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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
マレイグルリ編

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四面楚歌

 ツァオバール王国の首都、マレイグルリは、戦後かつてない厳戒態勢が敷かれていた。

 都市をぐるりと取り囲むのは同じツァオバール軍の兵たち。

 その数は万を超えると言われている。

「しかし、やりすぎじゃないっすかね。誰も町から出さないことが目的なら、門を封鎖するだけでも十分だと思うんですが」

 新米の衛兵は外壁の上から、冷や汗を流しながら言った。

 少し身を乗り出したところ、攻城用の投石機が目についたので一歩下がった。

 一度息を吐いて、呼吸を整える。

「任務に集中しろ」

「わかってるっすけど。それより、先輩。あれだけの兵、どこにいたんっすか?」

「王国軍だ。王都にいたに決まってるだろ。ほら、あそこの天幕が見えるだろ?」

 先輩の衛兵が、正門から見て中央奥に見える赤色の豪華なテントを見る。

 決して指を差すことはない。

「あの中に国王陛下がいらっしゃるらしい」

「は? ただの病人の封じ込みだけに国王軍だけでなく国王陛下自らいらっしゃってるんっすか?」

「それだけ、狂乱化の呪いが恐ろしいってことだ」

 先輩の衛兵はそう言って、反対側を見た。

 いまでも門では住民たちの対応に追われている。

 当然だ。

 正門だけでなく、すべての門が封鎖されただけでなく、狂乱化の呪いについての説明も行えない。

 狂乱化の呪いは血液鑑定を行えば調べることができる。

 だが、血液鑑定を行うことができる魔学捜査研究員の数が少ないため、全員の鑑定を行うことができない。

 そして、国王軍の使者が言うには、狂乱化の呪いをばら撒いている呪術師が町の中にいるはずだから、その犯人を確保するまでは外に出すことはできない。

「はぁ……なんでもいいから早く終わってくれないっすかね。俺、同人誌の即売会に行きたかったのに、これじゃ全部売り切れるっすよ」

「安心しろ、こんな状態で即売会があるわけないだろ。延期だ、延期」

「本当っすか? あれ? でもなんで先輩、そんなこと知ってるんっすか? あ、そういえば先輩、今日、前から有休を希望していたっすよね?」

「余計なことを思い出すな」

「そうっすかね……ん?」

 突然、新人の衛兵が上を見上げた。

「どうした?」

「視線を感じたんっすけど、気のせいっすかね?」

「上から視線? 鳥でもいたのか?」

「たぶん気のせいっす。それより、昼飯はまだっすかね」

 新人の衛兵はそう言って、ため息をついた。


   ※※※


 勘のいい兵もいるものだなと鷹の目を解除した。

 視線に気付くスキルでもあるのだろうか?

 どういう会話をしていたのかはわからなかったが、絶対に上空(こっち)を見ていたよな。

「イチノ様、いかがでしたか?」

「城壁の上の兵の数は多くて緊張感はあるな。町の外の軍の武装は投石機などの攻城兵器もあったけれど、数はそれほど多くない。騎兵は二百程かな。やっぱり中から誰も出さない配置ってところか」

「そうですか……」

 キャロと一緒に情報を集めていた。

 基本はキャロの聞き込みでの情報収集だったが、町の外に関する情報はなかなか集まらない。そこで役立つのが俺の鷹の目だ。

 上空から町全体を見渡すスキルを使えば、町の中からでは見ることのできない情報が入ってくる。

 あまり外壁の近くでじっとしていたら怪しまれるので、俺たちは昭和通りを歩く。

「町の中も不安が広がっていますね」

「でも、それほど混乱はないな。暴動が起きかねないと思ったんだが」

「町の中にダンジョンがあるお陰ですね。この町の初心者向けダンジョンは別名食料庫ダンジョンと呼ばれるくらい、多くの食べ物を落としますから」

「植物系の魔物が多いのか?」

「お肉もありますよ。植物系の魔物を食べる草食系の魔物もいるんです」

「魔物を食べる草食魔物って……いや、間違ってはいないんだろうけれど。ダンジョン内での食物連鎖か」

「その頂点にいるのが人間なのも、自然界と同じですね」

 キャロがそう言って笑った。

 現在、初心者向けのダンジョンの一般利用は禁止され、冒険者ギルドと傭兵ギルドに雇われた冒険者と傭兵が食料を採りにいっている。

 明日以降、町の住民を優先に配給が行われるそうだ。

 ついでにいえば、ダンジョンがある町はゴミ問題もないという。

 ゴミはダンジョンに放置しておけば勝手にダンジョンが吸収してくれるのだから。

「はぁ、暫くは町の中で待機か。この発端が全部俺のせいだってバレたら、行商人たちから袋叩きだろうな」

「イチノ様が悪いわけではありませんよ。それより、軍の動きが早いのが気になりますね」

「早いか? 狂乱化の呪いが広まっていることがわかって一週間くらい経つけど」

「一万の兵を用意するのに一週間は早すぎますよ。そもそも、一万という数が多すぎます」

「……だな。まるで戦争に来たみたいだよ。町の外から楚歌でも歌われたら降伏してしまいそうだ」

「ソカ……ですか?」

 キャロが尋ねた。

 四面楚歌って言ったら、この世界での適当な熟語に翻訳されたかもしれないが、楚歌だけなら意味が通じないのか。

「俺の世界で昔あった出来事だよ。戦で楚という国の王達が城に立てこもったとき、城を取り囲んでいる人間が、自分の国の歌をうたったんだ。それで、国のお偉いさんは、自分達以外の国の人たちが既に降伏したんだって気付いて絶望したって話……だったと思う」

 断定できないところが、自分の学力の無さを物語っている。

 多分、あっていると思うが、確かめようがない。

 ミリのアイテムバッグの中に、世界史の教科書とかあっただろうか?

「歌っていた人はどういう気持ちだったんでしょうね」

「歌っていた人?」

「はい。自分の国の王様を降伏させるために歌っていたんですよね。敵国に命じられて仕方なく歌っていたのか、それとも自分の国の王様に降伏してでも生きてほしいと願っていたのか」

 キャロの問いに、俺は答えることができなかった。

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