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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
マレイグルリ編

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速度があっても避けられない攻撃

 俺はマイワールドの皆を集めて、俺がやりたいことについて相談した。

 狂乱化の呪いの解決。悪魔族の保護。そしてフルートを仲間のもとに返すこと。

「狂乱化の呪いは、全員の血液検査が終われば解決するのではないですか?」

 ハルが尋ねた。時間はかかるが、それが一番の解決方法に思えるし、実際、血液鑑定は現在も魔捜研で行われている。

 しかし、キャロが異を唱えた。

「時間がかかりすぎますし、それに根本的な問題が解決しません」

「根本的な問題?」

 俺が尋ねると、キャロは指を一本立てて言った。

「呪いの原因がわからないままです。マレイグルリの包囲は狂乱化の呪いにかかっている人と同時に、呪術師の封じ込めの意味もありますから」

「そうか……逆に言えばその呪術師さえ捕まえれば誰に呪いをかけたかがわかるわけか。どうやって見つければいいのかはわからないけれど」

「マスターの職業鑑定で呪術師を特定できないのか?」

 俺が悩んでいると、ニーテが手を上げて言ったが、俺はそれは完全ではないと思った。

「町でも呪術師の洗い出しはやっているみたいだ。怪しそうな人物の職業証明書をチェックしているそうだ。ただ、転職しても覚えたスキルは使えるからな。呪術師が既に転職している可能性がある以上、絶対じゃない」

 勿論手段としては使える。

 職業証明書は偽造したり、非合法な手段で入手が可能なので、職業鑑定はなるべく使っていきたい。

「…………」

 ダークエルフの少女が手を上げた。

 話したことのない少女だ。

「えっと、名前は?」

「ロロム」

 彼女はそう名乗った。

「ロロムはダークエルフの呪術師です」

 ダークエルフにも呪術師がいたのか。

【呪術師:LV7】

 職業鑑定で確かめた。

 レベルが高いのかはわからない。

「ロロム、なにか呪術師としての意見はあるのか?」

 彼女は無言で、俺に藁で編まれた人形を四つ渡した。小さくて可愛らしい。

「これは?」

 俺は尋ねると、ロロムは困ったようにララエルを見た。

「すみません、イチノジョウ様。呪術師は言霊を操ることができるのですが、未熟なうちはその言霊が暴走してしまいかねないので、ロロムはあまり喋らないようにしているんです」

「制御が難しいスキルを持っていると大変ですからね」

 キャロが言った。彼女も誘惑士のスキルで苦労したから、ロロムの気持ちが少しわかるのだろう。

「ロロムさん、それはもしかして、身代わり人形ではありませんか?」

 キャロの問いに、ロロムは頷いた。

 身代わり人形?

「身代わり人形は、呪いを代わりに受けてくれる人形です。イチノ様が呪いにかからないように用意したのでしょう」

「そりゃ助かる。ありがとうな、ロロム」

 俺が言うと、ロロムは顔を赤面させた。

 四つあるので、俺、ハル、キャロと一人ずつ使って、残り一個は鈴木に持たせておこう。

 ロロムはさらに一枚の手紙を俺に渡した。

 口に出すのはダメでも、文字に起こしたらいいのか。

 紙にはこう書かれていた。

『呪術師の私見を述べます。遠距離での呪術の発動条件として、対象の毛や爪、血液などが必要です。落ちている髪の毛だけでも術の発動は可能ですが、狂乱化の呪いのような強力な呪術は失敗時の反動が非常に大きいので、確実に術を発動させるには、髪の毛だけでなく、対象者の念の篭っている物を使っているでしょう。術者の特定を優先するなら、対象者の私物の入手経路を探るのが良いかもしれません』

 なるほど、これは役に立つ情報だ。

 俺はロロムに礼を言った。

 被害者の私物か。

 これまでの被害者に、なにか盗まれた物、無くなった物がないか調べてもらわないといけないな。

「あの、イチノジョウ様! 私から質問があります!」

 そう言って手を上げたのはリリアナだった。

「なんだ?」

「同人誌の即売会が中止になったため、ミルキーという女性の行方がわからなくなったと聞きましたが、本当に完全に中止になったのでしょうか?」

 その質問に、俺はキャロを見た。

 彼女は俺の考えをくみ取り、無言で頷く。

「ああ、間違いないだろう」

「表の即売会は中止になっていますが、同人誌は禁書扱い、もともとアンダーグラウンドで売買されていたと聞きます。それなら、有志が集まって裏で取引をしている会場がどこかにあるのではないでしょうか?」

 リリアナの質問は、俺にとって考えもしないものだった。

 そうか、どこか別の場所でこっそりと同人誌の売買が行われているかもしれない。

「キャロが調べてみます」

 俺が頼む前に、キャロが「これは自分の役割です」と言わんかのように言った。

 狂乱化の呪いについてある程度まとまったところで、俺は次の話をした。

「次に、悪魔族について相談がある」


 価値ある意見が出た話し合いは終わり、俺はフルートに会いに行った。

 彼女がいたのは、見たこともない施設だった。

「教会?」

 マイワールドに、いつの間にか女神教会ができていた。

 ピオニアから教えてもらった場所はここなんだが、悪魔の居場所が教会ってどうなんだ?

