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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
砂漠の王国編

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運送屋のリーダーさん

今回は密輸団のリーダー視点の話です。

 私の名前はクッソ。四十五歳の自称商人の男だ。

 運送屋の会計係兼交渉人として二十年間働いており、昨年よりこの運送屋のリーダーとなった。

 職業が【行商人】から【盗賊】になったのは、もう十八年も前のことだ。当時のリーダーの話では、直接物を盗まないと【盗賊】に堕ちることはないと言われていたが、盗んだ物とわかっていながら運ぶことに協力しても【盗賊】に堕ちてしまうらしい。

 ただ、私自体は悪い事をしているという自覚はない。

 さっきも言ったが、私は運送屋――頼まれた物を運んでいるだけだ。ただ、正規品ではないものが多いことや、他国に物資を運び込むための税金を支払っていないというだけで、誰に迷惑をかけているわけでもないつもりだ。

 こういう法を破る運送屋――まぁ、密輸商人とも言われるが――はとても儲かる。そのため、会計係兼交渉人という一応は幹部クラスともなると、一往復の航海だけで行商人だった頃の三年分くらいの給料が支払われる。さらにリーダーになれば、町の娼婦を全員買い上げて毎晩豪遊することも可能だし、憲兵に賄賂を渡せば偽りの身分が与えられ、町を自由に歩くこともできる。

 巷の人間は意外に思うかもしれないが、こういう組織の金払いはいい。上層部も金で繋がっているとわかっているからだ。まぁ、使い捨てに使われるバカはいるが、私はそんな三下じゃなかった。

 会計と交渉、それはつまりこの運送屋の全てを私が操っているのと同じ。替えの利かない部品は、丁寧に扱われるものだ。そして、今度は丁寧に扱う側に回った。替えの利かない部品といえば、私が見つけた大先生もそうだ。

 非合法の交渉では、最終的に荒事に発展するケースが多い。そのために強い人間が必要になる。

 大先生は、犯罪職の中でもめったに見ることがない、拳闘士を極めた犯罪者のみが堕ちると言われる【デスウォーリアー】。

 しかも、剣闘士という拳闘士のさらに上位職にいた元奴隷の男だ。コロシアムの試合で百連勝したら奴隷から解放すると言われ、彼は実際に百連勝を達成、奴隷から解放されたのだが、奴隷から解放された直後、対戦相手を殺したその剣で元主人を殺して逃走したという前歴を持つ。

 一月前に雇った山賊のスズキとは比べるのもおこがましい、上級職だ。

 無論、スズキが連れてきた海賊のイチノジョーも赤子に等しい。


「この大先生がいらっしゃるので、スズキ先生もイチノジョーさんも必要ないんですよ。申し訳ありませんね」


 私がそう言って心にもない謝罪を述べた。

 スズキには契約通りの違約金は払うつもりだし、イチノジョーに至っては契約もなにもしていないのだ。謝罪をする必要なんてない。

 揉め事になるようなら、少し金を握らせれば問題ないだろう、そう思っていたが、そうはならなかった。


「つまり、この男が俺より強いから護衛の必要はないと?」


 イチノジョーは想像よりも遥かにものわかりがいいらしい。

 悪人としてこういう男は長生きできる、好感が持てる。

 用心棒としては雇わないまでも、乗組員として雇ってもいい。


「ご理解いただけたようでなによりです」

「ふぅん、じゃあ、俺がこの男より強いことが証明されたら、無事雇ってもらえるってことか」


 訂正しよう、どうやらイチノジョーは自分と相手の実力の差もわからないバカのようだ。

 まぁ、バカはバカで使いようがあるし、ここで大先生がイチノジョーだけでなく、既に契約を済ませていたスズキも倒してくれたら、私は違約金を支払わなくて済む。


「大先生、どうでしょう? ここはひとつ腕試しをなさったら? 勿論、料金は支払います」


 私はそう言って、大先生に銀貨が入った袋を投げた。


「…………」


 大先生は無言でそれを受け取り、袖の下に入れると剣を抜いた。

 やる気のようだ。


「犯罪者相手なら、手加減は必要ないかな?」

「……笑止」


 いまだに実力差を理解していないイチノジョーが、大先生を怒らせた。

 その直後だった。

 大きな音が鳴った。


 ――消えたっ!?


 なんということだ、大先生のことを強い強いと思っていたが、まさか目で追う事もできないくらいに速い動きをするとは。

 さっきの音は、大先生が地面を蹴った音か、それともイチノジョーが切られた音か?

 あんな速度で斬られたら、きっとイチノジョーはもうこの世にはいない――


「…………え?」


 イチノジョーは笑顔を浮かべて立っていた。

 そんな、じゃあ大先生は?

 私は首を振って辺りを見回した。


「なっ……」


 大先生が壁に激突し、少しめりこんでいた。


「む……無念」

「なにが無念だ! 見掛け倒しかっ!」


 私は大先生――ではない、デスウォーリアーの袖の中から銀貨が入った袋を奪い取ると、


「大先生っ! その実力、お見事でしたっ! どうか私と一緒にいらしてくださいっ!」


 そう言って、さらに報酬として銀貨の入った袋をもうひとつ増やしてイチノジョー大先生に渡した。

 ははは、これで我が密輸団――じゃない、運送屋は安泰だ!

明日も更新します。

それと、N-star様より新連載「転生没落王子は『銭使い』スキルで成り上がる ~異世界の沙汰もゴールド次第っ!?~」

 異世界転生の作品です! ぜひご覧になってください!

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