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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
砂漠の王国編

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パウロ伯爵の勧誘

(城みたいな家かと思ったけれど、それほど大きくないな)

 とはいえ、四階建てで敷地も広く、 

 パウロ伯爵の屋敷に到着した俺たちは、そのまま風呂へと案内された。

 ただし、浴槽のある風呂ではなく、蒸し風呂で、湯浴み着を着て入るタイプだ。

 俺には浄化クリーンがあるので必要ない――もっと言えば、マイワールドに温泉があるのでやはり必要ないのだけれど、鈴木も気持ちいいよと勧めてきたので、結局断り切れずに入る事になった。

 俺、いま鈴木とのBLルートに入っているんじゃないだろうか? と不安になるけれど、まぁ、鈴木にも可愛い彼女が三人いる。

 それに、ハルのことを除けば手を出せない女性が多いことも共通しているので、そちらのほうで話は盛り上がった。

 俺たちの服は洗っておくということで、寝間着を用意してもらい、そのまま寝室で一泊させてもらった。

 勿論部屋は別だ。


 翌日、俺の服をメイドが持ってきた。

 綺麗に畳まれていただけでなく、付いていた汚れも落ちていた。

 鈴木の部屋に行くと、最初はその話題になった。

浄化クリーンの魔法を使ったようだね」

 なるほど、生活魔法は珍しいけど使える人がいないわけではないんだよな。

 生活魔法Ⅱを覚えれば城で働けるって言っていたから、それよりも数が多い、生活魔法Ⅰが使える人なら貴族の家で働いていても不思議ではないな。

 俺たちは謁見室へと向かった。


 謁見室というから、三段くらいの階段があり、玉座のような椅子があると思ったけれど、そんなことはなく、普通の応接室だった。

「楠君、もしかして緊張しているの?」

「逆になんでお前は緊張しないんだよ。伯爵って言えば、オレゲールの父親よりもさらに爵位が高いんだぞ」

「おれげーる……って誰?」

「ハルを買おうとしていた貴族だよ……って、まぁ、悪い奴というわけではなかったんだけどな」

 誘惑士のキャロと一緒に迷宮に入るなど、無茶なことをする奴だったけれど。

「大丈夫だよ、パウロ伯爵はいい人だから。それに、僕のいまの雇い主でもあるしね」

「そんなこと言われたら、鈴木まで高貴な存在に思えてくるから言うな」

 俺はそう言って出されたお茶を凝視する。

 これって、飲んだ方がいいのか? それとも伯爵の許しをもらってから飲んだ方がいいのか?

「落ち着いて、楠君。そうだ、バイトの面接だと思えば楽なんじゃない? したことあるんでしょ?」

「そうか、面接なら慣れているから――はっ!?」

 俺は思わず立ち上がった。

「面接の基本。面接官の許可をもらうまで椅子に座ってはいけない――という決まりを破っていた。やばいやばい」

 俺はそう言って立ち上がると、扉の近くに立った。

 面接官が来るまでは、椅子の下座で待つのが礼儀だ。

 こういうところから試験は始まっている。

「鈴木、パウロ伯爵の理念はあるか? 好きな野球のチームなんてわかったら助かる」

「落ち着いて、この世界にプロ野球チームはないから」

 そうだった――野球の話題を振られて本社が大阪の会社なので、虎のチームのファンだと思ったら面接官は巨人のチームのファンだった、という五十二回目の面接の失敗談のようなことはないのか。よかった。

「えっと、理念は、貴族は臣民のために働くものであり、臣民は国のために働くものであるかな? 貴族は国民が国を支える手助けをする仕事であり、本来は裏方の仕事なんだって言っていたよ」

「なるほど――素晴らしい会社だな」

「落ち着いて、会社じゃないからね」

 そうだった、会社じゃないんだった。

 しかし、やはり緊張する。

 ここまで緊張すると、就職百連敗の記憶が蘇る。

 そう思っていた時、

「失礼するよ――おぉ、スズキ卿! 無事だったか。ということは、キミがイチノジョー殿だね? 密輸団だけでなく、長年この島を苦しめていた魔象を退治したとか。本当にありがとう。感謝するよ」

 と言って、現れた男が頭を下げた。

 え? この人がパウロ伯爵?

 思っていた以上に腰が低いんだけど、本当に貴族なのか?

【貴族:Lv42】

 本当に貴族――しかも高レベルだった。

 え? 貴族ってこんなに簡単に頭を下げるものなの?


「魔象の退治はこの島の悲願であった。十年前、兵三千を集めて魔象退治に乗り出したことがあるのだが、しかし退治はおろか、傷ひとつ付けることも叶わず大きな犠牲を払ったことがある。それを僅か二人で成し遂げるとは」

「パウロ伯爵、魔象退治はほとんど彼がひとりで成し遂げました。私はそのサポートをしたに過ぎません」

「スズキ卿は本当に謙虚だな。まずはふたりにこちらを受け取ってほしい」

 と俺たちに小袋を渡す。

 その中には、銀色の貨幣が十枚――千センスか。

 んー、少ないな……。

 いや、一日で十万円と思ったら凄いのか。

「聖銀貨が十枚も、本当によろしいのですか?」

「ああ、構わない。民もわかってくれるだろう」

 鈴木が驚き尋ね、パウロ伯爵が頷く。

 またまた、大袈裟な。

 これならあの魔象を解体して象牙を売ったほうが儲かり……ん?

「聖銀貨? 銀貨じゃないのか?」

「違うよ。聖銀貨は聖銀――つまりミスリルの貨幣だよ。一般には流通していない貨幣だけど、その価値は金貨の百倍……と言えばわかるかな?」

「金貨の百倍?」

 金貨は一枚一万センスだから、百万円。

 とすると、その百倍なら、一億……それが十倍で……十億円っ!?

 え? 十億だと!?

 宝くじでも当たらない限り絶対に手に入らない金額だと思っていたのに。

「も、貰いすぎでは?」

「構わないよ。魔象を封印している結界を維持するために私の国は年間三百万センス分の魔石を用意する必要があった。それが必要なくなったのだ。そう思うと七年で元は取れる」

 なんとも豪気な話だ。

 いや、しかし領地持ちの貴族ならこのくらいできるのだろうか?

「それと、イチノジョー殿。其方に准男爵の爵位を授けようと思う。受け取ってもらえるかね?」

「……はい?」

 准男爵?

 それって、俺に貴族になれってこと?

 つまり、無職から貴族にジョブチェンジですか?

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