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戦闘が終われど終わらず

 俺はトマトを握りつぶさないようにしながらも、前方へと走っていた。

 握りつぶしてしまえば、俺の手にべったりとトマトがつきケンタウロスに手を持っていかれる――そんな未来図が頭によぎった。


 ゴブリンの王や、牛人、巨大トカゲといった数々の魔物を相手してきた俺が今一番恐ろしいのが、ロバだというのは情けない話だ。

 正直、まともに戦えばケンタウロス相手でも勝てるとは思う。だが、それ以上にケンタウロスの目が怖かった。

 俺はロバの気迫に押されたのだ。


 トマトの出来がいいということは、トマトを作った俺としては誇らしく思うが、効果覿面すぎる。

 トマトを急ぎ捨てようとするが、こんなところでケンタウロスが立ち止まったらどうなる?


 なぜなら、俺は、俺とケンタウロスは魔物の群れを蹴散らして進んでいたから。

 剣で戦っていたら間に合わないので、足と拳でなぎ倒していく。

 一撃必殺とまではいかないが、それでもいい。敵からの攻撃を受け流し、倒して、魔物のバリケードを築いていく。


 そのバリケードをケンタウロスはなんなく打ち崩していった。

 後ろから必死についてきているハルの姿が見えるが、鈴木の姿は見えない。

 おそらく、殿を務めているのだろう。


 このまま行くか。


 俺はそう決意すると、


「スラッシュ!」


 両腕をクロスさせ、一気に振り下ろした。

 鈴木のグランドクロスほどではないが、それでも目に見える範囲の魔物に傷を作る。

 血の匂いで魔物が騒ぎだすが、むしろ好都合。

 こんな狭い場所で暴れ出すものだから、つっかえてまともに動くことができなくなっている。


 そんな状態で俺にまともに攻撃できるわけもなく、俺は大きく跳び、赤い牛のような魔物の背中、白黒の虎の背中、緑の熊の背中を蹴りながら走っていく。

 後ろからケンタウロスが全てを無視して突撃してきた。


 残った魔物、生き残りをハルがとどめをさしていくのが見える。

 美味しいところ(経験値)はハルの独り占めか。


 まぁ、仲間である俺にも経験値の1/4が入ってくるんだが、ずっと戦闘中が続いているため、レベルアップコールが来ない。

 いつになれば戦いが終わるんだろう。


 そもそも、女神像の間に辿りついても俺達に解決できるのかどうかもわからない。


 ただし――できるとこまではやってやる。

 国を守るとか、世界を救うとか、そういうことは興味ないが、目の前の人達に危険が迫っているのなら、守ってやりたいと思うからな。


「ジョー! そこがボス部屋だ!」


 後ろからジョフレの声が聞こえてきたのは、大きな部屋に俺が入ったときだった。

 確かに、部屋に入ったときに大きな扉が開かれているのが見えた。


 そして、部屋の中央にいたのは、茶色い毛むくじゃらの巨大な象のような、いや、マンモスのような魔物だった。

 そいつは俺を見つけると、鼻を大きく振るい、部屋にいた魔物ごと、俺をしとめようとしたが、


「お前はとっととマンモス肉になりやがれ!」


 剣を抜き、マンモスの鼻を斬り落とし、そして攻撃手段のなくなったマンモスは、その出血で死ぬ前に、俺の振り下ろした剣で額を突き抜かれて、ひときわ大きな魔石と、マンモスの牙、そして、俺の願いを具現化したようにマンモス肉を残して消えた。

 ……マンモス肉はアイテムバッグに入れて置こう。


 一度食べてみたかったんだよな。


 ……そう思った時だ。一瞬、ほんの一瞬の油断だった。

 一番の強敵を倒したことによる油断で、俺は背中から吹き飛ばされた。


 吹き飛ばされながら見たのは、俺が落としたトマトを食べているケンタウロスだった。


 ……あいつが敵だったら苦労したな。

 そんなことを思いながらも、左手を背中に回し、ヒールをかけながらもある作戦を思いついた。


「ハル、悪いが使わせてもらうぜ!」


 俺はアイテムバッグの中からトマトをばら撒いた。

 トマトの香りはケンタウロスを魅了するほど、つまりは他の魔物も食べたくなるはずだ。

 目論見通り、草食の魔物達はトマトを奪い合うように暴れだした。

 俺は壁にあるでっぱりをみつけ、そこに掴まり、離れた場所で様子を見ていた。

 勝者となった一頭のカンガルー風の二本足のネズミ(ただし袋は見当たらない)が前足でトマトを取った……直後だった。

 ケンタウロスがトマトを取られまいと後ろ足の強烈な一撃を放つ。

 それだけではない、トマトを食べようとする魔物を全て、ケンタウロスが蹴散らしていった。

 まさに無双状態だ。


「ロバだけにいいところを持っていかれるわけにはいかないな」


 俺はそう言うと、飛び降り、全速で残った魔物を掃討していった。

 途中でハルと鈴木が戦いに合流し、三人で魔物を亡きモノにしていく。


【イチノジョウのレベルがあがった】

【職業:侍が解放された】

【剣士スキル:竜巻き斬りを取得した】

【剣士スキル:空破撃を取得した】

【職業:剣聖が解放された】

【剣士のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:剣士の極みを取得した】

【称号:剣士の極みと見習い剣士の極みが統合され、剣の道を取得した】

【称号スキル:剣の鼓動を取得した】

【拳闘士スキル:HP強化(微)がHP強化(小)にスキルアップした】

【拳闘士スキル:肉体ブーストを取得した】

【職業:剣闘士が解放された】

【拳闘士のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:拳闘士の極みを取得した】

【槌使いスキル:回転槌を取得した】

【職業:槌士が解放された】

【槌使いスキル:ピコピコハンマーを取得した】

【槌使いのレベルはこれ以上あがりません】

【称号:槌使いの極みを取得した】

【見習い鍛冶師スキル:闘魂注入を取得した】

【見習い鍛冶師のレベルはこれ以上あがりません】

【称号:見習い鍛冶師の極みを取得した】

【職業:鍛冶師が解放された】

【レシピを取得した】


 ……終わった……のか?


 魔石や魔物の素材が山のように


 戦闘終了を告げるレベルアップのメッセージ。

 そりゃ、ここに来るまでに大量に魔物を倒してきたが、まさかのオールカンストに、俺は驚いた。


 だが、あまり驚いてもいられなかった。


 なぜなら、女神像のあるはずの部屋が、闇に覆われていたから。

 戦闘中も、あの闇の中から魔物が時折湧いてきていた。

 その闇を凝視して、俺の背筋が震えた。


 そして、その闇の中から、先ほど倒したマンモスの魔物が再度現れた。

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