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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
マレイグルリ編

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パン祭り

 書店を後に、俺は、ひとり、鈴木が待っている待ち合わせの場所に向かった。

 ゴーツロッキーの外で、鈴木とポチだけが待っていた。

「鈴木、お待たせ。マイルたちはどうしたんだ?」

 周囲には隠れられるような場所がないし、買い物でも行っているのだろうか?

「彼女たちは徒歩でキュピラスの丘の大聖堂に行ってから、マレイグルリを目指すことになったんだ。ほら、マイルにとってあそこは聖地だから一度行っておきたいらしいんだ。楠くんこそ、ハルワタートさんたちはどうしたの?」

「んー、お前だから言うけど、俺は仲間を召喚する魔法が使えるんだ。だから、俺だけマレイグルリに行ってから、その魔法でふたりを呼ぶつもりだ」

「そうか……でも安心したよ。シーナさんがあんなことになって、楠君、落ち込んでないかと思ったけど」

「あ……」

 そういえば、鈴木にはシーナ三号が人造人間サイボーグとして生まれ変わったことを話していなかった。

 でも、どうだろ、人造人間サイボーグのシーナと会わせて、彼女が機械ではなく、ホムンクルスに近い存在だと知られたら困るかもしれない。ホムンクルスについて話せば、女神様、さらには無職スキルの存在の事まで話さなくてはならなくなりそうだ。

 かといって、いまのシーナ三号に会わせたら、ボロが出るかもしれない。

「あぁ……鈴木が渡してくれたカード、シーナ三号のバックアップソフトみたいでな。あれのお陰で修理できそうなんだ」

「そうなんだっ! それはよかったよ……本当によかった」

 鈴木は本当に嬉しそうにそう言った。

「シーナさんが直ったら、是非お礼を言わせてよ」

「ああ、その時は……な」

 シーナ三号のポンコツぶりが直ることはないだろうが、まぁ、ボロを繕うことができたら、ジョフレやエリーズにも紹介しないとな。

「しかし、マイルたちがいないなら、ハルたちも一緒に来たほうがよかったかもな。定員とか気にして、遠慮してたからさ」

「あ、ううん。実は――」

 鈴木が申し訳なさそうに、俺の方――いや、俺の背後を指さした。

 振り返ると、町の方から歩いてくる者たちが。

 ……ジョフレ、エリーズ、そしてケンタウロスだった。

 ってあれ? なんだ、いつも元気だけが取り柄だったジョフレとエリーズだが、今日は顔が沈んでいる。

 どういうことだ?

 いや、聞くまでもないか。

 シーナ三号が自爆したことを気にしているのだろう。こいつらにも、シーナ三号の修理ができそうだと教えておくか。

「ジョー、頼みがあるんだ」

「――頼み? どうしたんだ、急に」

「なんでもいいから食べ物をくれ」

「私たち、ここ最近あまり食べていないことを思い出したの」

 心なしかやつれている気がする。

 こいつら、俺たちが湖から助けるまで、ずっと洞窟の中にいたんだったよな?

「あれ? でもお前ら、町で食事をとらなかったのか? 魔王竜の討伐のお金、貰えたんだろ?」

 魔王竜との戦い、ケンタウロスは大活躍だったから鈴木が提案して、そうなったはずだ。

 俺の報酬は竜核だったので関係のない話ではあったが。

「楠君、報酬が出るのは暫く先だよ。獲物が獲物だからね。査定に時間がかかるんだ」

「そうか、言ってくれれば金くらい貸してやったのに。まぁ、いまは食べ物か」

 俺はそう頷くと、アイテムバッグから何かないかと考える。

「ジョフレ、エリーズ、嫌いな物はないよな?」

「そうだな、腐ってるものは食べないぞ」

「私は虫は食べないかな」

「そうか、じゃあ腐ってるものと虫は除外して考えるか……かなり数が絞れるな」

「「絞れるのっ!?」」

 珍しくジョフレとエリーズがツッコミに回る。

 ミリが持ってきた食べ物の中には虫が多い。赤蟻の卵なんて、日本のどこで買ったんだ? という食べ物まであるくらいだ。カイモッデーンとよばれ、タイなどで食べられるそうだ。あと、腐ってはいないが、独特な臭いの発酵食品も多かったからな。当然、それを除外して考える。

「普通にパンでいいか。ほらよ」

 俺はジョフレたちに食パンを一斤丸ごと渡した。

 直後、ケンタウロスに食べられた。

「吐き出せ、吐き出すんだ、ケンタウロス! それは俺達の食事なんだぞ!」

「私達、もう数日食べてないの。お願い」

 ……なんだろ、凄く懐かしいやり取りだなぁ。

 そうだ、ベラスラの迷宮でケンタウロスがレアメダルを食べたとき、似たようなやり取りがあった。

「相変わらず凄い食欲だね。本来、スロウドンキーはあまり食事が必要ない家畜として有名なんだけど」

 泣きわめくジョフレたちを

「……どこが?」

「うん……まぁ、例外がいるってことだね」

「仮にケンタウロスが食パンを吐き出しても、もう食べられないだろ。まだあるから、こっちを食べろ」

 仕方がないので、今度はジョフレとエリーズにぴったりのパンを渡すことにした。

 ビニールを剥がし、ふたりに渡す。

「おぉ、サンキュー、ジョー!」

「ありがとうジョー」

「「こんな柔らかいパンは初めてだ!」」

 ふたりもまた、食パンに満足しているようだ。

「そういえば、ジョフレ。お前、昔は一人称『僕』だったよな? なんで『俺』になったんだ?」

「こっちのほうが冒険者っぽいからだっ! 盗賊になる前、冒険者をしてた時も『俺』って言ってたぞ!」

「浅い理由だなぁ……」

「え? ジョフレ君は盗賊だったの?」

「盗賊って言ってもなんちゃって盗賊だよ。職業だって犯罪職堕ちしてないし、何も悪いことする前に辞めてるしな」

「鈴木もパン食べるか? 滋賀名物のサラダパン、高知名物の帽子パンもあるぞ?」

 ミリが置いていったアイテムバッグの中には、全国の名物パンが勢ぞろいしていた。

 消費期限がかなり昔の物もあったので、昔買ったものを異空間収納して保存していたのだろう。

「僕はいいかな。毒無効時間アンチポインズンタイムにも制限はあるからね」

「そうか」

「ところで、ふたりが食べているパンって、あれだよな? 子供の頃に見たことがあるけれど」

「あぁ、俺たちが生まれるよりも前に日本中でブームになったっていう、頭にいいパンだよ」

 受験生御用達のパンだ。

 もっとも、このパンは脳が活性化し、記憶力がよくなるというパンなので、決してバカが治るというわけではない。バカにつける薬はないのだった。

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