エピローグ
冒険者ギルドを出る。
誰も後ろからついて来ていないことを確認し、俺はため息をついた。
そして、町の門近くの馬屋に向かった。
ここから乗合馬車が出るらしく、今は無人の馬車がメンテナンスされていた。
幌もついていない、荷車のような馬車だ。
「おう、ルー――」
「俺の名前はイチノジョウだ、ジョフレ」
「そうか、じゃあ、ジョーだな。ジョ仲間だな」
真っ白に燃え尽きそうなニックネームだな。
日本での本名はイチノスケだから、そんなニックネームをつけられるのは生まれて初めてだ。
あと、勝手に仲間にされた。
そして、ジョフレは貨幣の入った袋を前に出して俺に今日の報告を告げた。
「大儲けだぜ。鱗100枚ぴったりでなんと800センスになったんだ」
「しかも、大きな鱗が5000センスになったの。魔力実験の触媒になるって言ってたわ」
「合わせて5800センスだ」
「掛けたら400万センスよ!」
「なら合わせて400万5800センスだな!」
掛ける意味もなければさらに合わせる必要もないだろうに。
てか、暗算早いな。実は賢いんじゃないか?
「でも、ギルドの依頼書をはがしたから500センスの罰金だった」
「よかったじゃないか。5300センスも残って」
「あぁ、盗賊やってた罰金4100センス支払っても1200センスも残ったぜ」
「これで1年は生活できるわ」
1200センス……12万円で1年か。
袋の中はどうやらほとんど銅貨だったようだ。100枚が銅貨で11枚銀貨らしい。
こっちの世界でも1年が12ヶ月だとすれば、バカップルで1ヵ月1万円生活をリアルでしているのか……すごいな。
「ありがとうな、ジョー! お前に出会えてよかったぜ!」
「ありがとうね、ジョー! 今度会ったら一緒にお酒でも飲みましょう! ハルもね!」
ハルにはお酒を飲ませたらダメだな、と思いながら、ふっと、俺の肩の重さがなくなった気がした。
俺も、こいつらに出会えてよかったと思ってしまう。
「ま、1200センス、もう全部使っちまうんだけどな」
「全部!?」
「ああ、馬を買って、旅に出ることにしたのさ」
買い物も豪快なら、生き方も豪快だな。
なんともまぁ……買われる馬は憐れなことで。
「お客さん1200センスですと、こちらになりますがよろしいですか?」
「おう、僕に相応しい最高の名馬だな。毛並みがとてもきれいだ。エリーズには敵わないけどな」
「かっこいい馬だわ。ジョフレには及ばないけど」
「エリーズ」
「ジョフレ」
「スラッシュ!」
抱き合おうとする二人に、俺は思わず手刀を放っていた。
おそらく馬屋の主が連れて来たソレは嘶いていた。
小さな体、短い脚、どう見てもそいつはロバだった。
「じゃあな、ジョー!」
「じゃあね、ジョー!」
二人は一頭のロバにまたがると、仲良くゆっくり去って……いかずに草を食べていた。
最後まで笑わせてくれる奴らだ。
馬車のメンテナンスが終わり、俺達は運賃を支払って馬車に乗り込む。
代金は二人で120センスだった。他にも幾人か馬車に乗り込み、無言で座った。
「イチくーん!」
「お兄さん!」
もう少しで発車という時間に、マーガレットさんとノルンが走ってきた。
マーガレットさんの手にはランチバッグが、ノルンの手には金属の筒が握られていた。
「これ、約束のお弁当よ♪ 二人分作ってきたわ」
「お兄さん、スープも持ってきたわ。ハルさんと途中で飲んでね」
「ありがとう、マーガレットさん、ノルンさん。また必ず戻ってきますから、その時はまた、ごはんを御馳走してください。お土産持ってきますから」
「ありがとうございます、マーガレット様、ノルン様。二人から受けた恩は白狼族の名にかけて、生涯忘れることはいたしません」
ハルはいちいち言うことが大袈裟だな。
でも、俺もこの二人に出会えてよかったと本当に思う。
そして、馬車は動き出す。
俺は、二人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
~第一部 ハルワタート編 完~
一章終了時ステータス(物理特化)
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名前:イチノジョウ
種族:ヒューム
職業:無職Lv62 拳闘士Lv18 剣士Lv19 見習い剣士Lv28 狩人Lv25
HP:376/376(10+102+135+81+48)(×1.1)
MP:72/72(8+9+15+19+21)
物攻:469(9+151+124+82+61)(×1.1)
物防:410(7+102+140+69+55)(×1.1)
魔攻:88(4+14+20+19+31)
魔防:89(3+16+25+23+34)
速度:436(4+139+92+99+102)(×1.1)
幸運:66(10+10+10+10+20)(×1.1)
装備:綿の服 皮の靴 鉄の軽鎧 鉄の剣
スキル:【剣装備Ⅱ】【スラッシュⅡ】【回転切りⅡ】【剣術強化(小)】
取得済み称号:レアハンター 迷宮踏破者 スキルマニア
転職可能職業:平民Lv31 農家Lv1 狩人Lv25 木こりLv14 見習い剣士Lv28 見習い魔術師Lv26 行商人Lv6 見習い槍士Lv1 剣士Lv19 弓士Lv1 斧使いLv1 槌使いLv1 見習い錬金術師Lv6 魔術師Lv9 拳闘士Lv18 遊び人Lv1
天恵:取得経験値20倍 必要経験値1/20
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○整理済みスキル
ステータスアップ
【HP強化(微)】【物攻強化(微)】【物防強化(微)】【速度強化(微)】【命中補正(微)】【幸運強化(微)】【拳攻撃】
装備系
【弓矢装備】【杖装備Ⅱ】【斧装備】
魔法系
【火魔法Ⅱ】【水魔法】【土魔法】【風魔法】【雷魔法】【魔力ブースト】
戦闘術
【投擲】【気配探知】
生産術
【伐採Ⅱ】【解体Ⅱ】【錬金術】
鑑定系
【スキル説明】【職業鑑定Ⅱ】【食品・鉱物鑑定】
その他
【第五職業設定】【職業変更】【スキル整理】
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○魔法
プチファイヤ:Lv1
プチウォーター:Lv1
プチウィンド:Lv1
プチストーン:Lv1
プチサンダー:Lv1
ファイヤ:Lv1
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これで第一部終了です。
気が付けば週間ランキング1位という栄誉ある賞をいただき、
ブックマーク、評価をしてくださった皆様には感謝してもしきれないです。
気付いている方はいないと思いますが、6人の女神、奴隷の最初が獣人という設定は、私が中途半端に書いて終わらせてしまった
「KISSから始まるチートな無双時間」
から取り出しました。もしかしたら、こちらと似たような設定がいろいろと出てくると思いますが、温かい目で見守っていてください。
第二部でも主人公はいろいろと頑張ります。