WARMTH
『オイオイ、久々オレがニ表ニ出テキタラオ前、何感傷ニ浸ッテヤガンダヨ』
足下の影から黒煙が昇り、青い鳥に姿を変え肩に乗った。
「お前が青い鳥って、何かの皮肉かよ」
『カカカッ。サテ、ソリャドウカナ』
鳥の嘴で笑い、言葉を話す姿は実に不気味だった。
B:RAVEに吸収されたENC:RAVEは、宿主から半径二メートルの範囲でだけ実体化できるらしい。そういえば、最初に自分を守った時も実体化していたな、と助けられたことを思い出しアルオンは苦笑した。
「久しいな、シュトゥルム」
『オウ、G:RAVEノ…ばの、ダッタカ。今日ハドンナENC:RAVEノ情報ヲクレルンダ?』
「ふむ…ここから北へ行った場所にある、カルキオ山脈を根城にしているENC:RAVEがいるそうだ」
「何の躊躇いも無く教えやがった…」
なんだこの態度の違いは。バノは珍しいものが絡むとすぐこうなる。初めてシュトゥルムを見せた時は無言で最上級のワインを奢ってくれたほどだ。
『話ガ早クテ助カルゼ。ソロソロ移動スルンダロ?』
「ん?そうだな、すぐに戻って伝えるか。バノ、情報提供感謝する。それと、その珊瑚の剣はあんたに預かっててもらおうかな」
「おっと、私を金庫代わりに使おうって言うのか」
「もし必要になったら買い取りに来るさ。別に、売っても構わないけどな」
今のアルオンには無用の長物。それならば持っていても仕方がないだろう。
「情報の代金ってことにしてやろう。本当に売っても文句言うなよ?」
「ああ、好きにしてくれていいよ。少しの間だったけど世話になったな」
『オレカラモ礼ヲ言ワセテモラウゼ』
「ふん、とっとと行け」
シュトゥルムを影に戻した後、ブドウ酒の代金に色を付けてカウンターに置いて店を出ようとした。
「おい、おつりだ。持っていけ」
バノが投げて渡してきた物は、小さな木彫りの犬だった。
「G:RAVEに見せれば警戒はすぐに解いてくれるだろう」
つまり紹介状とか、親交の証のようなものか。これがあれば情報集めも円滑に行えるだろう。
「悪いな。助かる」
「……達者でな」
「ああ、そっちこそ」
最後にそう言い交わし、アルオンは店を出た。
間違っていた場所があったので修正しました。シュトローム→シュトゥルムです。
混乱させてしまい、すみませんでした。




