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迷宮3階層の捜索、ゴブリンを倒せ

 迷宮二階層には蝙蝠系の魔物がいた。

 チワワくらいの大きさの蝙蝠で、普通の蝙蝠にしてはでかすぎる、どうやって飛んでいるんだ、という大きさだった。だが、ハルが二本の剣を使い、蝙蝠の翼を切り落とし、走り抜けていく。


 すげぇ、二本の剣を使うだけじゃなくて、本当に二刀流という感じだ。

 クロス斬りとか、X斬りとか、そういう名前のスキルを見ているみたいだ。

 

「ご主人様、どうぞトドメを刺してください」

「え?」

「経験値は最後の一撃を決めた者のみが得られます」


 ラストアタックのみの総取り制なのか。

 あぁ、なるほど、だからトドメを刺さずに翼だけを落としたわけか。

 たぶん、これが奴隷を使った正しいパワーレベリングの形で、ハルはそれを忠実に実行しようとしているってわけだな。


「いや、これはハルが倒してくれ」

「よろしいのですか?」

「気持ちは嬉しいが、ハルが倒した以上は、経験値はハルが貰うべきだ。これからもどんどん倒していってくれ! 今は俺の成長よりもノルンさんを助ける方を優先したい」

「かしこまりました」


 ハルは頷くと、既に翼の再生の始まっていた蝙蝠の腹を剣で切り裂いた。

 そして、それからも匂いを辿り、俺達は迷宮を進んだ。

 二階層の敵相手なら彼女にとっては楽勝のようだ。

 俺の出る幕もなく、二階層の敵を圧倒していく。

 一匹ぐらいは譲ってもらった方がよかったかな。


 そして、すぐに三階層にたどり着いた。


「ハル、匂いはまだ続いているのか?」

「はい、匂いが残っています。二階層への階段でもそうでしたが、階段を上がっていく道筋の新しい匂いは存在しませんでした。初心者迷宮では、最後の階層を除き、上り階段と下り階段がそれぞれ1ヶ所しかありませんから、彼女は階段を上がっていないはずです」


 階段を下りながら、とりあえず、ここまでノルンが無事に下りてきたことに安堵しながらも、だからこそ何かがあった可能性が高いという不安が心を覆った。

 やはり、初心者狙いの盗賊に襲われたんだろうか?


「そうか……そういえば、今更のことを聞くんだけど、なんで盗賊は迷宮の中で犯罪を犯すんだ? 入口や階段が1ヶ所しかないのなら、そこを押さえられたら逃げ場がないんだから、ここほど不便な場所はないだろ」


 俺の中のイメージでいえば、盗賊や山賊は行商人の馬車を――海賊は交易船の輸送隊などを襲うイメージがある。


「いろいろと理由はあります。迷宮の中で人が死ねば、迷宮がその死体を飲み込みますので、証拠を隠滅する必要がありませんし、死体が残らないのなら、盗賊が殺したのか魔物が殺したのかもここだと判断できません。それに、行商人を襲えば騎士隊が動きますが、冒険者が死んでも騎士隊が動くことはまずありません。冒険者ギルドと国は相互不干渉の協定を結んでいますから」

「なるほど、一応メリットもあるのか。でも、初心者を狙う盗賊がいるという噂が出回っているんだが」

「死んだはずの冒険者の武器防具が市場に出回ったのでしょう。人が死に、迷宮に飲み込まれたら装備はなくなりますから」


 詰めが甘いんだな。高価な骨董品を盗むのに成功したのに、売るための闇ルートを持っていないために足がつく、みたいなものか。

 そして、俺達は迷宮を奥に進む。すると、十字路の真ん中に、醜悪な顔の、少し小さな男が出てきた。棍棒を持っている。

 そういう種族の人なのかとも思ったが、ハルが剣を構えた――ということは魔物ということか。


 俺はハルに待ったをかけた。


「ハル、あれってもしかしてゴブリンか」


 ゲームなどではよく登場するゴブリン。多くのファンタジー作品に登場し、ファ○ナルファン○ジーなどでは、最弱の魔物として扱われる魔物だ。この世界の情報を元にゲームが作られたんだとしたら、ゴブリンも弱いんだろうな。

 コボルトのほうが弱いらしいけど。

 


