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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
傭兵王国編

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彼女の剣

 さて、今回のダンジョン攻略。

 俺はほとんどレベルアップのメッセージを聞き流していた。

 その理由はひとつ。

 職業をほとんど生産職に偏らせていたからだ。

 覚えるとしても、迷宮の中で使うことのないスキルだろうと思っていた。

 具体的に言うと、ダンジョン突入前の職業はこんな感じだった。

【無職:LV109 上級鍛冶師:LV1 上級錬金術師:LV13 魔工鍛冶師:Lv1 魔記者:Lv7】

 といった具合だ。

 これらはシーナ三号を直すうえで必要になるかもしれないと、事前にピオニアに言われていたためだ。

 上級錬金術師のおかげで魔攻値は十分あったし、レベルが上がれば上級鍛冶師、魔工鍛冶師のステータスも高いため、ダンジョン攻略には全然問題なかった。

 そして、ダンジョン攻略後はこんな感じになった。

【無職:LV110 上級鍛冶師:LV18 上級錬金術師:LV24 魔工鍛冶師:Lv10 魔記者:Lv31】

 やはり、上級職ともなるとレベルアップに必要な経験値が多くなる。

 しかし、覚えたスキルを見直してみると、なかなかのものだった。

 纏めてみると以下の通りだ。


【イチノジョウのレベルが上がった】

【無職スキル:眷属召喚を取得した】

【上級鍛冶師スキル:鍛冶Ⅱが鍛冶Ⅲにスキルアップした】

【上級鍛冶師スキル:打ち直しを取得した】

【上級鍛冶師スキル:打ち直しが打ち直しⅡにスキルアップした】

【上級錬金術師スキル:一八錬金を取得した】

【魔工鍛冶師スキル:魔工鍛冶を取得した】

【魔工鍛冶師スキル:鍛冶融合を取得した】

【魔記者スキル:速筆を取得した】

【魔記者スキル:複写を取得した】

【魔記者スキル:表裏一体を取得した】

【レシピを取得した】


 今回もミスリルから武器を作るレシピは手に入らなかった。

 上級錬金術師に追加されたレシピの中には、魔石を融合させることで魔金属を創り出すことができるレシピもあったが、アダマンタイトと魔石を融合させるレシピはないので、今回は見送りだ。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 眷属召喚:魔法系スキル【無職レベル110】

 眷属、眷属と共にいる者を召喚することができる。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 たったの一行説明。でも、これだけで十分理解できる。

 だが、眷属化のスキルがなかったら意味がないスキルだ。

 何故、これが手に入ったのか理解できない。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 打ち直し:生産系スキル【上級鍛冶師レベル5】

 完成して一分以内の鍛冶製品を一から打ち直すことができる。ただし途中で作業を中断した場合、 素材は消滅する。

 レベルに応じ、打ち直せる回数が決まる。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 一見、役に立たなさそうなスキルであるが、しかしこれはいい。

 乱打夢(らんだむ)により、効果をランダムで得られるスキルを手に入れた。

 悪い効果、必要のない効果が武器に現れたとき、材料を無駄にせずに一から打ち直すことが可能になる。現在は打ち直しⅡのため、二回まで打ち直しができるということだろう。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 一八錬金:生産系スキル【上級錬金術師レベル20】

 一部レシピにおける錬金術において、失敗、大成功、の結果を追加する。

 失敗、大成功の確率は運の値に応じて変動する。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 これまたギャンブル系スキルだな。確かに一か八かといった感じだ。

 そういえば、ミリの奴、薬師にも失敗や大失敗、大成功が存在するようなことを言っていた気がする。もしかしたら、一八調合みたいなスキルも存在するのかもしれない。

 これは要検討ということで、今後試してみよう。

 運の値にも左右されるということなので、博徒と遊び人、ふたつの職業の価値がまた跳ね上がる。

 博徒のレベルを上げれば、運を上昇させるスキルが手に入るかもしれないので、今後の課題にしておこう。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 魔工鍛冶:生産系スキル【魔工鍛冶師レベル2】

 レシピに応じ、魔法装備を作ることができるようになる。

 鍛冶師スキルを使用することが可能

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 魔剣や魔法の防具などの魔法装備を作れるスキル。俺のアクラピオスの杖みたいなものも作れるようになるのだろう。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 鍛冶融合:生産系スキル【魔工鍛冶師レベル10】

 二種類のレシピを使うことで、まったく別の魔法装備を生み出すことが可能。

 製作可能なレシピは、レシピ一覧に表示される。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 レシピを確認するといろいろと、融合レシピという一覧があった。数は普通のレシピより多くない。どんな組み合わせでも可能ということではないのだろう。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 速筆:生産系スキル【魔記者レベル10】

