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黒髪のアビス  作者: めい
2.エストニア侯爵の章
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8:「卑弥呼の料理」の巻

「だから、言ったんです、僕は!」


 怒りの声をあげているのは、ロブくんだった。


 彼が怒るのも、正当な理由があってのことだったので、目の前で、その怒り、というより、その音量に堪えている二人は、黙ってロブの説教を受けていた。

 川の清涼感もかき消される程に、ロブはヒートアップしている。


「言いましたよねぇ、僕。ええ、言いましたとも。穀物は貴重だから、計画的に食べろ、と。何度も何度も・・・・・・」


 低く唸りながら、ロブは言う。



「・・・・・・なのに、なんで3日で全部、食べちゃうんですかぁ!!!!」



 原因はラフィーユを出発してから、2日目にあった。馬車の旅の暇を潰すため、サツキが言った一言である。


「第178回、どんだけ食べるのよ? 胃袋ダイジョブ? はい、ダイジョー、ブイ! ゲッツ大食い大会!! inサツキ杯! ぱふぱふ!」


 それは、ロブくんが、川へ水汲みに行っている間に行われた。確信犯である。



「ほらほら、怒ると余計お腹空いちゃうよ?」


サツキの言葉にロブは再度声をあげる。


「誰のせいで、怒っていると思います!? ダ! レ! ノ! セ! イ! で!!!!」


 はい、サツキさん昇天。白目剥いちゃいました。隣でモスくんが「お嬢! お嬢ぉ~~~!!」と騒いでいます。阿鼻叫喚です。



 この辺りには宿場はなく、次の街まで最低でもあと3日はかかる。

 陰気な表情でロブは言った。


「まぁ、水さえあれば、人間7日は生きられるといいますし、ね」


 その言葉に二人はぶんぶんと首を横に振る。涙目オプション付きです。


「あ、それから、ジョンから施しを受けない事。いいですね」



 ジョンとは、ホビット族の御者の事である。かな~り、印象の薄い人間なので、忘れられてしまうことも、しばしば。

 ジョンの操る馬車は、「幽霊馬車」として各地に怪談話として知られている。ただ単に、あまりのジョンの影の薄さに、まるで馬だけで馬車が走っているように見えるから、というものなのだが。



 やはり、この時もジョンの事などすっかり忘れ去っていたサツキとモスリンドは、はっと目を開いた。


((そうか、ジョンから食料をもらえば・・・))


 主人とその下僕は、同様の思考回路を見せる。その様子にピキピキ青筋を立てたロブは、


「とにかく食料を探してきなさぁ~~~い!!!」


と二人を追い立てた。



◆ ◆ ◆



 そして、二時間が経過―――。



 ロブの目の前には、大量の食材が並んでいた。


 トロトロイモ(芋)にカッシュナッツ(豆)やチェムベリー(木苺)。グランドフィッシュ(白身魚)にパーシェイカ(イカ科)。ウェアラビット(兎)にシルバリオン(狼)。極めつけは、ストロンベア(熊)。


 後半は全て魔物であるが、その肉のうまさは重宝され、高値で取引されているものである。ちゃっかり、貴重な素材部分は、綺麗に削ぎとられている。


 街を出発する時より、品揃えが良くなった。

 余った食材は街に着いたら売ろう。ロブは疲れきった頭を働かせ、そう考えた。


「ふはははは、「釣りスキル」56、「収穫スキル」83、「野営スキル」Maxレベルのサツキさんにまっかせなさ~い!」


「流石、お嬢! 我らがお嬢! 一生付いて行きやすぜぇ~~!!」


「頭が高~い! ひかえ~、ひかえおろ~、卑弥呼サマと崇めたまえ~~! きぇぇ~~い!」


 異常なテンションの二人を尻目に、ロブは淡々とその食材を馬車の荷置場に積んでいく。

 そして、その作業を終えると、二人とはかなり違う低いテンションで告げた。


「サツキさん「卑弥呼じゃ!」・・・あ~、ヒミコさん? ついでに料理もお願いします。そろそろ夕飯の時間なので」


「心得たり!!」







 そう、ロブは知らなかった。サツキの料理スキルがレベル3であることを・・・。


この日の夕食風景は、読者様の想像にお任せ致します。


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