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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
傭兵王国編

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賢者の石の情報

 残念なことに、賢者の石の素材及びレシピを持っている人間の情報を持つ人間は誰もいなかった。

 しかし、キャロから、ゴーツロッキーで一番の物知り爺さんの情報を得ることができたため、俺はその爺さんのいる家に向かった。

 その爺さんというのが、まさか――


「この本屋の爺さんだったとはな」


 感慨深げに呟いた。

 職業侍の、居合抜きの達人で、ファミリス・ラリテイのファンだという爺さんだ。

 そういえば、爺さんから買った本、まだほとんど読んでいないや。

 俺はひとり、本屋の中に入っていった。


「なんだ、また来たのか」

「はい、ちょっとお聞きしたいことがありまして」


 俺は小さな酒瓶を置いた。

 この爺さん、かなり酒好きだとキャロから教えてもらった。


「聞きたいことか。本を買いに来たわけではないのか」


 爺さんはそう言いながらも、表情がわずかに和らいだ。酒の効果があったらしい。


「で、何を知りたい?」

「できることなら、賢者の石そのものが。ないのなら、賢者の石の素材、そしてレシピの在処です。もしくは、賢者の石のレシピを取得している上級錬金術師の居場所でもかまいません。できるだけ早く入手したいんです」


 俺がそう尋ねると、爺さんの表情に陰りが見えた。


「賢者の石か。また大層な物の名が出てきたな。坊主は知っていると思うが、賢者の石のレシピは錬金術師ならば誰もが求めるレシピだ。そう簡単に手に入るものではない」

「……それは、わかっているつもりです」

「悪いが、レシピ書の在処は儂にはわからん。現存しているかどうかも含めてわからん」


 覚悟はしていた。

 やはり、そううまいことはできないか。


「しかし、賢者の石を作ることができる人物に心当たりがある」

「本当ですかっ!? いったい誰ですかっ!?」

「勇者の仲間、ダイジロウだ」


 爺さんが言った


「ダイジロウ……さん」

「ああ。これは噂で聞いた話なのだが、勇者アレッシオの仲間であるダイジロウの職業――発明家は様々な物を発明できるという錬金術師の最上位職に位置する。その職業のレベルを上げれば、この世界に存在する全ての錬金術のレシピを取得できるという。彼女なら賢者の石を錬成することも可能だろう」


 なんてことだ。

 ダイジロウさんがそう簡単に見つからないことは、これまでの旅でわかりきっているのに。

 それができるなら、俺はとっくにミリを助け出している。


「それに、素材も珍しい物が多い」

「賢者の石の素材を知っているのですか?」

「ああ。まずは伝説の金属と言われるアダマンタイト――それが必要になる」


 アダマンタイトっ!?

 なんという偶然か、俺はそれを手に入れたばかりだ。

 残りの素材も既に持っているか、あっという間に見つけられたら――と思う。


「そして、魔力の塊、竜核だ」

「竜核――老竜の心臓でいいのですか?」

「いや、竜核は魔王竜と呼ばれる伝説のドラゴンが落とす素材だ。世界一深いダンジョン――東大陸にある無限迷宮のボスが落とすという話だ」


 無限迷宮という名前だが、最下層が存在し、それが地下千階らしい。

 そこのボスとして登場するのが、その魔王竜だ。

 魔王竜を倒したとき、低確率で竜核という名前の魔王竜の心臓を落とすのだという。

 入手難易度が高いアイテムだ。


「最後はネクタルだ」

「ネクタル?」

「あぁ、神の酒ともいわれる酒だ」


 これも俺の知らないアイテムだ。

 結局、三つあるうち一個しか持っていなかった。

 しかも、竜核が手に入るのは東大陸か。

 ダイジロウさんを見つけ、東大陸に行き、さらにどこにあるかわからないネクタルを見つける。

 果たして、それまでシーナ三号は無事でいられるどうか?