 札作成の速度を上昇させる。また、日常における執筆速度も上昇する。

 速度はスキルレベルに応じて変化する

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 このスキルは小説家など執筆を生業にする者にとっては垂涎の的だろうな。

 あ、でも最近の小説家とかって筆じゃなくてパソコンで執筆しているから意味はないのか。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 複写:生産系スキル【魔記者レベル20】

 目の前にある札と同じ効果のある札を作成する。

 ただし、札作成スキルのレベルが足りないときは失敗する。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 これは札の贋作? いや、しっかり効果が出るのなら贋作じゃなくて本物扱いかもしれない。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 表裏一体:生産系スキル【魔記者レベル30】

 札の表と裏、両方に文を書き込むことができる。書かれた文字の組み合わせにより、札の効果が変化する。ただし、同じ文を書くことはできない。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 これは少し面白いスキルだ。

 俺が普段行っている魔法の融合みたいなことだろう。

 表に火の攻撃の効果、裏に風の攻撃の効果の文字を記入することで火の威力を高める札を作ることができる――みたいなものだろう。

 レシピもいろいろと増えた。

 魔記者のレシピの中には、待望のパーティを設定するための札――隊列管理の札もあったので活用させてもらおう。

 と、スキルの確認に時間を要してしまったが、本番はこれからだ。

 いまから、ハルの武器を作成する。

 というのも、俺がダンジョンに行っている間に、アダマンタートルが脱皮したのだ。

 甲羅は脱皮するときに四つに割れたらしく――何故、鋼鉄よりも遥かに硬いアダマンタイトが脱皮のときに割れるのかはわかっておらず、生命の神秘のひとつに数えられるそうだ――ひとつはシーナ三号の修理に使われることになり、残り三つは俺が自由にしていいことになった。

 ということで、俺は作業小屋で準備を行う。

 まず、ハルの武器のメイン素材はアダマンタイトだ。これは譲れない。

 次に剣の柄。木材を使うことになるが、マイワールドにある木材といえばオーク材がメインだ。以前、ドクスコにはオーク材は剣の柄には適していないと言われたことがある。ここで思いついたのが、素材変更というスキルだ。

 一部の鍛冶素材を変更することができるスキル。

 これで木材を変更できないか調べたところ、柄の素材を金属、または動物の骨に変更できると判明。ピオニアに相談したところ、

「老竜の軟骨を推奨します」

 と言われた。

 軟骨?

 から揚げとかにしたら美味しいアレだろ?

 そんなもんでいいのか?

 と思ったけれど、ピオニアが言うには、ドラゴンの軟骨は金属以上の強度と柔軟性を併せ持っており、さらに大きいため柄に使うには理想的な素材なのだという。

 こういうところは地球の常識が通用しないな。

 ちなみに、完成した魔剣はキャロに鑑定してもらい、その結果によっては打ち直しをする手筈になっている。


「キャロも休みたいだろうが、すまないな」

「いえ、ご主人様にスタミナヒールをかけていただきましたから、全然疲れていません」

「あぁ、俺も疲れていない」


 むしろやる気が漲っている。

 スタミナヒール、効果は凡庸そうに思えるが、しかし何故か同じようなスキルが存在しないため、使う頻度は浄化(クリーン)拠点帰還(ホームリターン)よりも多くなるかもしれない。

 ということで、作業を始める。

 鉄床とハンマーを用意する。

 しかし、いきなりハルの短剣を作るわけではない。


「ハンマーレシピオープン」


 ハンマーのレシピを確認。

 あった、アダマンハンマー。

 素材はアダマンタイトと木材だが、こちらの木材も竜の軟骨に変更する。

 そして、鋼鉄の槌でハンマー作りを始める。

 闘魂注入を行い、鋼鉄の槌をアダマンタイトへと振り下ろす。


(――なんて反発力だっ!?)


 アダマンタイト、伝説の金属の名に偽りなし。

 鋼鉄や玉鋼とは全然違う。

 俺の全力が押し返されている気さえする。

 それに、軟骨から感じられるのはドラゴンのオーラだろうか?

 瞬殺されたとはいえ、さらにその軟骨部分とはいえ、最強の種族と言われるドラゴンから感じられる力は相当なものだ。

 いつもなら一撃で完成していた武器がまだ未完成の状態だ。

 しかし――俺も負けてはいない。


「もういっちょーっ!」


 再度大きく振り下ろす。

 と同時に、スキル――乱打夢を発動させた。

 すると、アダマンタイトの塊が竜の軟骨と合わさり、黒く光るハンマーが現れる。


「キャロ、鑑定を頼む」


 これは普通の鍛冶作業なのだが、乱打夢によって魔法効果が発動していたら魔法装備扱いになる。そうなればキャロの鑑定も役立つ。


「…………」

「キャロ?」

「は、はいっ! すみません」


 俺の鍛冶作業に圧倒されていたのか、呆けていたキャロが我を取り戻して鑑定をした。

 その結果――


「鑑定できました! 魔法のハンマーになっています」

「効果はっ!?」

「このハンマーで武器を作ると――」


 おっ、鍛冶系の効果じゃないか。

 これは幸先がいいな。


「武器の形がすべて猫の手になるそうです」

「打ち直しだっ!」


 ネタ装備なんて必要ないっ!

