迷宮前の取り決め確認
とりあえず、雑貨屋で食糧やポーションなどを買い込み、迷宮に向かうことにした。
「そういえば、この町には迷宮が何個かあるんだっけ?」
「はい、初心者用の迷宮、中級者用の迷宮、上級者用の迷宮です。私達なら中級者用の迷宮でも十分に通用すると思われます」
「じゃあ、中級者用の迷宮に行くか」
コボルト相手だと、そろそろレベルも上がりにくくなるだろう。
「いえ、ご主人様は最初は初心者用の迷宮をクリアなさったほうがいいかと思われます。初心者用の迷宮は10階層にボス部屋がありまして、初めてボスを倒したパーティーには全員が特典を得られます」
迷宮クリアボーナスか。本当にゲームみたいだな。
「ハルはボスを倒したことがあるのか?」
「はい。私が倒した時は〝速度上昇(微)″のスキルを入手できました」
「へぇ、スキルが貰えるのか。じゃあそうしてみるか」
俺達は昨日も潜った初心者迷宮に向かうことに。
その前に、職業を大幅に変更してステータスを確認する。
「ステータスオープン」
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名前:イチノジョウ
種族:ヒューム
職業:無職Lv52 剣士Lv4 見習い魔術師Lv1 木こりLv1
HP:103/103(10+65+10+18)
MP:53/53(8+10+30+5)
物攻:89(9+65+5+10)
物防:72(7+42+9+14)
魔攻:43(4+10+20+9)
魔防:45(3+14+15+13)
速度:42(4+30+4+4)
幸運:40(10+10+10+10)
装備:綿の服 皮の靴 鉄の軽鎧 鉄の剣
スキル:【職業変更】【第四職業設定】【投石】【剣装備Ⅱ】【スラッシュ】【職業鑑定】【回転斬り】【弓矢装備】【解体Ⅱ】【スキル説明】【気配探知】【剣術強化(小)】
取得済み称号:なし
転職可能職業:平民Lv15 農家Lv1 狩人Lv24 木こりLv1 見習い剣士Lv25 見習い魔術師Lv1 行商人Lv1 見習い槍士Lv1 剣士Lv4 弓士Lv1
天恵:取得経験値20倍 必要経験値1/20
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うん、最初のころに比べたら月とスッポン、雲泥の差があるな。
「そういえば、ハルのステータスってどんなもんなんだ?」
「ご覧になってくださっても結構ですよ?」
「え? 他の人のステータスって簡単にみられるものなの?」
「仲間のステータスで、許可が出れば。名前と一緒に、ステータスオープンと言ってくだされば」
「よし、ハルワタート、ステータスオープン」
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名前:ハルワタート
種族:白狼族
職業:剣士Lv23
HP:103/103
MP:53/53
物攻:132
物防:105
魔攻:20
魔防:24
速度:62
幸運:10
装備:隷属の首輪 ショートソード ショートソード 絹のドレス 皮の靴
スキル:【投石】【弓装備】【解体】【剣装備Ⅱ】【スラッシュⅡ】【回転斬りⅡ】【弓矢装備】【剣術強化(小)】【速度UP(微)】【二刀流】【経験値配分設定】
取得済み称号:迷宮踏破者 パーティーリーダー
転職可能職業:平民Lv15 農家Lv1 狩人Lv5 木こりLv1 見習い剣士Lv25 剣士Lv23 獣剣士Lv1
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うぉ、強いな。
転職設定前の俺には及ばないが、盗賊たち2人を殺す前の俺よりは遥かに強かった。
「獣剣士って職業もあるんだ」
「獣剣士は獣人のみがなれる剣士の上位職です。ですが、獣神官しか職業変更ができないため、私は獣剣士にはなれません。獣神官は世界でも数人しかいませんから」
へぇ、そうなのか……俺の職業変更のスキルでできないのかな?
