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最強の魔物、その名は

 魔物の数は留まることを知らない。

 フェルイト近くの迷宮ほどではないが、これほどの数の魔物がいたなんて。

「おそらく、周囲の魔物が蘇る魔物の瘴気にあてられて集まっていたのでしょう――」

 キャロが言った。確かに、この魔物の数はそうと言われないと納得できない数だ。

 大きな魔物だけでなく、イワシのような小魚の大群が、船の下を通過していった。

 全員がこの船めがけて来ているわけではない、たまたま魔物たちが逃げる方向にこの船があるから、いきりたった魔物が襲ってきている。

 なら、一度マイワールドへの扉を開き、避難してからもう一度別の船で――いや、それはダメだ。

 安全を確保できない状態で扉の外に出るのは危ない。

 避難するときは完全に逃げる時だけのほうがいい。


 なら、やはり魔法やスラッシュで危ない魔物だけを倒して――


 と思ったときだ。

 とても巨大な亀が現れた。

 これはスラッシュで甲羅を砕くのは難しそう、なら魔法で――


魅了チャーム!」


 キャロが叫んだ。魅了は誘惑士か歌魔術師が使える魔法で、唱えることにより一時的に魔物を味方にできる魔法だ。

 すると、亀は甲羅から顔を出すと反転、船を守るように俺たちの前に立ちはだかった。


「イチノ様、キャロもついています! これで耐えましょう!」

「キャロ、助かった!」


 その後、魚の魔物が亀に体当たりしたり噛みついたりするも、甲羅にこもる亀の魔物の甲羅を砕くことはできなかった。甲羅が傷だらけになりながら守ってくれたこの亀には感謝しないといけないな。

 そして、数十分経過したころ、魔物はいなくなった。

「イチノ様、この亀の魅了チャームを解除します。一度離れましょう」

「そうだな」

 この場所で亀の魅了チャームを解除したら今度は俺たちがこの亀に襲われるからな。魅了状態にあったとはいえ、俺たちを守ってくれた亀を殺したくない。

 船を動かし、魅了状態から解除すると、亀はそのまま海に潜っていなくなった。


【イチノジョウのレベルがあがった】

【水魔術師:水魔法Ⅴを取得した】

【水魔術師のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:水魔術師の極みを取得した】

【風魔術師:風魔法Ⅴを取得した】

【風魔術師のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:風魔術師の極みを取得した】

【称号:四大魔術師を取得した】

【職業:光魔術師が解放されました】

【職業:闇魔術師が解放されました】


 ここで、ようやく残りのふたつの職業も極めた。

 これで俺の現在の職業は、無職以外は四大元素の魔術師カンスト状態。

 世界最強クラスの魔術師になっている……はずだ。


「風が……止みました」


 キャロが言った。

 凪の状態に、海面が穏やかになる。


「キャロ、敵が来たらブーストサンダーを放つ。今の俺なら五発くらい撃っても余裕だ」


 海の魔物なら雷が効果的だろう。通常のサンダーの十倍のMPを消費するブーストサンダー、その威力はおそらくいかなる魔物にも通用するはず。

 俺が言うと、キャロが頷いた。


 その時だ。


 突然、雷雲が立ち込め、空が暗くなる。

 急にどうした? と思ったときだった。


 遠い海面に渦が現れ、強風が吹き荒れ、船が大きく揺れる。

「キャロ、しっかりつかまってろ! マイワールド!」

 俺はマイワールドへの扉を展開。


「雷雲――強大な魔物――まさか」


 キャロが何か心当たりがあるように叫ぶ。


 その時だ。


 渦の中から巨大な青い蛇――いや、龍のような魔物が現れた。

 なんてでかさだ――でも今ならやれる。


 俺は杖を構えて魔法を放とうとした、が――


「ダメです、イチノ様っ!」


 キャロが叫んだ。


「あの魔物――海の魔王レヴィアタンにはその魔法は通じません!」

「レヴィアタン!? キャロ、あの魔物を知っているのか?」

「雷を操る海の魔王と呼ばれる竜族です。伝説の中でしか聞いたことがありません。六柱の女神ですら手を焼く強大な魔物で、子を成せば世界が滅ぶからと雄のレヴィアタンは女神が殺さざるを得なかったと言われるほどです」

 女神が手を焼く魔物って、そんなバカな。

「雷、水、どちらの耐性も高いです」

「弱点は!?」

「いかなる光魔法にも耐え、その強靭な鱗はいかなる剣の攻撃をも通さないと言われています。風魔法は元々は範囲攻撃のためそれほど威力はありませんし、土魔法は海という環境のため威力も発揮できません――また、雷雲を呼び寄せるという伝承もありますから雷魔法も――」

「それじゃあ、ほとんど無敵じゃねぇかっ!」

「炎の魔法なら、もしかしたら……」


 炎の魔法か……なら、あれを使うしかない……か。

 

「火魔法Ⅴで取得した、太古の浄化炎(エンシェントノヴァ)をブーストして放つつもりだ」

太古の浄化炎(エンシェントノヴァ)――聞いたことがあります。天使が悪しき魔の物を浄化するときに使ったと言われる最高峰の魔法ですよね。この世界で使える人間は魔術師ハッグ様を含め、数人だけだと聞いていますが」

「俺も覚えたばかりで、試したこともない。MPの消費が勿体なかったからな。ブーストを使ってMPを十倍消費したらどうなるかわからないが、でもやってみるっきゃないだろ。マイワールドの扉を開くから、キャロは俺が魔力枯渇で気を失ったら、俺を引きずって穴の中に入れてくれ」


 そう言って、俺はアクラピオスの杖を構えた。

 その時、レヴィアタンがこちらとは別の方向を凝視した。

 その先は――


「ヤバイっ!」


 レヴィアタンの頭の角から放たれた雷が、俺たちが今朝までいた島を飲み込んだのだった。

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