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クコ皇国の新米茶師と、いにしえの禁術~心葉帖〜  作者: 笠岡もこ
― 第三章(最終章) クコ皇国の災厄 それぞれの想い―
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第65話 亡国1-消えぬ願いと叶えない意思-

 紺樹がずぶ濡れの蒼を心葉堂に連れ帰った頃、白龍はくろんは荒れ果てたとある国――いや、国だった土地の地下深くに立っていた。

 随分・・・と前に滅んだらしい国は、すでに半分荒野と化している。所々に崩れたレンガや骨が落ちているだけで、人どころか魔物の気配すら全くない。


「浄化の魔道を全身に纏っているが、気を抜けば精神が浸食されてしまうのう」


浄練じょうかさぎょうによって特別に織られた衣服や装飾を身につけてなお、ここまで意識を持って行かれそうになるのか。白龍は老人にしては張りのある頬を撫でる。額には数滴の汗が浮かんでいる。

白龍と、その後ろをついてくる同行人の足音だけが岩肌を鳴らす。


「溜まりの水が流れていた脈でさえ、このアゥマの枯渇具合か。根こそぎ吸い上げられているか。世界広しといえど、こんな状態はある意味、貴重な場所だのう。けれど、奇妙なアゥマと強烈な思念らしきものは残っておる。蒼が興奮しそうじゃな」


 白龍の皺のある喉が、くくっと波打つ。あがった口の片端は、孫を見守る祖父と表現するにはいささか悪戯めいた色が濃い。


「ここの不均等アンバランスささえも、あの子にかかれば、ただここに存在するモノへの興味と敬意になってしまうのだろうな」


 白龍の後ろで、同行人が呟いた。白龍とは違い掠れていない、艶のある若い声だ。けれど、声の温度は白龍よりも祖父らしさがある。

 白龍は大げさに肩をすくめた。相手に見えているかもわからないのに。


「紅がそんな蒼を無警戒すぎるとたしなめる姿が浮かぶのう。まったく、外見はわしに似ておるのに、中身は義息の橙と瓜二つだから頭があがらん」

「馬鹿が。昔からお前は自分に言い聞かせたいことを事実のように口にする」


 同行人が思いっきりという調子で溜息をついた。しかも、かなり長い。かつての脈だけに岩の狭い空間でよく響く。


「お前が変な気遣いなどすれば、紅が傷つくだけだろうに。あいつの前では口にするなよ。事実であれ、紅が尊敬する養父に似ているなど祖父のお前がわざわざ言えば、あいつの心を惑わせる」


 はんっと、鼻先を鳴らされ白龍は黙るしかなかった。相変わらず、この親友は容赦がないと。


「紅はお前の外見に、その娘の藍の性格。そして、蒼は外見も性格も――桃にそっくりだと言えばいいものを。何を気にしておるのか」


 遠慮なく苦々しく吐き出され、白龍のランタンを持つ手がわずかに揺れた。

 それは、風来坊でやりたいことだけやってきた自分が得て失った者たちに、心が揺れたのかはわからない。


(わしは……いや、俺は、きっと未だにももを失った現実に向き合えていないのだろう。孫たちが生まれるより前のことであるのに)


 本当におかしな話だと、白龍自身が思う。


 白龍は若い頃から天才と称されながら、自分の生きたいように生きてきた。老舗の一人息子に産まれ、茶とアゥマの才に恵まれた白龍。いや、他にも何でもそつなく出来てしまう彼は、全て虚しかった。

 だから、見ぬものに出会うことを求め、冒険者になった。そんな白龍を母は咎め、父は見過ごしてくれた。孫に言えないような無謀も無茶も、破天荒なこともしてきた。

 そんな白龍が、桃源郷と呼ばれる地でたった一人の女性に出会い人生が変ったのだ。まさに一目惚れだった。が、桃香とうかにとっては最悪な出会いだったようで、しかも、当時の白龍も素直になれず随分とぶつかり合ったものだ。


 こつんとつま先が小石とぶつかり、白龍は我に返った。

 だが、思考は止まらない。今は感慨にふけっている場合ではないのを頭では理解しているのに。まるで何かに誘われているのではとさえ感じられる。脳裏に次々と思い出の光が灯る。