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名前:ハルワタート
種族:白狼族
職業:獣剣士Lv1
HP:69/69
MP:25/25
物攻:51
物防:40
魔攻:0
魔防:40
速度:110
幸運:20
装備:隷属の首輪 ショートソード ショートソード 絹のドレス 皮の靴
スキル:【投石】【弓装備】【解体】【剣装備Ⅱ】【スラッシュⅡ】【回転斬りⅡ】【弓矢装備】【剣術強化(小)】【速度UP(微)】【二刀流】【経験値配分設定】
取得済み称号:迷宮踏破者 パーティーリーダー
転職可能職業:平民Lv15 農家Lv1 狩人Lv5 木こりLv1 見習い剣士Lv25 剣士Lv23 獣剣士Lv1
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あ、簡単にできた。
どうやら、仲間の職業は変更できるらしい。獣剣士は魔攻が0なのか。その代わり、レベル1なのに速度が110とか凄いな。
上位職業というのは嘘ではないようだ。
仲間以外の職業も変更できるのか、今度試してみよう。できるなら、あの拳闘士との戦いが楽に、いや、対人戦では無敵といってもいいようになる。
「ハル、獣剣士でレベル上げするか」
「そうですね、できるならそうしてみたいです」
「そうか、なら、絶対に大きな声を出さないって約束して、ステータスを確認してくれ」
百聞は一見に如かずだ。
怪訝な顔をすることもなく、ハルは言われた通りにステータスオープンと唱える。
すると、流石にポーカーフェイスのハルも、目が見開いた。
「ご主人様、これは一体」
「ま、俺の特殊能力だと思ってくれ。てか、やっぱり珍しいんだな」
「……通常、職業変更をするには、神官が聖地でのみ行うことが可能です。聖地以外の場所で一瞬で職業を変えられるスキルなんて聞いたことがありません」
「てことは、このスキルは他の人には知られない方がいいな」
「はい、悪用される恐れがありますから」
それは俺も考えていた。大きな罪を犯すと、盗賊や山賊、海賊といった職業になり、そうなったら通常の手段では町に入れなくなる。
俺達が倒した山賊や盗賊がどのような方法で町の中の迷宮に入ったのかまではわからないが。
だが、俺の力を使えば、盗賊や山賊の職業を罪人以外の職業に戻すことができる、ということだ。
「他にもハルにはまだ話していないことがいろいろあるんだが、迷宮の奥で話すよ」
「かしこまりました。あと、ご主人様、大変申し上げにくいのですが、レベルが1の間では、私も力を十分に発揮できないと思います。暫くの間は魔物討伐の経験値の割合を山分け方式にしてもよろしいでしょうか?」
「経験値の割合?」
「はい、前にも申しましたが、通常、魔物を倒した場合、トドメを刺した者だけが経験値を貰えます。ですが、パーティー設定をしている場合、パーティーのリーダーが経験値の配分を決めることができます。トドメを刺した者の総取りから、トドメを刺した者が5割、残りの5割をパーティーが山分けにするかの二種類です」
あぁ、確かにハルのステータスに、【リーダー】の称号と、【経験値配分設定】があった。称号によって得られるスキルってところかな。
「つまり、俺がコボルトを倒して経験値を10得た場合、5と5に分けられるってことか?」
コボルトの経験値が10かどうかなんて知らない。例えばの話だ。
「いえ、その場合、ご主人様が最初に経験値5を得て、残りの5のうち2.5ご主人様が、2.5を私が得られることになります」
経験値に1未満の値があるのかどうかはわからないが、そういうことか。
つまり山分け方式だと、倒した方が3/4、もう一人が1/4になるということね。
「なるほど……んー、その代わり、1階層から3階層の魔物は俺が倒したい。一撃で倒せると思うし。いいか?」
「はい、もちろんです。今の御主人様なら全ての魔物を一撃で倒せると思います」
取得経験値20倍と必要経験値1/20の違い。
同じようで全く違うことは、皆さん既にお判りでしょうね。