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エピローグ

   エピローグ



 レヴィアタンの戦いから一夜明けた。

 キャロもすっかり元気になり、そして俺は――ただでさえ昨日の出来事で魔力が完全に回復していないのに、徹夜で帆船の最終調整をしてくれたピオニアにMPを吸い取られてくたくただ。

 本来なら、もう一日ゆっくりしていたいのだが、その前に確認しておきたいことがあった。

 マイワールドの扉を帆船の下に開き、海へと落とす。キャロが言うには昨日レヴィアタンから逃げたときは満潮、今の時間は干潮に近いため、この時間なら海の中に扉が開くこともないそうだ。

 船を扉から落とし、俺もそれに続いて移動すると、俺は帆船の甲板に出た。

 眼前は広い海と青い空。そして、遠方に見えるのは最初に見たときと陰影を変えた――だがレヴィアタンに一度攻撃された後は何も変わっていない島だった。

 コショマーレ様が言ったことは本当らしい。レヴィアタンは死んだ。魔王ファミリス・ラリテイの手によって。

 俺は、この世界に来てなんでもできるようになったと思い込んでいたのかもしれない。

 貴族に買われそうになるハルを救い、スキルで苦しむキャロを救い、時には何千、何万もの魔物相手に戦いを挑み。

 人とは違う力を持っている。他人の四百倍のスピードで成長し、他人の五倍の職業に就き、無職ではあるが無職ではないどこか高みへと昇っている気がした。

「結局、俺は何もできなかったな」

 俺が呟くように言うと、いつの間にかこっちの世界に戻っていたキャロが俺の袖をつかみ、

「いいえ、イチノ様が頑張ったから魔王さんはレヴィアタンを倒せたのだとキャロは思いますよ」

「……そうかもしれないけど。でもそれは結果論なんだよ……」

 魔王がレヴィアタンを倒せたからいい。終わりよければ全てよし、という考えは正しいと思う。

 だが、一歩間違えればどうなっていたか。

 俺の未熟な力がレヴィアタンを倒し損ね、俺ならばレヴィアタンを倒せるという慢心がキャロを危険に晒したという過程は、たとえ結果がどうであったとしても変わらないのだから。

「イチノ様――無職の職業はどうなさるおつもりですか?」

 キャロが尋ねた。

 どうする――つまり、俺がこのまま無職でいるかどうかという質問。

「……このままでいようと思う――キャロは……やっぱり反対だよな」

 その選択は、いままでの俺ではありえなかった答えだ。

 強いに越したことはないが、仲間を守れるだけの強さがあればいいと思っていたし、それにコショマーレ様も言っていた。

 次に無職のレベルが上がった時、俺がどんなスキルを覚えるかはわからない。

 それが俺に害をなす――いや、俺だけじゃない。俺とともにいるハルやキャロ、マリーナたちにも危害を及ぼす可能性があると。

 でも――俺はこの無職のスキルに何か特別な意味がある気がしてならない。

 そして、何もできなかったとはいえ、レベル90で得た謎のスキルがなければ俺はこの無人島に来ることもなかった。わざわざ、レヴィアタンが復活する直前にこの島に転移させている以上、俺に何かをさせたかったというのは明白だ。

 それが善か悪かはわからないけれども。

 それでも、俺はこの無職という職業の意味を知らなければいけない――それが果たすべき義務のような気がしてならなかった。

「さて、じゃあ行くか――風向きの調整は――」

「イチノ様。帆の調整は私がしますので、イチノ様は舵をお願いします――まずは北を目指してください」

「OK! 北に向けて全速前進っ!」


 帆が風を受け、船は北へと向かう。

 ポートコベを目指して。

 その時の俺は、そこで今生の別れとなったと思っている彼女と再会することになるとは、思いもしなかった。

少し短めのエピローグですみません。


長かったですが、この章も終わり。

次章はちょっと気楽な話です。

海賊退治に釣り対決。ジョフレたちはアルバイト?

でもクライマックスでは、いよいよミリとイチノ、そして最後にあの人が……

そして無職のレベルが100になった時――

(次章予告はプロット段階のものです。変更の場合もありますのでご了承ください)


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