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黒髪のアビス  作者: めい
2.エストニア侯爵の章
12/33

12:「ひらがな表記ならいける?」の巻

「・・・・・・・・(じー)」

「・・・何? 何か言いたそうだね、ロブくん。いいわ、発言してもよろしくてよ」

「いえ、これだと、サツキさんが馬車にいる理由がまったく書かれていないのではないかと・・・」

「え~、もうなんだか疲れちゃったんですけどぉ。大体、こんな重い話書くのとか好きじゃないんですけどぉ。ホラーチックなものも嫌いなんですけどぉ」

「サツキさん、後半部分、作者の声になってます。いや、まさかの前半からですか?」



 ロブくんは仕切りなおすように、ひとつ咳をすると言った。


「えー、サツキさんは、フライ隊長によって、侯爵の館から無事助け出されました」

「はい、質問」

「どうぞ」

「フライ隊長って、誰?」

「ああ、後で教えます。読者さんは知ってますから。それから、これから先は質問禁止の方向でよろしくお願いします」

「はーい・・・(いじいじ)」

「えーと、サツキさん、館にいた時の記憶ありますか?」

「えーっとね、貴族風男にビン投げつけられて、やばいっ絶体絶命のピンチはチャンスなんだって時までです!」

「うん、浴槽でエストニア侯爵に薬をかがされたところまでですね?」

「まぁ、そうともいう? (あの人がエストニア侯爵だったのかぁ)」

「浴槽でかがされた薬は、神経マヒを起こす系統の薬剤でした。ただ、眠らせるためのものです。しかし、助け出されたサツキさんの口腔内(口の中)から千終秋桜、別名『狂い花』の残骸が発見されました。この花の効用は、人の心を混乱状態に陥らせるというものです。魔法だと、補助系魔法の「コルフュ」ですね。サツキさんは、この花を飲まされたようです。混乱した状態で、なおかつ眠っていたサツキさんは、眠りから覚めても、混乱した状態が続いていました。で混乱状態も治り、館から救出されたんですが、外傷は全くありませんでした。煤だらけでしたけど。しかし、なかなか起きないし、でもこのまま宿にいるからといって早く起きる、という訳ではありませんでしたから、ならば、と馬車に乗って、王宮に向かってしまおう、ということになりまして、今に至ります」

「はい、質問」

「却下です。先程禁止しました」

「混乱状態はどうやって治したの?」

「だから、却下です」

「ぶーぶー」



 そんな不穏な空気の中、馬車が森を抜けた。

 窓の景色が森の木々の色から、一気に青い空へと変わり、太陽が眩しいくらいに輝いている。今日もいい天気です。


 空の青。うーん、ちょっと違うかな、こう、もう少し濃い・・・。ん? わたし何を考えている?

 遠くの木々の隙間から一瞬海が見えた。あ、海の色、そんな感じの蒼。うん。



「海の蒼、だ」



 サツキは自然と笑顔になった。

 突然何事かを呟いたサツキに訝しんだ視線を向けたロブだったが、サツキの笑顔に、ロブも笑顔になった。



◆ ◆ ◆



「・・・お~じょ~お~~」


 あ、モスくん復活です。おめでとう。パチパチ。


「あー、あー、なんか気が動転してたみたいで、つい、蹴っちゃって。ごめんねー(棒読み)」

「いや、いいんす! お嬢が無事なら、あっしはそれで!」


 ロブくんが、生暖かい目をした笑顔で見守ってくれてます。

 あーなんだかんだで和みます。この空気。


「モスくん!」

「もす!」

「モスくん!」

「もす!」

「ロブくん!」

「・・・・・なんでしょう」


 あぁ、その呆れた目、和むわぁ。

 そこは「ロブ!」で返してくれたらなぁ、と思ったんだけど、ロブくんはロブの2文字しか名前がないから、わたしが「サツキ!」って返事するのと一緒になるのかぁ。それは変だなぁ。なんか違うなぁ。ひらがな表記にすればいけるかなぁ。「ろぶ!」あ、いけそうです。


「ねぇ、ロブくん」

「・・・却下です」


う、最初の頃の小動物ロブくん、どこ行ったの? 彼を返して!



「あぁ、そうでした。サツキさん」


はい?


「明日、王領に入りますから、そのつもりで」


ん? 明日?


「お嬢、丸々2日眠りこけてましたからねぇ」


うぉ、マジ明日?

ついに魔王と対決ですね!

腕がなります、はい!







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