 そう思って教会の扉を開けた。

 そこにいたのは一人の修道女だった。

 それはフルートだった。

「なんで修道服なんだ?」

「あぁ……あんたか。これはピオニアって嬢ちゃんに用意してもらったんだ」

「それはわかるが、フルートにとって教会は敵だろ?」

「全部の教会が敵ってわけじゃないさ。修道服も違うだろ?」

 そう言われてみれば、マイルが着ていたものや、他の修道女の修道服とは異なるので、女神教会のそれとは違うようだ。

「魔神教とかそういうのでもあるのか?」

「あはは、魔神って、そんなおとぎ話信じているのかい?」

 フルートはおかしそうに笑った。

「まぁ、女神様を奉っているけれど、派閥が違うのさ。こんな場所なら仲間を助けにいくこともできないからね。神頼みってことでこうして修道服を作ってもらったのさ。似合うだろ?」

 悪魔の羽と角、そして修道服の組み合わせは一見ミスマッチに思えるが、日本ではこの手の組み合わせはむしろ王道だったりするので、確かに似合っていると言えるだろう。

「……女神像はまだないのか?」

 教会といえば女神像があるイメージだったが。

 でも、狭い教会だし、女神像を飾る余裕はないか。

「すまなかったね。ニーテから聞いたよ。あんたが悪魔族のためになんとかしたいと思ってくれていることも、それが許されるような立場じゃないことも」

「……悪いな」

「いいさ。あんたの言う通り、私ひとりあっちに行ったところで、捕まって処刑されるのがオチさ。それどころか、下手すれば他のみんなに迷惑がかかってしまうことをするかもしれない。でも、この力があれば鉄格子くらいなら壊せるかって思ったんだ」

「この力?」

「破壊――邪狂戦士だった頃に覚えたらしいスキルだよ」

 彼女はそう言うと、この教会を建てたときのあまり、室内に残ったままの木材を殴りつけた。すると、木材が真っ二つに割れる。

 彼女の現在の職業は贖罪者――平民よりも遥かに劣るそんなステータスで木材を割るのは本来、不可能だ。

「無生物に対してのみ圧倒的な威力を誇る攻撃だよ。一時間に一回しか使えないのと生物相手にはダメージが半分になるのは厄介だけどね」

 そうか、邪狂戦士の時に扉を壊したのはそのスキルだったのか。

 便利そうなので、コピーキャットのフェイクアタックに登録しておこう。

「でも、一時間に一回じゃ、さすがに脱獄は難しいだろ」

「だろうね。でもさ、教会の地下牢には――いや、なんでもない」

 フルートが何か言おうとした。

 いったいなにを?

「それより、私になんのようだい? さっきのお仕置きにでもきたのか? 胸も触られたことだし、もうどうにでもなれだ」

 胸も触られたって、押し付けてきたのはお前だろうが。

 そう言いたいが、これから話すことが大事だ。

「いいや、俺の決意を報告しに来た」

「決意?」

「ああ。悪魔族のことだ」

 俺は小さく息を吸って言った。

「捕まった悪魔族のことは諦めない。考える。できれば助ける。なんとかできる方法が思いつけばなんとかする」

 そう言うと、フルートの目は点になった。

 そして――

「は? なんとかできる方法が思いつけばなんとかするって思いつかなかったらどうするんだよ」

「思いつくまで考えるさ。それでもダメなら相談する。俺の知り合いには貴族や王族もいる。教会の人間もいるし、勇者の仲間だっているんだ。それに、金を稼ぐ手段もある。奴隷堕ちになるようなら金を払って解決する。賄賂でなんとかなるならその分の金も稼ぐ。とりあえず、狂乱化の呪いの騒動が終わってからになるがな」

 それが、さっきの相談で出た結論だ。

「王族や貴族に相談? 賄賂? あんた、無茶苦茶だね」

 フルートは驚いたというよりかは、呆れているようだ。

 自分で言っていてバカだというのはわかる。

「大聖堂に忍び込んで全員脱獄させるよりははるかに現実的だろ」

「くくっ、確かにそれは言えてるよ――アハハハハハ」

 フルートは笑いがこらえきれなくなったかのように笑いだした。

「でも、なんでそこまで悪魔族のためにしてくれるんだい? 賄賂だとか、奴隷になったみんなを買うだとか、金貨十枚じゃ済まないだろ?」

「理由って言われてもなぁ……たとえば、フルートがここにずっといるとすると、殺されそうになるのは面倒だし、かといってフルートを閉じ込めたりして行動を制限するのも寝ざめが悪いし……」

「マスターは女の子が大好きだからデス」

 いつの間にか現れたシーナ三号が、とんでもないことを言い出した。

「マスターは可愛い女の子が困っていたら放っておけない性格なのデス。だから、後輩がいくらマスターの行動理念について勘ぐっても無駄なのデス」

「お前なぁ……いくらなんでもその言い方は」

「そうか。そうだよな、私って可愛いもんな。うん、それは仕方がない」

 今度はフルートがとんでもないことを言い出した。

 そりゃ、平均的な女性と比べたら可愛いことは間違いないが。

「なら――」

 フルートはそう言うと、俺の前に立ち、顔をじっと見つめると、突然頬にキスをしてきた。

「お礼の前金ってことでこれでいいか? ……その、私の初めてにそこまで価値があるかはわからないが」

「……あぁ、十分だ」

 本当に恥ずかしそうに――自分からキスをするなど初めてのフルートに対し、俺はそう言うのがやっとだった。

 女の子のキスを避けるには、速度がいくらあっても足りない。

 相手が可愛い女の子ならば猶更だ。

 しかし、これで、「悪魔族をできれば助ける」ではなく、「悪魔族をできるかぎり助ける」になってしまったな。

成長チート11巻は3月13日発売、コミカライズ版成長チート7巻は3月23日発売です


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