職業ですね」

「そうなのか?」

 ひよこ鑑別師だぞ?

 狭い部屋で箱いっぱいのひよこを掴み、その肛門を見て雄雌を区別する仕事だろ?

「はい。養鶏が盛んな地域では、ひよこ鑑別師は豪邸に住めるって言われています。転職条件が解明されていないユニーク職業ですから成り手が非常に少ないのです」

「マジかっ!?」

 ひよこなんて成長したら雄なのか雌なのか区別が付くようになるから、雛のうちはまとめて育てればいいだけの話じゃないのか? と思ったが、なんでも子供のうちから雄雌を目的別で育てることにより、卵を産みやすい雌鶏、良質な肉の雄鶏に育つんだそうだ。

 スキルがなくても雄雌の区別を付ける術はあるのだが、速度が大きく異なり、さらには

卵が黄身がひとつの卵か双子の卵か、有精卵か無精卵かまで鑑定できるようになるという。

 そこまで来るとひよこ鑑別師の域を超えて、もはや卵鑑別師だろ――と思えてくる。

「マイワールドでも真っ黒な鶏を育てているから、いっそひよこ鑑別師にでも転職するか……旅が終わったらひよこの鑑別をして豪邸を立てるのも悪くないな」

 正直、無職の俺からしたらひよこ鑑別師の仕事は少し憧れるところもあった。

 あの作業、本当に働いているという感じだもんな。

 俺がさっそくひよこ鑑別師になろうと思ったところで、キャロが思わぬ提案をしてきた。

「……ご主人様、司書になられてはいかがでしょう?」

「司書?」

 司書って図書館の本を管理する仕事だよな?

 まともな職業ではあるが、逆に言えば面白みのない職業でもある。

「普通の職業みたいだけど、珍しいのか?」

「はい、とても珍しいです。転職条件は試験を受ければいいだけですが、その難易度も高いですし、なにより需要がありません」

 日本だと、司書って図書館には必ずいるイメージだけど……あ、そうか。そもそも異世界に図書館っていうのはほとんどないのか。本屋もあるし、奴隷だったキャロが子供の頃から読んでいたくらいだからかなり貴重ということはないけれど、それでも無料で誰でも本を借りられるようなものではない。そのため、司書が働ける場所は、それこそ貴族が住む貴族街にあるかもしれない図書館だとか、どこかの議会場の議事録を管理する保管所みたいな場所に限られるだろう。当然、司書の需要も低くなる。

「どういうスキルが使えるんだ?」

「基本は本の管理ですね。レベルを上げれば本の補修や複写なども可能ですし、本を鑑定することで大まかなあらすじまで理解できます」

 ますますわからん。

 なんでキャロはこんな職業を俺に勧めるのだろうか?

「そして、最初に覚えるスキルは書籍検索。スキル使用者の範囲内にある書籍の場所を調べることができます。最初は本のタイトルでの検索しかできませんが、スキルアップすれば作者別にその本の位置を把握することができます」

「それは散らかった部屋で目的の本を調べるには便利だが――ん? いや、もしかしてそれって――」

「はい。ミルキーさんが書いた本の場所を調べることも可能です」

 よし、それだけ聞けば迷ってる暇はない。

 五分経過して自動的に職業が選択され、邪狂戦士になれば大変だしな。

【第一職業を司書に設定しました】

 よし、これで二十四時間、俺の第一職業は司書だ。

 ミリの、ミルキーの本を買うようにという指示のもと、彼女の居場所を探してきたが、いまだに見つかる様子はない。

 しかし、本といえばほとんど漫画しか読んでこなかった俺が、まさか司書になるなんて、日本にいた頃は夢にも思わなかった――それを言ったら異世界に転移してることのほうがもっと非現実的だけど。

「よし、後はレベルを上げるだけだな。司書って本を読めばレベルが上がるのか?」

「司書のような特別な職業のレベル上げの方法はキャロも知らないですね」

 いくらキャロが物知りでもそこまではわからないか。

 むしろ、司書が覚えるスキルを知っているだけでも凄いくらいだ。

 俺とキャロは一度、鈴木の家に戻った。

 ハルが椅子から降りて俺の前に両膝をつき、三つ指を立てて、出迎える。

「ご主人様、お帰りなさいませ」

 どうやらラナさんから主人の出迎え方を教わったらしい。

「あぁ、ただいま。明日の朝にでもジュエルタートルを倒してレベルを上げるから、ハルも手伝ってくれ」

「はい、かしこまりました」

 迷宮に出入りはできそうにないからな。


「楠君。さっき、衛兵から話を聞いて、中級者向けの迷宮でレアモンスターの発生に続いて、今度は魔物が大量発生しているそうなんだ。冒険者に間引きを依頼しているんだけどうまくいっていないみたいなんだ。このままだと迷宮外に溢れる危険があるけど、衛兵も町の状態が状態だけに迷宮まで人員が割けないらしく、僕が明日から魔物を間引きに行くことになったんだよ。楠君も明日、手伝ってくれないかな?」

 不謹慎な話かもしれないがこれは運がいい。

 職業を運特化にした効果があったのだろうか?

「勿論手伝う。ハルも一緒に行くぞ。キャロは緊急時に連絡が取れるように鈴木の家で待機を頼む。ついでに、これを持っていてくれ」

「これは――拡声札ですか?」

 キャロが札を受け取り、尋ねた。

「あ、間違えた――こっちだった」

「通信札ですね。畏まりました、緊急の用事がありましたら連絡いたします」

 俺は予め作りだめしておいた通信札の片割れをキャロに渡した。

WEB版だと求職スキル、書籍版だと職業安定所スキルになっています。

職業安定所なのに、全然職業が安定していないので、名前を間違えたかな? と思っています。

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