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ホムンクルスの名前

少し短めです。ご了承ください。

 なんとかハルとキャロに説明をして、納得してもらった。

 ちなみに、生まれて来たばかりのホムンクルスには、俺の予備の新品の綿の服を着てもらっているため、かなりボーイッシュな格好になっている。


「先程までトレールール様がいらしたのですか……ぜひ挨拶したかったのですが、残念です」


 キャロがそう言って落胆の表情を浮かべた。

 いろいろと誤解させたとはいえ、現在いまでも彼女はトレールール様を信仰しているからな。

 でも、あの女神様のことだ、そういう面倒な事態は避けるんじゃないだろうか?


「ということで、今日からここで働いてもらうことになったホムンクルスだ。思ったより大きく成長して俺もびっくりしている」


 ホムンクルスはフラスコの中の小人という意味だから、勝手に小人だと勘違いしていた。


「マスターは小さい方がよかったですか?」

「……あぁ、まぁ、勝手なイメージだ。別にどっちがいいってわけでは――」

「マスターの情報を追加しました。マスターは小さい女の子のほうが好きだと」

「待て、それは違う!」


 ヒトをロリコン扱いしないでもらいたい。


「その情報で間違いないです! イチノ様は小さい女の子のほうが好きです」

「ご主人様、小さい女の子とは年齢のことでしょうか? 年下の女性と言う意味でよろしいのでしょうか?」


 キャロがホムンクルスに言い聞かせ、ハルがそんな確認をしてきた。


 ……どうしてか知らないが、俺が小さい女の子が好きであることが事実として認識されそうになっている。

 俺のストライクゾーンはそんなに狭くないのに。

 ただし、ハル、キャロ、マリナと可愛い女の子ばかりと出会っているせいで、俺の中での女性の容姿のアベレージが急上昇しているのはたしかだ。日本にいたころはミリよりも可愛い女の子は周りにいなかったが、純粋に容姿だけみたらミリと同じくらいの容姿の子ばかりだし、しかも全員性格もいい。

 本当に、コショマーレ様とマーガレットさんに出会っていなかったら、俺の中の価値観が崩壊しているところだったよ。感謝感謝。まぁ、マーガレットさんは男だけど。

 恐らく、女の子の出会いレベルだけなら、鈴木の持つ主人公補正の天恵くらいの力を持っていると思う。


「と、に、か、く、俺はそんなつもりで言っていないし、彼女を作ったのも純粋に労働力として必要だと思ったからだ。正直、こんなことになるなんて俺も予想外だった」

「マスター、つまり、作ったのはいいけれど認知はしないということでしょうか?」


 ホムンクルスは虚ろな金色の瞳をこちらに向けて、首を傾げた。

 そんなことを言われたら、俺がまるで子供を認知しない最低な父親みたいだ。

 このホムンクルスはわざと言っているんじゃないだろうか?


「そうは言ってない。これからも仲良く頼む……えっと、名前は何と呼べばいいんだ?」

「それはマスターが決めてください」


 ……来た、ここで最大の難関。

 そうじゃないかと思っていたんだ。

 くそっ。

 俺は名前をつけるのは一番の苦手だ。

 ホムンクルスだから、ホム? いや、それだと単純すぎるか。

 クルスって男の名前だしな。

 それとももっと斬新な……そうだ、トマトと交換したからトマトって名前は?

 ……っていやいや、フユンは馬だったから適当に名前をつけてもいいが、相手はホムンクルスで仮初の魂とはいえ女の子だ。

 適当につけて良い訳がない。


「……あぁ、俺、絶対親になったら苦労する……ハル、代わりに考えてくれないか?」

「ご主人様の命令であれば従います」

「……あぁ、ハルがそう言うってことは嫌ってことなんだよな?」


 長い付き合いというほど長い付き合いではないが、それでもハルのことはわかっているつもりだ。

 ハルが意地悪でそんなことを言うはずがない。

 俺の問いに、ハルは頷いた。


「名前をつけるのは責任ある仕事です。その人の一生を左右するものです。生半可な覚悟でできることではありません」

「だよな。うん、だから、俺なんかが決めていいのかって」

「イチノ様が決めなくて誰が決めるんですか?」


 そう言ったのはキャロだった。


「私達の主人はイチノ様です。この方も同じです。ならば、名前はイチノ様が決めるべきです」


 そうか、そうだよな。

 俺は逃げていたんだ。

 名前をつけることに、責任を持つ事にどこか逃げていた。

 それを気付かせてくれたハルとキャロに感謝しないといけない。


 よし、本気で考えよう。

 結局、俺は二十分くらい考えた。


「ホムンクルスだからホムでいいか?」


 結局、直感で決めた名前にすることにした。

 直感って大事だもんな。


「マスター、ただちに呼称の変更を要求します」

「ご主人様、さすがにそれは……」

「イチノ様、もう少し考えてあげてください」


 ……考えた結果がこれだとわかってほしい。


 結局、三時間、ホム(仮)を含め四人で話し合い、


「改めまして、ピオニアです。よろしくお願いします」


 彼女の名前はピオニアと決まった。

 開拓者を意味するパイオニアからとった。


   ※※※


 一方そのころ。


(……みんな……遅い)


 マリナはひとり、部屋のベッドの上に座り、部屋の中で待つという命令を忠実に守っていた。

 一時間で交代するはずなのに、すでに三時間以上経過している。


(トイレに……行きたい)


 キャロが気付いて戻ってきたのは、それから三十分後のことだった。

 漏らさずに済んだ。 

明日も更新します。

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