第1話 転落〜全ての始まり〜
第1話です
「じゃあ,おじいちゃんはこれからリハビリだから,優音ちゃんは病室で留守番しててね」
そう言って,祖母と母は病室から出ていった。
某月のある初夏の日,夕暮れ時。
私――桜葉優音は,母と祖母と一緒に,骨折で入院した祖父の見舞いへ行くため病院へと足を運んでいた。
無事にも明日退院する事ができるようで,荷物の整理も兼ねていたのだが,未だに私が呼ばれた理由が分からない。おおかた予想はできるが……。
「暇だなー」
空いていた窓辺に寄りかかり,何をすることもなく空を見上げる。
夕焼けがとても幻想的で,思わず見とれてしまう。
こうして空を見上げるのって,何年ぶりだろうか。
こんなに空は,綺麗だっただろうか。
つい,物思いにふけってしまい,寄りかかっていた窓辺から離れようと身体を引く。
……はずだった。
窓の縁に置いていたはずの手は,何故か外へと放り出されている。
病室にいた全身は,窓の外へと出ていた。
「落ちた……」
そう思った時はすでに遅し。
私の身体は,硬い地面へと叩き付けられた。
頭が痛い,身体が痛い,血が出ていくのがわかる。
誰かのつんざくような悲鳴が木霊する。
その悲鳴を最後に,私は本能に従って,そっと目を閉じた。
次回は第2話を