魔物の養殖をしてみよう
そのあと、俺は釣りを再開し、さらにコピーキャットのレベルを上げた。
釣果は鮫っぽい魚が十二匹、カツオのような魚七匹、マグロっぽい魚が四匹、ダイオウイカみたいなイカが一杯、あとイルカっぽい哺乳類が釣れたが、それはリリースした。なんとなく可愛かったので。
ほかにも小魚がいっぱい釣れたが、それらは殺してもほとんど経験値が入らなかった。
あと、エメラルタートルの亜種であるルビアタートル(甲羅がルビーでできている)を倒し、コピーキャットのレベルは17にまで上がった。
「ログプレイバック」
と唱え、これまでの釣果――というか、レベルアップ具合を確認する。
レベルは以下のように上がって行ったらしい。
【イチノジョウのレベルが上がった】
【イチノジョウのレベルが上がった】
【イチノジョウのレベルが上がった】
【コピーキャットスキル:フェイクアタックを取得した】
【コピーキャットスキル:筆跡模倣を取得した】
【イチノジョウのレベルが上がった】
【イチノジョウのレベルが上がった】
【イチノジョウのレベルが上がった】
【コピーキャットスキル:思考トレースを取得した】
【コピーキャットスキル:贋作作成を取得した】
【イチノジョウのレベルが上がった】
【イチノジョウのレベルが上がった】
という感じだった。
レベルアップの回数が少ないのは、ルビアタートルを倒したときに一度にレベルが3上がったからだ。やはり、宝石の亀はレベルが上がりやすいようだ。
逆に亀以外の魚ではあまりレベルが上がらなくなった。
スキルについて詳細に調べていく。
俺が求めていた思考トレースが手に入ったのはいいが、これは考えていることが具体的にわかるというわけではなく、対象の感情をコピーできる程度。嘘発見器には使えるかもしれないが、ミリの現在の状況がわかるようなものじゃなかった。
フェイクアタックは、フェイクマジックの物理攻撃バージョン。
筆跡模倣は、文字通り筆跡を真似して文字を書くスキル。
贋作作成は、美術品や骨とう品の偽物を作るスキルっぽい。
筆跡の模倣、贋作の作成、どちらも犯罪色が強いなと思ったが、しかし便利である。
俺は共通言語把握というスキルのお陰で、この世界の文字は理解できるし書くこともできるようになった。しかし、書くことができても、それは綺麗な字ではない。やはり長い年月この世界で文字を書き続けた人に比べればミミズがのたくったような字しか書けないのだ。しかし、この筆跡模倣があれば、綺麗な文字を模倣することで文字を書くときに要らない恥をかかなくてもよくなる。
贋作作成も、偽物だと言えば憚られるかもしれないが、しかし同じものを大量に作るときはかなり便利なスキルである。
たとえば、銀細工――俺はスキルを使って銀のイヤリングを大量に作ったことがあるが、同じものを作ったとしてもやはり一点一点微妙に異なる。会心の出来のものもあれば、いまいちのものもある。しかし贋作作成を使えば狙って会心の出来のイヤリングを量産できるだろう。
ただ、ハルが持っている贋作鑑定というスキルを使えば、俺が作ったイヤリングでも贋作だと言われてしまうだろうか。
面白いスキルが多いコピーキャットだが、しかしレベルが非常に上がりにくい。恐らく、上級職なのだろう。
にも拘わらずレベルが一気に上がる宝石亀シリーズ。
できればもっと手に入れたいが――
「今夜は卵焼きデス」
「はぁ、だから亀は食べな……卵焼き?」
卵なんてあるのか? 鶏卵ならミリがいくつも用意してくれていたっけ。
卵焼きか。
ちょっと食べたいな。
卵焼きの上に大根おろしを乗せて、醤油をかけて食べたいな。ポン酢も捨てがたい。
「シーナ、卵焼きの作り方はわかるのか?」
「わかるデス。だし巻き卵も作れるデス」
「本当かっ! よし、早速頼む」
「了解したデス!」
シーナ三号はそう言って、卵を割ろうと――
「おいっ!」
俺はシーナ三号の頭を叩いた。
なぜなら、シーナ三号が持っていたのは、鶏卵じゃなかったから。というより、鳥の卵でもない。もっと小さくて真ん丸の卵――どう見ても亀の卵だった。
「これ、もしかしてルビアタートルの卵か?」
「はい、こっちにはエメラルタートルの卵もあるデス。すでに受精しているようデス。近くに宝石亀の隠れた産卵場があるのかもしれないデス」
確かに、少し離れた場所に島が見える。
「受精卵か、もしかしたら」
俺はシーナ三号から卵を奪うと、それを持ってマイワールドへ行った。
「ピオニア、ニーテ、いるかっ!?」
俺が叫ぶと、そいつが走ってきた。
「お帰りなさいませだぜ、マスター」
メイド服姿のニーテ。
誰だ、こいつに妙な知識を植え付けたのは? って尋ねるまでもないな、メイド服の図案を残した人物――真里菜だろう。馬鹿な置き土産を残したものだ。
「ニーテ、この卵を見てくれ」
「ん? これは亀の卵か? わかった、これを卵焼きにすればいいんだな、任せとけ」
「ちげぇよ。発想がシーナ三号と一緒じゃねぇか」
「ちゃんとケチャップで好きな言葉を書くぞ?」
「そんなことまで聞いていたのかよ。あと、それは卵焼きじゃなくてオムライ……じゃなくて、作るなっ! これを孵化させたいんだ。できるか?」
「ん? あぁ、孵化か。ちょっと見せてもらうぜ」
ニーテはそう言うと、卵を見て頷いた。
「この卵はダメだ。もう孵化できない。それ以外は可能だな」
ニーテはいくつもある卵の中から一個だけ選んだ。
見た目の違いは判らないが、その卵だけはもう死んでいるらしい。
「孵化して増やしたい。養殖して経験値を稼ぎたいんだ」
「あぁ、難しいぜ。これって見たところウミガメの卵だろ? この世界には海がないからな」
「あぁ……そうか」
海がなければ、ウミガメを育てられない。
確かにその通りだ。
「水槽でも作ればいいのか?」
「んー、水槽でも一匹や二匹は育てられるけど、マスターが言っているのはそういうことじゃないんだろ?」
「あぁ、確かに一匹や二匹なら、わざわざ養殖してまで稼ぐ経験値じゃない」
手間暇かけて育てるのではなく、勝手に繁殖するのが理想だった。
妙案だと思ったんだけどな。
「だよな。それなら、海を創ったらどうだ?」
「海を創る? そんなの可能なのか?」
「ああ、魔力さえあればな――あぁ、でもダメだ。この世界の大半はすでにピオニア姉さんが手を付けてるから、なにか壊さないと――んー、どうせだったら、この世界をもっと大きくするってのはどうだ?」
「世界をもっと大きく? そんなのできない――いや、できたわ」
この世界に来て最初に星を創ったあと、いろいろと項目が増えていた。
そのなかに、世界拡張という項目があったのを思い出した。
MP500で世界拡張ができたはずだ。
「じゃあ、世界拡張をしてみるか」
俺は、「今晩はカレーにするか」みたいなノリで、世界を拡張することに同意した。
明日12/25は、「転生没落王子は銭使いで成り上がる!?」の発売日です。




