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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
マレイグルリ編

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恐ろしい罠

 俺は鷹の目を発動させた。

 視点がゆっくりと下がっていく。この感覚はいつも奇妙なものだな。自分の目以外の場所からなにかを見るというのは。

 俺は少し視線を移動させてみた。

「ぶっ!」

「どうなさいました!?」

「い、いや、なんでもない」

 驚くハルに、俺は大丈夫だと言った。

 視点を下げたことで、見上げたらハルのブルマ、キャロとララエルの下着が見えたとは言えない。

 ていうか、ララエルの下着、ほとんどヒモじゃないか。なんてものを穿いてるんだ。せっかくダークエルフの秘術のお陰で防御力が格段に上がるのに、無防備すぎるだろ。

 俺は鼓動を落ち着かせ、さらに視点を下げた。

 そして、そこで俺が見たのは、バリケードらしきものを築くピエロのような姿の小さな人形だった。これがトラップドールなのだろう。証拠に、体の中から札を取り出してバリケードに張り付けていた。魔記者が使う爆破の札だ。

 そんな札を普通の魔物が使うとは思えない。

 しかし、大きな問題があった。

「トラップドールを見つけた――が、気になることがあるんだ」

 俺は視点を元に戻し、キャロに尋ねた。

「トラップドールと似たような魔物っているのか? 色違いとか」

「いえ、聞いたことがありません」

「トラップドールはレアモンスターなんだよな? 珍しいよな」

「はい」

 俺はキャロの問いにうなずいた。

 やっぱりそうだよな。

 別に問題ないと思うんだけど、不思議なこともあるものだ。

 なぜなら、下の階層のその部屋にトラップドールは、三体もいたのだから。

「レアモンスターが大量に発生することってあるのか?」

「私はそんなの聞いたことがないです」

「キャロも知りません」

 ハルとキャロが首を横に振る。

 そうだよな、滅多に発生しないからレアモンスターなんだもんな。

 ダンジョンの魔物は、通常の魔物と違い子供を生むことはない。そもそも、人形は子供を生まないだろう。

 だとするのなら、ダンジョンになにか問題が起きている?

「トラップドールがいたのは三階層下だ。これ以上罠を作られる前に倒してしまうぞ。あと、トラップドールが三体だけとは限らない。ララエルは他にも罠が密集しているところがないか意識してくれ」

