望まぬ宝石
ということで、ニンジン七本を与えた結果、ケンタウロスはジョフレ、エリーズと無事に合流を果たすことになるだろう。
倒したドラゴンは、マイワールドに運ぶ。さすがにこれを持って洞窟から出ることはできない。
「ご主人様。ドラゴンの財宝はなさそうですね」
「だな。でも財宝が眠ってる場所は予想できるだろ?」
俺はそう言って、凍り付いた地底湖を見た。
そう、地底湖――ランドウ湖の底。
そこに財宝が眠っていると俺は読んだのだ。
「では、一度外に出て、私が湖に潜ります」
「いや、その必要はない。うちにはサルベージの得意な奴がいるから、そいつに任せたほうがいいだろ」
話に聞いていた通り、ハルとキャロの道案内により、滞りなく地上に戻ることができた。
ハルとキャロには、ドラゴンの角を持って、村まで走ってもらった。
ドラゴンに不安がっていた村人たちもこれで安心することだろう。
そして俺たちは財宝探しだ。
ランドウ湖の浅瀬部分には大量のスーギューがいるが、中心の部分は深くなっており、一頭もいない。俺たちはマイワールドでピオニアに作ってもらったボートに乗り、湖の中心に移動する。
先ほどと同様、鷹の目を使い、湖底を探索――横穴を見つけた。
「ここからはシーナ三号の出番デスね!」
「あぁ、サルベージといえばお前の十八番だからな! 頼んだぞ、シーナ三号! 財宝を探してきてくれ」
「任されたデス! 海賊王になるデス!」
また意味の分からないことを言う。
ここは海じゃなくて湖だよ。
まぁ、やる気になってるならいいか。
ロープを括ったシーナ三号が湖に飛び込んだ。
そして――合図が送られて来たので引っ張る。
「獲ったどーデス! マスター、こんなにいっぱい貝が採れたデス!」
岩牡蠣みたいな貝を大量に取ってきたシーナ三号が、俺に自慢げにそれを見せた。
「……財宝を探せっていっただろ?」
「財宝……? あ、最初の半文字しか聞いてなかったデス」
「財宝の最初の半文字が貝って、文字で書かないとわからないことを言うな。せめて一文字くらい聞きやがれ」
こういうやり取りは、ハルやキャロとは絶対にできない。
不覚にも、こういう日本語を使った言葉遊びは少し楽しいと思ってしまった。
とりあえず、この牡蠣はマイワールドで育てさせてもらおう。
淡水牡蠣なら、泉で育てればいいか。
「じゃあ、今度こそ宝を探してこいよ」
「わかったデス!」
シーナ三号が湖に潜る。
そして、今度は五分経過したところで、合図が送られてきた。
縄を引っ張る。
引き上げる。
「獲ったどーデス! マスター、これがとれたデス」
といってシーナ三号が俺に見せたのは――右手首っ!?
まさか、この湖にはバラバラになった遺体があるのかっ!?
「ってあれ? これ、機械――ってお前の手じゃないか」
「はい、とれたデス」
「とれたって、そっちのとれたかよ! ほら、嵌めてやるからじっとしてろ」
シーナ三号の右手首を嵌める。しっかりと嵌ったな。
「大丈夫か? 無理なら俺が潜って取りに行くが」
「任せろデス! シーナ三号の辞書に不可能の文字はないデス!」
「お前の辞書機能にはいろいろな文字が不足していそうだな」
任せろと言うから任せてみるか。
シーナ三号は再度海に潜った。
そして、また五分後。
「獲ったどーデス!」
「それ、毎回言わないとダメなのか?」
「マスター、これをどうぞデス!」
「これは――亀っ! 亀じゃないかっ! お前、いい加減に――」
「アダマンタートルデス!」
「しろ――ってアダマンタートルっ!?」
俺はその黒い亀の甲羅を金属鑑定で見た。
【アダマンタイト】
……そう、その甲羅は紛れもなくアダマンタイトでできていたのだった。
そのうち、オリハルタートルも出てくるんじゃないだろうか……。
とりあえず、目的のひとつが手に入った。
「よし、帰るか!」
と言ったときだった。
アダマンタートルの甲羅に入った罅の間に、緑色の宝石が挟まっているのが見えた。
宝石鑑定を使い、その宝石を鑑定する。
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職奪の宝玉
相手の名前を告げることで、職業を奪い、己のものとする。
奪った職業のスキルを己のものとして使うことができる。
奪われた人間が死ぬと宝石は砕ける。
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……あった。
はぁ、見つからなくてよかったのに。
その後、シーナ三号は何度か湖に潜って調査を行った。
結果、金貨や宝石の詰まった袋は見つかったが、二つ目の職奪の宝玉はなかった。
職奪の宝玉が複数あれば、気が向いた時に無職を辞めてもいいと思ったのに。
「ふふふ、シーナ三号は大活躍デスね!」
俺の気持ちを知ってか知らずか、シーナ三号が胸を張って成果を自慢した。
そんなシーナ三号が、この章のメインヒロイン




