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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
砂漠の王国編

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鈴木の職業講座

 それにしても、鈴木の奴、なかなか戦い慣れしているな。

 ステータスだけで言えば明らかに俺の方が上。スキルの数も当然俺の方が上。

 それで盗賊を倒した数はほぼ互角。

 聖騎士は剣聖と同じくらい、もしくは剣聖以上の上級職業で覚えているスキルもかなり強力だというのもあるが、戦い方に無駄がないのが大きい。かなり修羅場を潜ってきたのだろう。俺の戦い方はステータスによるゴリ押しがほとんどだから、戦い方を求められる条件付きの戦闘だとこうなるわけか。

 ミリならきっと俺や鈴木よりもさらに上手に戦えるんだろうな。


 これは、きっと成長チート、無職チートの弊害だな。

 考えずに戦っても勝ててしまうから、どうしても戦術というものを蔑ろにしてしまうんだよな。

「なにか考え事かい?」

「ああ、いまごろデスウォーリアー先生、お前の置き忘れた同人誌を見て何を思ってるかなって」

「ぶっ! ずるいよ、楠君。僕を精神的に揺さぶって先にボスを倒すつもりでしょ」

「そのつもりだったら、全力で走ってるよ。俺の方が足は速いみたいだな。速度アップ系のスキルを持ってるお陰かな」

「うわぁ、いったいいくつスキルを持ってるのさ。足の速さには自信があったのに」

 といいつつ、息が切れていない鈴木も流石だな。

 この速度についてこれるのはハルくらいだと思っていた。

「スキルを整理できるくらいの数はあるよ」

「うん、そのくらいなら僕も持ってるんだけどね――あ、そこに罠があるから気をつけて」

 鈴木が言ったとき、踏んだ床が沈む。

 と同時に、前方から矢が飛んできた。

「うおっ」

 思わず避けた。矢は俺の頭があった場所を飛んでいき、後方に消えた。

「そこは避けるんだ」

「毒とかあったら怖い……っていうより本当の不意打ちをされると考える余裕もないよ。それにしてもよくわかったな、罠があるって」

「罠探知は冒険者の必須スキルだよ? 覚えてないの?」

「……あぁ、覚えてない。どうやって覚えるんだ?」

「知らないんだ。えっと、冒険者ギルドの講習会に参加するんだ。3万センスもするけどね」

「講習会でスキルを覚えられるのか?」

「ええっと、講習会に参加して、テストに合格できたら罠士って職業が解放されて、罠士レベル3になると罠探知ってスキルが手に入るんだ。罠士は、罠を分解したり組み立てたりするだけで経験値になるから、罠士になって罠の分解、組み立てをひたすら繰り返せばいいんだよ」

「待て、テストに合格って、そんなんで転職できるようになるのか?」

「少しはね。イチノジョウくん、成長チートの職業を持っているなら、なんとかの極みって称号持っていたりしない?」

「ああ、持ってるぞ」

 レベルがカンストした時にもらえる称号だ。

 いまのところその詳しい効果はわかっていないけれど。

「教官っていう職業になると、極めた職業に就職できるための試験を出題できるスキルを覚えられるんだ。そのスキルを持っていると、特定の人に試験を出すことができる。その試験に合格できたら職業が解放されるんだ。勿論、上級職業ほど、試験の内容も難しくなって、合格者がいままで出たこともない試験もあるって聞くけどね」

 そんな制度があったのか。

 まったく知らなかった。

「ちなみに、教官にはどうやったらなれるんだ?」

「教官になるための試験を受けたらなれるよ」

 試験を受けさせることができる教官になるには教官試験を受けないとなれない、となると、試験を受けさせることができる教官になるには教官試験を受けられる教官はいったいどうやって教官になったんだ? 鶏が先か卵が先かみたいな事になりそうだけど、まぁ最初のひとりはユニーク職業だったんだろうな。

 そうか、そんな裏技があったのか。

 ちなみに、罠士になるための試験は、罠士が作った煙玉の罠を解体することらしい。

 素人にはまず解体できないけれど、講習会でしっかり勉強すれば三割の確率で合格できるんだそうだ。

 三割って、結構厳しい――というより難関大学レベルだと思ったんだけど、考えてみればこの鈴木、医者の息子だった。

 しかも、航海中に聞いたんだが、こっちの世界に転移する前は医者になることを夢見ており、有名医大の合格率はいつもA判定だったというのだから、試験や講習は得意中の得意なのだろう。

 俺が受けたら絶対に落ちるだろうな。

 それにしても試験で職業が解放されるのか。

「つまり、人間版伝授ボスだと思ったらいいのか?」

「ああ、それでいいよ。伝授ボスの方が珍しいんだけどね。試験はカンニングとかできないから、結構難しいみたいだけどね。あ、でも楠君なら戦闘系の試験なら合格できそうだよね」

「そうだな。ちなみに、聖騎士になるための試験はどんなのだ?」

「ははは、聖騎士になるための試験はないよ」

「そうだった……聖騎士になるには騎士のレベルを50にし、かつ貴族であることが条件だっけか? あれ? でも貴族って生まれながらに貴族なんだよな? 貴族にはどうやってなったんだ?」

「王様や教皇様から爵位を授与されたら貴族になれるよ。有用だと認められた迷い人は、教会本部から食客扱いされて異世界貴族として認められるんだけど、教会から聞かされなかった?」

 聞かされてない、というか俺はそもそも教会に転職しにいっていない。

 同じ日本人であるマリナは……職業が大道芸人でしかも転職できない時点で教会から見放されただろうし、ミリは……あいつの考えは俺にはわからん。

 あ、でもダイジロウさんは勇者と一緒に行動していたっていうから、食客扱いの貴族だったのかもしれないな。

 ちなみに、その話を聞いた俺は、今後教会の本部には極力近付かないでおこうと決めた。

 俺は貴族になるわけにはいかない――第一職業が貴族になったら無職チートがこれ以上増えなくなるからな。

 と思っていると大きな扉の前にやってきた。

 間違いない、この扉の奥から大きな気配がする。

「さて、扉を開けたら勝負だからな」

「うん、いざ勝負」

 そう思って扉を開けると、その扉の中にいたのは――


 巨大な二本足で立つ象人間だった。


 ……あれ? 敵のボスって、象だったの?

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