 ピオニアにシーナ三号の稼働時間を延ばす方法がないか聞いてみよう。スリープモードとかあったらいいのだが。


「そういえば、ネクタルを入手する方法を知っている者がいる」

「知っている人!? 誰ですか?」

「傭兵ギルドのギルドマスター――このゴーツロッキー、そしてシララキ王国を含む多くの国の広域傭兵ギルドの代表だ。その権力は国王にも匹敵する。無駄だと思うが――いや、無駄だろうが紹介状を書いておこう」

「無駄なんですか……」

「ああ、奴は自分の目でしか相手を信用せんからな。それでも、まぁ、少しはマシになるだろ」


 爺さんが紹介状を書いてくれた。


「ありがとうございます。そんなことまでしていただいて」

「ただ、気が向いただけだ。礼もいらん。ただし、ネクタルを二本以上手に入れたら、儂に一本譲ってくれ」

「わかりました、必ず」


 俺は爺さんに礼を言い、店を出た。



 その足で傭兵ギルドに向かい、受付嬢に爺さんからの紹介状を見せた。


「はぁ……」


 なぜかため息をつかれた。

 そして――


「先に謝ります。すみません」


 なぜか謝られた。

 受付嬢が紹介状を持って奥に引っ込む。

 嫌な予感がする。いや、これはもう予感じゃないな。

 爺さんも無駄だって言っていたし。

 そして、それは正しかった。

 受付嬢は直ぐに戻ってきた。

 ふたつに破られた紹介状を持って。


「イチノジョウさん――申し訳ありません」

「いえ、覚悟はしていましたから……え? なんで俺の名前を?」

「一応、破られる前に内容の確認をしましたので。ギルドマスターから伝言をお伝えします。『私に会いたければ、傭兵の仕事をしろ』とのことです。自分が出した仕事を達成したらお会いになるそうです」


 実力第一主義――ということか。爺さんに言われた通りだな。


「わかりました。しかし、あまり時間がないので数日以内に終わる仕事でお願いします」

「ええ、実力試しを兼ねた仕事です。ここから南にあるダンジョン――そこでボスを倒し、その証をお持ち帰りください。報酬は七万ゴーツです。依頼の達成が早ければ、マスターはお会いになるそうです」

「わかりました――冒険者ギルドの仕事とあまり変わらないのですね」


 俺は依頼書を受け取り、言う。


「ええ、そうですね。冒険者ギルドは冒険者同士の互助協会ですが、傭兵ギルドの成り立ちは、戦争が終わって行き場のなくなった兵たちに仕事を与えることが目的で作られました。従軍兵の中には生産職の方もいたので、冒険者ギルドが戦闘職の人間にしかなれないのに対し、傭兵ギルドは誰にでも入れることが違いといえば違いですね」

 誰にでも入れる――か。

「本来なら試験もあるのですが、王城で魔族を退治なさったイチノジョウ様の実力ならば問題ないでしょうと判断しました」

「あぁ、そういえばそうだった」

 傭兵ギルドで試験があるのは、ニックプラン公国でも確認済みだ。

 もっとも、あの時の傭兵ギルドはシララキ王国と戦争していたため、同じ傭兵ギルドでもここの傭兵ギルドとは別組織だったらしい。

 戦争が終わったいまはギルドが統一されているので、キッコリたちもここで仕事ができたんだった――ってあれ?

 これって、つまり名前で試験通過ってこと?

 俺、無職じゃなく傭兵って名乗っていいってことか?

「まぁ、イチノジョウ様のような方なら他にも仕事があるでしょうけれど、傭兵ギルドは日雇い労働のような側面が強いですから、ギルドマスターに会うことができたあとも気軽に仕事を探しにいらしてくださいね」

「あ……はい」


 日雇い労働――それってアルバイトと一緒か。

 正社員への道のりはやはり遠いんだよな。

 でも、いまはそんなことどうでもいい。

 シーナ三号を直すための素材集めが最優先だ。

本屋の老店主がイチノジョウに優しいのは、ツンデレだったというわけではなく、並行世界の彼からの恩返しだろう……と私は勝手に思っています(第九巻参照)。実際、伏線でもなんでもありません。

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