RAVE
なんだか他の小説が投稿できなくなったので新しい小説を始めました。
今作はなるべく日常ぽくないファンタジーを書いてみようと思います。
勇気ある者は言った
『今ある物を求めるな、未だ無き物と今は無き物を求めよ』
平定する者は言った
『罪無き者も、罪ありし者も、我が下で守らん』
抗う者は言った
『何をされても、何が起こっても、我は何度でも立ち上がらん』
刻む者は言った
『偽りなどいらない、我は全てをありのまま刻まん』
集う者は言った
『我らは辛きを望まず、我らは安らぎの地を望まん』
背く者は言った
『正しかろうが、誤っていようが、我はそれに背き歩まん』
侵略する者は言った
『全ては我らが宿願を果たすため、何を犠牲にしようと全てを奪わん』
仕える者は言った
『全ての者は神の手の中に、どんなに求めようと、守ろうと、抗おうと、刻もうと、望もうと、背こうと、奪おうと、どうしようとしても、神の手の上からは逃れられぬ。全てを諦めた者をこそ、神は激賞するだろう』
「ねぇおばばさま、このおはなしはどういういみなの?」
「ほんとだよなー、なんどきいてもわかんないぜ」
「わたしはこのおはなし、なんかすきだな」
「いつか意味が分かる時が来るわ。きっと、いや、絶対にね」
ろうそくの火を灯りにした薄暗い小屋の中、3人の子供に老夫婦が住んでいた村に伝わる伝承を伝えていた。
「いいか?わしはな、この勇気ある者の一人じゃったんじゃぞ?」
「じーちゃん、もうそのはなしききあきたよ」
「もう、あなたは酔っているんだから早く寝てしまいなさいな」
自慢げに話す老人は顔がほんのり赤く、一目で酒に酔っていることが分かる。
「洞窟の奥で戦ったあの化け物は強かった」
「いい加減にしなさい」
老婆が老人の額を人指し指で軽く押して藁の山に倒すと、老人はそのまま眠りについてしまった。
「おばあちゃんすごいね!」
「じーちゃんよりすごいんじゃないか?」
「ふふふ、酔ったおじいさんにだけ使える必殺技よ」
老婆は人差し指を立て、息をふっとかけた。
「おばばさまかっこいい!」
「おれもやってみたいなー。あいつらにこう、とんってやっていちげきでたおしちゃうんだ!」
「こらこら、領主様にそんなことしちゃいけないよ」
「はーい」
領主様というのは、この辺り一帯の村を治める貴族《MARG:RAVE》の一人だ。
対して、老夫婦は一般市民《C:RAVE》で、この子供たちは奴隷《S:RAVE》である。
「おばばさまはどーしてわたしたちをはたらかせないの?」
「働いてもらうほど広くはないからね」
「じゃあどうしてやとったりなんかしたんだよ」
「お話しする相手が欲しかったからよ」
「わたしたちをやとったりしなければおばあちゃんもゆーふくなくらしができるのに」
「いい暮らしなんてしなくていいのよ。ただ食べて、寝て、楽しく生きられればそれでいいの」
「おばばさまなまけものみたい!」
「ふふっ、怠け者、それもいいかもね」
老婆は何かを懐かしむように微笑み、子供たちを撫でた。
「もう遅いからそろそろ寝なさい。早寝早起きしないとおじいさんみたいになっちゃうわよ?」
「えー」
「それは…」
「いや!」
「そうでしょう?さあ、みんなで寝ましょうか」
「「「はーい!」」」
老婆は3人の子供を引き連れ、小屋の隣にある家に入った。
「おじじさまあのままでいいの?」
「いいのいいの、自業自得」
老婆と3人の子供たちは楽しそうにひとしきり笑い、それぞれの寝床についた。
批評、もしくは何かお気付きになった点がありましたら是非コメントをお願いします。そこからよりよい作品を書けるように善処していきたいです。