ピコピコ乱舞
創生剣とピコピコハンマーの複合技だ。
将軍が気絶したのを確認し、俺は仮面を外す。
「悪いが俺はダークエルフじゃないんでね。俺の首なんて出してもなんにもならねぇよ」
これで大丈夫かな。
そう思ったが、それほど単純なものではない。
「イチノジョウ、大変だ」
ララエルがやってきた。
「どうした!?」
「森の北西、砂漠より大部隊が押し寄せてくる。おそらく、火で炙りだしたダークエルフをそちらの本隊で叩くつもりだったのだろう」
なるほど、軍はできることならダークエルフを生け捕りにしたかったのだろう。
火計はあくまでも燻り出すつもりだったってことか。
「火計が失敗したから撤退するってことはないか?」
「それは敵に聞いてくれないとわからない」
だよな。
仕方がない、そっちにも行くか。
リリアナには先に集落に戻ってもらうことにして、俺はララエルと一緒に森の北西へと向かった。
「こりゃ凄い人数だな――」
兵の数は五万人くらいいるんじゃないか?
兵士が足りないという噂はどこに――ってあれ?
あれは十字架?
まさか、教会の兵か。
(おいおい、教会とこの国は戦争中じゃなかったのか――すでに裏で協定を結んでいたってことか)
となると、シララキ王国の軍も混ざっているかもしれないな。
いちおうシララキ王国の準貴族なんだし、同じ国の兵と戦うのってやばいよな。
まぁ、時間を稼ぐだけなら、なんとかなるか?
「にしても、よくあれだけの大軍、砂漠を越えられたな。サンドワームとか出くわさないのか?」
「魔物避けのスキルを持っている者がいるのだろう。教会の者の中には、太陽の光がある限り魔物を遠ざけるユニークスキルを持つ者がいると聞く」
「太陽の光で魔物を遠ざける――へぇ、そういうスキルがあるのか」
まるでキャロの逆だな。
魔物でも出ればそっちに気を取られてくれると思ったんだが。
海賊みたいに、空に魔法を放って脅して――ってのも無理だよな。魔力がもったいない。
相手は統制が取れている軍隊だ。
せめて実際に痛みを与えられたらなんとかなるかもしれないが――やってみるか。
「肉体ブーストっ!」
これで一定時間、物理攻撃力が大幅に上昇する。
こうして――
「竜巻切りっ!」
と鋼鉄の剣で放った。
すると、高さ五十メートルを超える竜巻が現れ、軍のほうに向かって進んでいった。
竜巻は砂を巻き上げ、砂嵐となる。
「おい、なんだあのバカでかい竜巻は――君が生み出したのか?」
「ああ――竜巻を生み出して相手を切り刻む。本当はもっと小さな竜巻しか生まれないんだがな、俺の力ならあんな大きさになるんだ。真空切りのように切れる風だよ」
「そんなものを使ったら何人死ぬと思うっ!」
ララエルは優しいな。
敵が死ぬことも気にかけているのか。
「でも、それは大丈夫だよ」
竜巻を前に撤退を開始した兵だが、それも間に合わずに竜巻に巻き込まれる。
竜巻が軍に衝突した直後、その音が聞こえてきた。
――ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ…………
凄いな、音が重なってこんな遠くにまで聞こえてくるのか。
竜巻切りにもピコピコハンマーの効果も重ねた。
攻撃されたらダメージは喰らうが、絶対に死なない。だが、しかし一定のダメージを喰らうと気絶する。そして、ダメージを喰らったら「ピコ」という音がなる。
「ダメージは喰らうし気絶もする――が、絶対に死なない切れる竜巻! ついでにめっちゃうるさいから指揮官の声が届かず、軍の統制が乱れる。時間稼ぎにはぴったりだろ」
「な……なんという力――」
「よし、もういっちょ――」
俺は二度、三度と竜巻切りを使った。
そして四度目の竜巻切りを放った――そのときだ。
鋼鉄の剣がポキリと音を立てて折れた。
「あちゃあ……折れちまったか」
結構気に入っていたんだがな。
今度も自分で作るか。
さて、時間稼ぎはこれで十分。
殺してはいない、気絶しているだけの兵だ。そのままにして進軍はできないだろう。
俺の経験からして、気絶から目を覚ますまで数時間くらいかかる。
その間に、黄金樹の移動をさせるとするか。
黄金樹に向かった俺たちが見たのは、急ピッチで根元を掘り進めるダークエルフたちだった。
「軍のほうの足止めは成功した。急いで掘り出すのだ」
ララエルの指揮のもと、ダークエルフたちはさらに地面を掘っていく。
その間にマイワールドへの扉を開いた。
最大サイズで開けたところ、高さ十メートルくらいの扉を作ることができた。
そこからニーテが現れる。
突然の彼女の出現に全員警戒したが、ララエルが、
「大丈夫だ、我々がこれから向かう新天地の管理人だ」
と言ったことで皆落ち着いた。
「マスター黄金樹を受け入れる準備は整ったぜ! あたしはこっちを手伝いにきた」
そう言ってニーテは自分の手をシャベルに変形させた。
さらに土を掘る速度が速くなる。
土を掘る……か。そうだ、あれが使えるな。
地面に手を当て、
「土砂掘りっ!」
とスキルを唱えた。すると、一気に土が吹き飛ぶ。しかし、土の下の木の根は無事だ。
よし、これならいいペースで掘れるな。
速度を上げた俺たちは全員がかりで土を掘り進めた。




