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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
砂漠の王国編

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大精霊と大精霊

 危なかった。

 あのままだったらどうなっていたことか。

「マイワールドっ!」

 魔法を唱え、マイワールドに戻って扉を閉じた。

「マスター、倒せた……ようじゃないな。逃げてきたのか?」

 そこに待っていたニーテが尋ねる。

「ああ、普通に倒すのは無理だ」

「だろうな、逃げて正解だぜ。ダークエルフたちも部隊を編成しているが、出さないほうがいいぞ」

「まぁ、しばらくここでゆっくりして、精霊がどこかに行ったらゆっくり旅に戻ればいいさ。それとも、フロアランスに転移してハルたちと合流するか?」

「いや、最後にちょっと試したいことがあってな、それをしてからだ」

 俺はそう言うと上半身の服とズボンを脱いで、パンツ一丁になった。

 すると、ニーテは顔を赤らめて、そして恥じらうように言った。

「……いいぜ、いつでも」

「ちげぇよ! 勘違いするな」

 俺はそう言って、海へと飛び込んだ。

 できるだけ深くへと潜っていく。

 ここだ――ここならばいいんじゃないか?

 突如、俺の息は限界になった。

「ぼぼぶびばん(拠点帰還(ホームリターン))」

 おぼれそうになりながらも魔法を唱え、なんとか陸地に帰還。

 ちょっとやばかった。

「あれ? マスター、いったい何をしたんだ?」

 潜って戻ってきただけに見えるから、ニーテには俺が何をしたか不思議だろうな。

 何をしてきたかって?

「ちょっとピオニアに怒られるかもしれないことだ」

「ピオニア姉さんに怒られる?」

 ああ、造船所の一件は俺の過失は少ないが、今回は百パーセント俺の責任だからな。

「ん? マスター、海の水位が下がってないか?」

「そりゃ、海の底に大きな穴を開けて来たからな」

 俺はタオルで体を拭き、そのタオルでニーテの目を塞いでからパンツも履き替える。

「そうか、穴を開けたのか――え?」

「サラマンダーを海の中に入れることができないなら、サラマンダーに海の水を流し込んでやれって思ったんだ。どうだ? この頭脳プレイは」

「うわぁ、そりゃピオニア姉さん怒るな。ようやく海底の海草がいい具合に増えてきたから魚を増やす準備ができたって言ってたのに」

「ピオニアには俺から謝っておく。実際に海草を植えてたシーナ三号にもな」

 水位が半分になったところで、そろそろいいだろうと、俺はマイワールドの扉を閉じ、こちらから開きなおす。

「待て、マスター。外には私が先に出る」

「は? なんでだ?」

「念には念を入れてだよ。私が帰って来なかったらマスターは外に出るんじゃねぇぞ」

 大丈夫だと思うんだけどな。

 ニーテの気持ちに鑑み、俺はその言葉に甘えることにした。

 扉を開けると、ニーテが潜った。

 そして、すぐにニーテが戻ってくる。

「マスター、いちおうは大丈夫だ」

 いちおう?

 その言葉の意味がわからずに俺は外にでた。

「こりゃ凄いな――海がぬるま湯になっちまってる」

 あちこち湯気が上がっている。

 ただし、火の玉精霊の気配はなくなった。

 そして、サラマンダーは――

「泳いでる」

「倒せていないみたいだな」

 だが、それでも弱らせるくらいの効果があったはずだ。

 それともうひとつ。


【イチノジョウのレベルが上がった】


「よし、レベルが上がったな」

「サラマンダーを倒したのか?」

「いや、倒したのはサラマンダーじゃない。サラマンダーが落ちたのは、サンドワームの巣みたいだったからな。その遺跡の中にはサンドワームもいただろうから、それが窒息して死んだんだと思う」


【氷魔術師スキル:氷魔法Ⅲが氷魔法Ⅳにランクアップした】

【雷魔術師スキル:雷魔法Ⅲが雷魔法Ⅳにランクアップした】


 よし、氷魔法のレベルが上がった。

 ならば、最後に無茶をしてみるか。

 後は任せましたよ、セトランス様!

 マジックリストから覚えた魔法を確認する。

「ブースト細氷大嵐(ダイヤモンドダスト)!」

 俺が放った極大の氷の魔法が、吹雪となってサラマンダーを包み込む。

 そして――気付いたら巨大な氷山ができあがっていた。

 にもかかわらず、サラマンダーはその氷の中で手足をバタバタ動かしている。

「ははは、サラマンダー半端ないな、これでも倒せないのか。もう動けねぇや」

 徐々に氷に罅が入ってきた。

「逃げるか?」

「いや、水で流して氷山の中に閉じ込めたんだ――これだけしたら後はセトランス様が何とかしてくれるだろ」

 そう思ったとき、火の怪鳥が舞い降り、氷山の中にいるサラマンダーを飲み込んだ。

 なんとなくわかった。

 あれがセトランス様の眷属である大精霊なのだと。

 火の大精霊が火の大精霊を飲み込んだ――そんな奇跡が起こったのだと。

『助かったよ、イチノスケ君』

 セトランス様の声が聞こえてきた。

「いえいえ、どういたしまして。何かご褒美とかもらえるんですか? ユーティングス侯爵も望みの褒美をくれるそうですが」

『そうだな、それではこういうのはどうだろう? 君の頑張りに免じて、ダークエルフをマイワールドに連れ込んだことと、サラマンダーの封印を解いたことは不問にしよう』

「……ははは、ありがとうございます」

 もしかして、サラマンダーを俺がなんとかしなかったら、女神様にめっちゃ怒られてたってことか?

 よかった、ちゃんと戦って。

「で、なにしてるんだ、ニーテ」

「いやぁ、あたしのマスターは本当にかっこいいって思ってな。惚れ直したよ」

「うん、惚れ直したのはいいが、本当になにしてるんだ?」

 ニーテは倒れた俺の唇を奪ってきた。

 寝込みを襲われた――って、

「……あれ?」

 おかしい、さっきまでの倦怠感がなくなってる。

「マスターに魔力を少し戻したんだ。これで少し動けるようになっただろ?」

「あ……あぁ、ありがとう。お前、そんなことができたのか?」

「このくらいはな。今度、倍にして返してくれよ」

 ニーテが指を二本立てて、そんな申し出をしてきた。

「ああ、わかったよ。さて、帰るか」

 こうして、俺のニックプラン公国を舞台とした大冒険は幕を閉じた。

次回エピローグで、今章終わりです

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