ポンコツシーナ
魔王竜との戦いから数日が経過した。
皆、シーナ三号の復活――機械人間化を喜んで迎え入れてくれた。先日はシーナ三号復活パーティということで、シーナ三号が食べたい物をふるまうことにした。
彼女が食べたい物――それは果物だった。
彼女がかつていた、無人島で栽培されていた果物。
シーナ三号は機械人形であったころ、果物を育てていたが食べることができなかった。
味はデータとして集めることはできたが、それはあくまでも数値でしかない。
そして、シーナ三号は、朝になっても果物を食べ続けていた。数百年食べられなかった分を取り戻すかのように。
「……バナナ。うまうまデス」
バナナを口いっぱい頬張るシーナ三号を見て、彼女が戻ってきたんだと思った。
俺が起きてきたことに気付いたシーナが、食べている途中のバナナを俺に差し出してきた。
「マスターも食べるデスか?」
「……あぁ、もらうよ」
間接キスだとか子供みたいなことは言うまい。考えてみれば、彼女の皮膚も唇も全て俺が作ったのだから。
バナナを食べながら、シーナ三号に尋ねた。
「シーナ、そういえば、お前、語尾はそのままなのか?」
「はいデス。癖デスから。三つ子の魂百までデス」
「お前、機械人間としては三つ子どころか零歳だし、機械人形だったころを含めたら百歳なんて数百年前に超えてるだろ?」
「……マスターはこの語尾は嫌いデスか?」
「いや、嫌いではないが」
「マスターの命令ならば、語尾をキュにすることもできるキュ」
「あざといわっ!」
まったく、シーナ三号は機械人形だろうと、機械人間だろうと何も変わらんな。
ただ、シーナ三号の不調は嘘のようになくなっていたらしい。
「マスター、ひとつ大きな問題が発生したデス」
「えっ!? なんだっ!?」
「首が外れなくなっていたデス」
シーナが自分の首を外そうとするが、それはダメだ。
「やめろ、外れたら今度こそ死ぬ! なんだ、昨日まで必死に助けようとしていた奴が自分の首を外して死亡したなんてシャレにならないぞ」
訂正、昨日までの頭の不調は全然治っていない。
ちなみに、首は外れなくなっていたが、ホムンクルスならではの機能として、身体の変形、絶対的な守備力などの力に加え、音声の録音、再生など機械人形としての機能はそのまま残っているそうだ。
「そういえば、これ、お前の大切なものだろ」
俺は一枚のディスクをシーナ三号に渡した。
「それは……マスター、再生したデスか?」
「いや、違法コピーのニャーピースDVDだろ? それを見るのならオリジナルを見るよ」
俺はそう嘯いて、シーナにCDを渡した。
シーナはそれをじっと見つめ、大事そうに胸に抱えた。
……やれやれ、普段はボケキャラのくせにそんな表情をされると、調子が狂うな。
俺は爺さんとの約束を果たすため、本屋に向かった。
「頼まれていたネクタルだ」
「まさか――本物だ」
店長の爺さんは、目を丸くし、瓶の蓋を開けると、本物だと断定した。
「わかるのか?」
「あ……あぁ。酒好きだから、利き酒というスキルを持っている。しかもスキルアップして利き酒Ⅱというスキルだから、香りだけで種類がわかる」
利き酒スキルの説明を聞いた。このスキルのランクは三段階あり、通常ランクなら一口飲めば種類や作られた年代がわかる。ランクがⅡになると香りだけでわかり、ランクがⅢになれば見ればわかるようになる。
つまり、ランクⅢになってようやく鑑定スキルと同じ効果があると言えるが、しかし、利き酒スキルによって得られる情報量は鑑定の比ではないらしい。
それが、俺にとっては想定外だった。
「しかも、これはダンジョン産ではないな」
「…………あぁ、黙っていてくれると助かる」
「だな……通常なら考えられん」
爺さんは言った。
まぁ、そうだよな。女神ミネルヴァ様から、直接下賜されたものだなんて言われても、自分のスキルで確かめでもしない限り、いや、自分のスキルで確かめても信用できないよな? 普通は。
「まさか、女神ミネルヴァ様ではなく、女神テト様が醸造した酒とは」
え?
テト様?
この酒はミネルヴァ様が醸造した酒じゃないのか?