「「「はい」」」

 罠を一個一個解除するのも時間がかかる。

 ララエルに罠の種類を判別してもらい、遠距離で破壊することが可能な罠は、スラッシュや魔法で破壊したりした。

 下の階層に進み、どうしても解除しないといけない罠をララエルが解除しているところで、金属の塊の人形がこちらにやってきた。

 金属鑑定によると、どうやら鉄でできているらしい。

「アイアンゴーレムですね」

 キャロが鉄の人形を見ていう。

 やっぱり、こいつがアイアンゴーレムか。

「鉄の塊か――プチファイヤ」

 魔法で一蹴しようと思ったが、アイアンゴーレムの表面が溶けただけだった。

「へぇ、結構やるなぁ」

「イチノ様、アイアンゴーレムの弱点は――」

 キャロが何か言おうとしたが、俺は既に自分の刀――白狼牙を抜いていた。

 そして、横薙ぎでアイアンゴーレムの体を真っ二つにする。

 スキル――斬鉄。

 鉄をも切り裂くこのスキルを使えばアイアンゴーレムを真っ二つにするくらい容易だ。

【イチノジョウのレベルが上がった】

 よし、レベルが上がった。

 スキルをいろいろと覚えたが、今回は法術師のスキルは覚えていないので、後で纏めてチェックしよう。

「魔物が少ないな」

「きっと、トラップドールが仕掛けた罠のせいでしょう。罠にかかるのは人だけではありませんから」

「それにしてもなぁ。上級者向けのダンジョンだっていうから、てっきりもっと凄い魔物が出るかと思ったんだが」

「イチノ様、アイアンゴーレムは強い魔物ですよ。雷属性の魔法が唯一の弱点だと言われる魔物です」

「さすがはご主人様です。私も精進したいです」

 ハルが落ちていた鉄のインゴット三本と魔石を回収して言った。

「じゃあ、ハルも剣聖を極めたら次は侍にならないといけないな」

「はい――お酒に尻尾に職業。課題が山積みです」

 ハルが気を引き締めて言った。

 嬉しそうに尻尾が揺れているし、酒はいまだに干し肉に塗ってある保存用のアルコールだけで酔っぱらうため、課題達成への道のりは遠いだろう。

「課題がある限り、前に向かって歩けるからな。課題が山積みなのはいいことだよ」

 俺はハルの頭を撫でて言った。

「イチノ様、キャロの課題は自分の身を守れるだけのステータス、スキルの確保と、鑑定系のスキルの入手です」

「そうか、じゃあ一緒にレベルを上げないとな」

 俺はそう言ってキャロの頭を撫でる。

「イチノジョウ様、私の課題はダークエルフたちを鍛え上げることと、マイワールドでのスーギュー、鶏の繁殖、黄金樹の死守です」

 ララエルは顔を赤らめて言った。

 行動が犬みたいなハルの頭を撫でるのはついつい癖になっているし、子供のような見た目のキャロの頭を撫でるのに何の抵抗もない。

 年上のお姉さんであるララエルの頭を撫でるのは、こっちも恥ずかしいのだけれども、ララエルの頭を撫でた。

「ご主人様の課題はなんでしょうか?」

 ハルが尋ねる。

 俺の課題か。当然いろいろとある。

「ミリの救出が一番だし、当面の目標はディスペルを修得して、衛兵たちが探してくれている狂乱化の呪いにかかってる人を治療したい。他にも、キャロが自分の店を持つための手伝い。ハルと一緒に世界中のダンジョンに行くのも楽しいだろうし、他にダイジロウさんと真里菜を引き合わせることも忘れちゃだめだ。あと、ウナギが採れる地域では、美味しいウナギの食べ方を広めたいと思っているし……」

 と次から次に出てくる俺のやりたいことを聞いていたハルたちが俺をじっと見ていた。

 俺は苦笑し、頭を下げた。

 ハル、キャロ、ララエルが俺の頭を優しく撫でてくれた。

 頭を撫でられるのって、恥ずかしいけれど、それ以上に嬉しいものだな――と心から思った。


 俺たちはトラップドールがいる階層に辿り着いた。罠だらけで、まともに歩くことができない。

 一歩進めば矢が飛んできたりたらいが降ってくる雰囲気がある。だって、矢もたらいも丸見えだから。

「んー、ケンタウロスがいたら、罠の中を突撃させても大丈夫な気がするんだけどな」

 俺は冗談で言ったが、何故かハルたちは遠い目をして返事をしない。

 いったいマイワールドでなにがあったんだ?

「場所的にここをまっすぐ進めばトラップドールの巣に到着するはずなんだが」

「罠の解除に時間が必要ですね。ダークエルフの中で罠解除のスキルを持つ者を全員集めて解除しましょうか」

 ララエルが提案した。

「罠は足下に仕掛けられている罠がほとんどですから、一気に飛び越えることができればいいのですが」

「着地地点に罠があったら意味がありませんよ、ハルさん」

 ハルが結構な力技を提案するが、キャロが却下した。

 そうだよな、着地場所に罠があったら意味がない。

 もうトラップドールは無視して、下の階層に続く階段を目指してもいい気がするが、それで罠が増え続けたら大変なことになりそうだ。

「……あ、そもそも、俺たちがわざわざあいつらの巣に行く必要はないんじゃないか?」

「無視して進むということですか?」

「いや、キャロのスキルを使えば――」

「あっ! すみません、忘れていました」

 キャロはそう言って、職業変更スキルを使用したらしい。

 第一職業が夢魔の女王から誘惑士に変わっていた。

 誘惑士のユニークスキル、月の魅惑香。

 地下空間にいるか、夜の時間のみ、魔物をおびき寄せることができるスキルだ。普段は危険なため使わないが、こういう時は便利だ。

 それが証拠に、奥から爆発音が響いた。

 トラップドールが自分たちを守るために仕掛けていたバリケードを爆破したのだろう。

 そして、三体のトラップドールが無防備にこちらに近付いてきた。

「トラップドールは自分が仕掛けた罠には引っかからないのか」

「そのようですね。罠を仕掛けられている場所を踏んでも動作しません」

 そして、トラップドールがキャロに迫ったところで、俺の白狼牙が三体とも一刀両断にした。

 キャロを危険に晒すスキルなので極力使いたくはないが、やっぱり便利だな。

【イチノジョウのレベルが上がった】

【法術師スキル:盾魔法Ⅱが盾魔法Ⅲにスキルアップした】

 おっ、法術師のレベルが77まで上がった。あとレベルが三上がれば、レベル80だな。今回も法術師以外のスキルも覚えているが、後でログで確認することにした。

 オールシールドという、仲間全員の防御力を上げる魔法を修得したようだ。

「ご主人様、レアメダルと魔石、あと解除ツールです。罠の設置、解除するのに便利な道具類です」

 それぞれ三つ落としている。

 レアメダルと魔石はアイテムバッグに保存、解除ツールのうちひとつはララエルに渡して、残り二つもアイテムバッグに保存した。

 下の階層に続く階段は、ここに来るまでにすでに見つけているので、この奥の罠をわざわざ解除する必要はない。

「冒険者ギルドに報告だけして、あとは任せるか」

「ご主人様の仰る通り、それが一番でしょう。冒険者ギルドが罠解除の依頼を出すと思います。罠解除の依頼は冒険者にとってダンジョン探索の小遣い稼ぎになるので、ダンジョン探索と同時に行われるそうです。罠が増えれば国の兵が出陣することになっていたでしょうれど、早期退治できてよかったです。」

 そうか、冒険者の小遣いになるのか。それなら、無理して彼らの収入を潰す必要もあるまい。

 俺たちは来た道を戻り、下の階層へと進んだ。

「イチノ様、宝箱がありますよ」

 キャロが小部屋で宝箱を見つけた。

「あぁ、魔物の気配がないから、ミミックじゃなさそうだな」

「罠の気配もありませんね」

「では、開けますね」

 キャロが宝箱を開けた。

 その時だった。

 宝箱が開き、キャロの姿が一瞬で消えた。

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