「はい、三階層はゴブリンの巣になっています」

「そうか、ここは一度俺に試させてくれ!」


 俺はそう言うと、前に向かって走り、剣を振りながら、


「スラッシュ!」


 と剣戟を放つ。鋼鉄の剣から衝撃波が飛び、ゴブリンの胴体を深く抉れ、紫色の血を飛ばした。

 だが――


「やっぱり一撃では倒せないか」  


 ゴブリンは腹を押さえながらも立ち上がる。


「スラッシュ! ってでない!」

「スラッシュは一度使うと10秒間再使用ができません!」

「くっ、10秒って短いようで長いぞ!」


 俺はそう言うと、棍棒を剣で受け止めた――重い一撃だが、十分受け止められる。


 そして、俺は棍棒を受け止めながらも片足でゴブリンの大事な部分を思いっきり蹴りあげた。


「……どうだ、種族は違えど、同じ男! これが――ってあれ、あまり効いてない?」


 痛そうにはしているが、跳びあがるほどではないようだ。

 ていうか、俺は蹴りあげたせいでバランスを崩して倒れそうになってしまう。


「ご主人様! そのゴブリンは雌です! 角がありません」


 え、男じゃなくて女だったの!?

 ハルの思わぬ言葉に驚くと、完全にバランスを崩し、その場に仰向けに倒れてしまい、剣が地面に落ちた。


 やばい、ゴブリンがとどめを刺そうと、こちらに向かって棍棒を構えた。

 

「ご主人様、10秒経ちました! 今ならスラッシュが使えます。剣ではなく手刀で放ってください」


 そうか――


「スラッシュ!」


 俺は右手を思いっきり振った。


 すると、その一撃がゴブリンの傷口を大きくえぐり――次の瞬間、ゴブリンの身体は消え失せ、棍棒と魔石のみを残した。


【イチノジョウのレベルが上がった】

【狩人スキル:気配探知を取得した】


……………………………………………………

スキル説明:気配探知【狩人レベル15】


近くにいる生物の気配がわかる。

ただし、隠蔽スキルを持っている者の気配はわからない。

……………………………………………………

 これは便利そうなスキルだ。

 あと、ステータスも確認する。

……………………………………………………

名前:イチノジョウ

種族:ヒューム

職業:無職Lv41 見習い剣士Lv17 狩人15


HP:93/94(10+59+25)

MP:32/36(8+16+12)

物攻:100(9+60+31)

物防:79(7+42+30)

魔攻:25(4+12+9)

魔防:29(3+14+12)

速度:65(4+28+41)

幸運:40(10+10+20)


装備:綿の服 皮の靴 鉄の軽鎧 鋼鉄の剣

スキル:【職業変更】【第三職業設定】【投石】【剣装備】【スラッシュ】【職業鑑定】【回転斬り】【弓矢装備】【解体】【スキル説明】【気配探知】


取得済み称号:なし

転職可能職業:平民Lv15 農家Lv1 狩人Lv15 木こりLv1 見習い剣士Lv17 見習い魔術師Lv1 行商人Lv1 見習い槍士Lv1


天恵:取得経験値20倍 必要経験値1/20

……………………………………………………


 スキルも随分多くなった。

 無職、見習い剣士、狩人のレベルがそれぞれ1ずつ上がっている。

 んー、にしても、今の戦いは結構厳しかった。


 ステータスは俺の方が上回っているんだろうが、それに見合うだけの戦いの経験が足りない、そんな感じだ。


「流石です、ご主人様」

「いや、ハルのアドバイスのおかげで助かった。ありがとう」


 俺は立ち上がると、頭を下げて礼を言った。

 もしかしたらハルよりも強くなったんじゃないかと思っていたが、この調子だとまだまだだな。


「ご主人様、ノルン様の匂いなのですが――」

「あぁ、わかるか?」

「……その、あちらに続いています」


 十字路を右に曲がった方向を指さす。

 そこは、先がない、紛れもない行き止まりだった。


「……どういうことだ? 一度行き止まりに行って、戻ってきたと?」

「いいえ、戻ってきた匂いはありません。考えたくありませんが、あそこで、なんらかの理由で息絶えて迷宮に吸収されたとしか……」

「……そんな……うそだろ」  


 俺がその場で膝から倒れ込み、力なく項垂れた。

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