 そもそも、ハルの武器なら猫の手じゃなくて犬の手だろうが。

 ということで二度目の打ち直しが終わった。

 その鑑定結果は――


「このハンマーで鎧を作ると、すべてバカには見えない鎧になるそうです」

「裸の王様かよっ!」


 俺だけに見えない鎧だったとしたらそれでもよかったのだけれどな。いや、そもそも鎧って普通、服の上から着るから、裸になることはないのか。でも、まぁ、打ち直す。

 次が最後のチャンス。

 これで失敗したら、もう打ち直しはできない。

 いっそのこと乱打夢を使わずに終わらせようかと思ったが、しかし男たるもの途中で逃げ出すわけにはいかないだろう。


「いけ、これが最後だっ!」


 闘魂注入でMPが無くなりそうだが、最後の力を振り絞った。

 結果、MPを消費することで一時間【MP×キログラム】(最大100キロ)重くすることができるというそこそこ使い勝手が好さそうな効果のハンマーになった。

 銘として【ラッキーハンマー】と付ける。

 別に運が上がるわけでもなければ、とてもレアな効果だったというわけでもない。

 しかし、これからハルの武器を作るに際し、運のいい効果が出るようにと願った名前だ。


「イチノ様、マナポーションです」

「あぁ、ありがと」


 キャロからマナポーションを受け取って三本程一気に飲み干す。

 そして、俺はラッキーハンマーを持ち上げる。


「……持ちやすい――それに、確かにこの柄はいいな」


 俺は試しにハンマーを振り下ろした。

 打ち付けると、俺への衝撃がいい具合に撓りによって吸収されている。

 これなら体への負担も最低限で済むだろう。


「キャロ、マナポーションはもうないのか?」


 まだMPは七割くらいしか回復していない。

 ラッキーハンマーの効果を考え、打ち直しすることを考えると、できればMPは満タンにしておきたい。


「それでは、イチノ様。キャロのMPを使ってください」

「キャロのMP?」

「夢魔の女王のレベルが上がって、精気移行のスキルを得ました。これを使えば粘液を通じてMPの受け渡しをすることができます」


 そう言うと、キャロは魅了変化のスキルを使い、大人キャロの姿になった。


「イチノ様はスタミナヒールで滾ったエネルギーを鍛冶で消費しているかもしれませんが、キャロは見ているだけですからたまってしまっているのです」

「ま、待て、キャロ――」


 いまはマズイ。俺だってスタミナヒールの効果は残ってるんだぞ。


「大丈夫です、今日はキスだけで我慢しますから」


 ……俺は本当にMPをもらったのだろうか?

 いや、ステータスを確認するとMPを確かにもらっているが、代わりに精気を吸い取られたのではないかと思う。

 キャロの肌が艶々しているのも気のせいではないだろう。


「では、イチノ様。続きをお願いします」

「あ、あぁ」


 雑念を捨てろ。雑念を。

 俺はそう思い、先ほどと同じように、今度は剣を作った。今度は魔剣のレシピを使う。

 エメラルドを使うことにより、風の効果を付与するのだ。

 火竜の牙剣と合わせて使うことで効果が高まる。

 風の剣と似ているが、魔工鍛冶師による魔法道具は魔力を必要としない。ハルにでも使うことが可能なのだ。


「最後に、乱打夢っ!」


 願いを込めて乱打夢を放つ。

 その結果、出来上がった武器の効果は――


「この剣で斬られた相手は……淫乱の状態異常状態になるそうです」


 俺の思った以上にさっきのキスに引っ張られていた。


 当然、打ち直しをした。

 結果、剣の魔力の回復が早くなるという無難な効果になった。

 銘は「疾風の刃」とした。その銘の効果だろうか、装備すると速度が少し上昇する武器へと変貌を遂げた。


「ありがとうございます、ご主人様。このような素晴らしい剣を貸与させていただけるとは」


 ハルは「疾風の刃」を見ると、とても嬉しそうにした。


「いや、貸与って、これはハルのだからな」

「私のものはご主人様のものも同じですから」


 ……つまり、ハルにプレゼントしても貸しても同じってことか。

 そして、守命剣は無事その役目を終えたのでアイテムバッグに保存しておこうかと尋ねたところ、これはハルが持っておくとのこと。

 どこぞの海賊剣士みたいに三刀流として戦うというわけではなく、戦闘のシーンにおいて、臨機応変に使い分けるんだそうだ。

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