ミネルヴァからの贈り物
シーナと一緒にアイス作りをした。
約五十人分のアイスはかなりの量になった。
「このアイスに納豆のネバネバ成分を入れるとトルコ風アイスみたいになるデスよ」
「別にしなくていい。第一、お前はトルコも知らないのに、トルコ風もなにもないだろ」
「知ってるデス。トルコ石が採れるところデス」
「トルコでトルコ石は採れねぇよ」
本当に地球に関する知識が俄かだな。
あと、ここで納豆のネバネバを使うとか、以前冗談で言っていた大豆好きキャラの設定をまだ引きずっているのだろうか?
「アイスも完成したし、とっとと寝るぞ」
「わかったデス。お姫様抱っこデスね?」
「……立って歩いて来たんだろ。帰りも歩け」
俺はそう言ってシーナ三号を自分の部屋まで連れて行った
頭を殴らなくても自分でスリープモードに移行することはできるらしい。
「ちゃんと寝るんだぞ」
俺はそう言って、部屋の明かりを消した。
「わかったデス、スリープモードに入るデス……あぁ、ニャーピースのオープニング聞きながら寝ていいデスか?」
「静かに寝てろ」
「はいデス」
シーナ三号はそう言って目を閉じた。
機械人形なので呼吸も寝息もない。
シーナ三号の頭を優しく撫でる。髪の感触は人間のそれとまったく変わらない。
……絶対に助けてやるからな。
俺は心の中でそう声をかけ、部屋を出た。
できたアイスを持って戻った。
ステーキパーティから一時間経過していたが、みんな談笑して待っていてくれた。
「スケくん。今日は何を作ったの?」
「今日はアイスを……」
俺はアイスをカップに入れ、彼女に渡して気付いた。
「……なんであなたがいるんですか?」
俺に尋ねてきた女性はハルでもキャロでもピオニアやニーテでもダークエルフたちでも、当然いまは眠っているシーナ三号でもなかった。
探さないでくださいと書置きを残し、行方をくらませていた女神様――ミネルヴァ様だった。
ミネルヴァ様に俺は自然と差し出して
「無職に戻ったかどうか、確かめに来られたんですか? ちゃんと職奪の宝玉を使って無職に戻りましたから安心してください」
「ううん、そうじゃないの。今日は死に場所を探していたの」
ミネルヴァ様がとんでもないことを言った。
そういえば手紙にそんなことが書かれていた。
「でも、こんなに美味しい物を食べられるなんて幸せ」
つまり、いつものように死なない言い訳……もといキッカケができたということか。それはよかったよかった。
でも、ちょくちょく訪れるのはやめてほしい。
ハルやキャロ、ダークエルフたち全員がどう接したらいいか困っているじゃないか。
彼女はアイスに何か液体をかけた。
シロップだろうか?
「これはシロップじゃないわよ?」
心を読まれた。
どうせなら、俺のちょくちょく訪れるのはやめてほしいという気持ちに対しての返答が欲しかったが。
シロップじゃないなら、なんだ?
「これはお酒よ」
「あぁ、お酒ですか」
リキュールなどをアイスにかける食べ方はよく話に聞く。
トレールール様といい、女神様はお酒が好きなのだろうか?
「テトとライブラはあまり酒は飲まないわよ。セトランスは好きだけどあまり飲ませたくないわね。彼女は酒を飲むと好戦的になるの。コショマーレはひとりで飲むのが好きだって話していたわ。それに、私がお酒が好きなのは当然よ。だって、私は薬の女神だもの」
「あぁ、酒は百薬の長って言いますからね」
「そうなの。スケくんも酒造家になったら? 薬師のレベルを上げたら転職できるわよ」
「うちには優秀な薬師が二人もいますから、俺は別の道に進みますよ」
そう言って、キャロとリリアナを見た。
ふたりが頑張ってくれているのなら、俺がわざわざそっちの道に進む必要はないと思う。
「そう……スケくんなら、もしかしたら私が造っているお酒より美味しいお酒を造れるんじゃないかって期待したんだけど」
「ミネルヴァ様のお酒ですか――それは是非飲んでみたいですね」
俺はあまり酒は飲まないけれど、でもミネルヴァ様の、女神様のお酒というのなら興味があった。
「欲しいの? あげるわよ」
ミネルヴァ様は笑って胸の谷間から十本の小瓶を取り出した。
いったいどれだけ入ってるんだ?
まだほんのり温かい――これがミネルヴァ様の体温。
って、また俺は余計なことを考えて。
「ありがとうございます。なんというお酒なんですか?」
「ネクタルよ」
「あぁ、ネクタルですか」
そうかそうか。
神の酒だもんな。
本物の女神様のミネルヴァ様が持っていても不思議ではない。
「って、えぇぇぇぇぇっ!?」
まさかのネクタルが手に入った。
むしろ、手に入りすぎだ。
約束していた本屋の老店主だけでなく、ドクスコに分けてあげてもいいくらいだ。
喜ぶべきなのだろうけれど、それでもあえて言いたい。
俺の今回の苦労って一体。




