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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
砂漠の王国編

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暴かれる正体

 錬金術で覚えられるレシピは相変わらず、鉱石から金属を作ったり、合金を作ったりするものばかりで、これといって目新しいものはない。

 ミスリル鉱石もまだミスリル金属に加工できないようだ。

 また明日、銀を加工してレベルを上げれば加工できるようになるだろうか?

 明日以降の課題だな。

 俺はそう言ってアイテムバッグに銀の玉をしまっていき、最後のひとつを掴んだ時、扉の外から気配が近づいてきた。

「大先生、いらっしゃいますか?」

 密輸団のリーダーの男――たしか名前はクッソだったかな?――がノックもせずに入ってきた。

 クッソは俺が持っている銀の玉を見ると、一瞬眉を顰め、そして笑顔を浮かべた。

「ん? おぉ、すごい純度の高い銀ですね、どうなさったんですか?」

「わかるのか?」

「ええ、これでも昔は行商人をしていましたからそのくらいの鑑定眼は持っていますよ……これはまた見事なものです。よかったら私たちが買い取りましょうか? 大先生相手でしたら色を付けますよ」

「悪いが、これは先約がいてな。売るつもりはないんだ」

「そうですか、それは残念です」

「ところで、なにか用事があったんじゃないのか?」

「ああ、そうでした。実は商売相手の迎えが来たので」

「ん? 商売はここじゃないって言ってなかったか?」

「向こうにも都合があるんでしょう。スズキ先生はいらっしゃらないのですか?」

「あぁ、鈴木は――」

 と俺が扉の向こうを見た時、扉の奥からガタガタと音が聞こえてきた。

 そして――

「お待たせ――ゆっくりできたよ」

 と額に汗を浮かべて、爽やかな笑みを浮かべる鈴木。

 数キロジョギングしてきた後の好青年みたいだけれど、中でしていたのは当然スポーツではないだろうから、俺としては苦笑も出てこない。

「では行きましょう」

 クッソに案内され、俺たちは洞窟の奥へと向かう。

 途中、鈴木に小声で尋ねた。

「(ここで全員倒すのはまずいよな)」

「(そうだね。商売相手の居場所は調べておかないと。たぶん、迎えに来た相手がトップということはないから)」

「(なら、ここは護衛の仕事に専念させてもらうか)」

 と小声で話せるのもここまでのようだ。

 デスウォーリアー先生が合流し、俺の横に並んだからだ。

 戦いが始まったら、まずはこの先生を最初に昏倒させたいと思っていたからちょうどいい。


 洞窟の奥にはもう一つの出口があるらしく、そこにひとりの黒服の男が立っていた。恐らく、これが商売相手の幹部なのだろう。

 荷物も荷車に積み終えている。ただし荷車を曳くのは俺の知らない巨漢たち。どうやら、商売相手側の人間らしい。

 ということは、商売相手の本拠地に乗り込むのは俺たち三人とクッソということになる。

 なるほど、護衛が必要なわけだ。

 もっとも、その護衛のうちふたりは敵なのだが。


「お待たせしました、ヤーロ殿。では参りましょうか」

「お待ちください、クッソ殿。そちらの三人は?」

「彼らは私の護衛です。三名までならよろしいのですよね?」

「私が先日伺ったのは、護衛として連れていくのはスズキという闇騎士ひとりだったはずですが?」

「ふたりとも強いので急遽雇うことになったのですよ。こちらはデスウォーリアーの先生でして、こちらのイチノジョーさんは海賊ですが、デスウォーリアーの先生を一撃で倒す凄腕の剣士なのです」

「そうですか、しかし私のもとに妙な噂が届きましてね。なんでも、どこかの諜報員が、そちらの護衛として紛れ込んでいると」

 …………っ!?

 もしかして、俺のことがバレたのか!?

 いや、違う。

 俺がステータス偽造Ⅲで紛れ込んだことを知っているのは鈴木と俺、そして鈴木のパーティメンバーのみ。

 とすると、これは鈴木のことだ。

 鈴木が忍び込んでいることは、鈴木の本当の雇い主側が知っている。そこから情報が洩れていてもおかしくはない。

「そんなことはないと思いますが、調べさせてもらってもよろしいでしょうか?」

 ヤーロがそう言って取り出したのは、職見の宝玉だった。

 やばいやばいやばい!

 ステータス偽造を使えるシュレイルは遠い西大陸の港町。すでにステータス偽造の効果は切れて今は無職になっている。

 このままじゃ――

「どうぞ、イチノジョウさん」

 ヤーロから宝玉を手渡される。

 くそっ、こうなったら一か八かだ!

 俺は意を決し、あるスキルを使用した。

 その結果――

「赤……ですね」

 そう、ヤーロの言う通り、宝玉は赤――つまり犯罪者を示す色に変わっていた。

「すみませんでした、疑いまして」

「いや、別にいいよ。こんなくだらん茶番とっとと終わらせろ」

 俺はそう言ってのけた。

 た……助かった。


 とっさに俺が使ったのは求職スキルだ。

 求職スキルはランダムに選ばれる五つの職業から、一つを選択して第一職業を二十四時間限定で変更するスキル。

 ちなみに、今回、求職スキルを使ったときに表示されたのは、

…………………………

・転職する職業を選んでください

(選択しない場合、五分後自動で選択されます)

くのいち:Lv1

バトルマスター:Lv1

火事場泥棒:Lv1

ドラゴンライダー:Lv1

賢者:Lv1

…………………………

 と、前回よりもかなりまとも、というより豪華なラインナップだった。

 こんな豪華なラインナップの中で火事場泥棒を選ばないといけない俺の情けないこと情けないこと。

 でも、無事に犯罪職になれて、この場を乗り切ることができた。

 無事に乗り切れたんだから、そんな顔をするな、鈴木。

 あとで説明してやるから……求職スキルの入手方法は秘密にするけど。

「次はデスウォーリアー先生、どうぞ」

 俺はそう言って、デスウォーリアー先生を促す。

 すると、デスウォーリアー先生が思いもよらぬ行動に出た。

 突如として剣を抜いたのだ。

「取り押さえろっ!」

 ヤーロがそう言うと、巨漢ふたりがデスウォーリアー先生を取り押さえた。

 そして無理やり宝玉を握らせる。

 すると、宝玉の色が変わった。

 しかし、その色は赤ではない。そして、行商人を示す青でもない。

 金色に光ったのだ。

「金……準貴族、または貴族の色。やはりパウロ伯爵の犬が入り込んでいましたか」

 ヤーロが薄い笑みを浮かべた。

 まさか、デスウォーリアー先生がこちら側の人間だったなんて。

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