(わかっていたのに。桃は故郷を出れば、長く生きられないと知っていたのに。俺が故郷にとどまるという説得も聞かず、彼女は俺の故郷へと来たのをやはり嬉しく思った)


 沈黙のまま、手元のランタンだけを頼りひと一人が通れる空間を進んでいく。火系の魔道で先を照らしても良いが、先が読めない今、どんな魔道反応が起こるかわからない。


「俺はすでに妻と娘、義息を失った。娘の一件で力を欲して、フーシオなんぞになって……孫たちが辛い時に側にいられない。わしは、そんな存在になりたかった訳じゃない。ただ、あの子たちの側にいて優しく守ってやれれば良かった」


 静寂に落ちた一言。岩壁に手をつき、白龍は背を丸める。額と腹がつきそうなほど。

 どれだけそうしていただろう。

 耳が痛むほどの静けさの中、白龍のすぐ後ろからうんざりとした溜息が落とされた。


「いいから早く先に進め。お前の演技に付き合っている暇はない。こうしている間にも、紅と蒼が危ない目にあっているかもしれないのだぞ」

「ぶはっ!」


 若い見た目の同行人の声を諫めるのでもなく、白龍は思い切り吹き出していた。年相応に皺を寄せて。


(そうこのノリだ)


 今やクコ皇国の人間ほとんどの者が、白龍を人格者だとか神格化さえしている。当然、古い付き合いのものは違うが、特にこの同行者は白龍のたちの悪い性格とややこしさを知っている。


「笑うな。俺は冗談を口にしているつもりはないぞ。歳をとっても性悪さは直らないようだな」


 生真面目な突っ込み方は紅そのものだ。けれど、この同行人は孫たちでさえ知らない白龍の執念深さと性格の極端さを嫌と言うほど承知して、受け止めている。


「さすが、黒龍こくりゅうだ。お見通しか」

「馬鹿言え、だだ漏れだ。一癖どころか人離れした感覚を持つお前が、己の立場・・・について愁傷なこと考えるか」

「しかり。わしはもう正直フーシオの任もいざとなればどうでもいいのだよ」


 黒龍と呼ばれた同行人に振り返った白龍は長い髪を掻き上げた。

 ランタンに照らされた白龍は、実にすがすがしい顔をしている。牡丹色の瞳は暗闇でも煌めいて見えた。


「わしはクコ皇国自体になんも執着心もない。まぁ、麒淵をどう連れて行くっていうのはあるが、紅と蒼がいればどこででもやり直せると思っているのだ」


 黒龍は白龍の背を見て、あぁこれこそが白龍という人物だと仄かな笑みを浮かべた。しゃんとした姿勢に、どこまでも遠くを見据えたように伸びる背。

 黒龍の口の端がくいっとあがる。本当にクコ皇国の連中はわかっていないと思ったのと同時、はたして、少年時代からの付き合いである自分でさえも理解しているか怪しい。

 だからこそ……それだから白龍という男は面白い。


「娘の藍が紅を身ごもった時、藍や橙を失った時。そして今回の件で蒼が傷つき、フーシオの家族ということで紅を巻き込んで、この滅んだ土地に来て思ったのだ。藍が望まぬ男に逆らえず良いようにされ、俺は確かに地位ちからが欲しいと思ったのだよ。麒淵にもそう愚痴ったのは数日前だ。だがな、俺はわかった。久方ぶりに国の外に出て、この荒れ果てたかつては国であった今は墓場に成りはてた地を見て」

「ほぅ。では、今はどうなのだ」

「心葉堂は国に縛られるものではないのを、あいつらはわかっておらん。そして、何よりわし自身がそれを思い出した」


 眼光鋭い白龍は目の前の同行人さえ見ていない。

 が、黒龍もそれを承知しているようだ。黒龍は老人にしては覇気がありすぎる旧友の背中を見つめる。


「お上をあいつら呼ばわりか」

「さすがの俺でも初めてだ。桃は初っから言うておったがのう」


 白龍の首の皺が、大きく波打つ。その度、先を照らすための明かりが左右に揺れた。


「他にも、わしや街の者がする桃の武勇伝は孫の間でも有名じゃ」

「あいつ……俺が知らぬところで何をしておったのだ。いや、変わらぬといえば、変わらぬ訳だが」


 苦々しいぼやきに白龍は笑い声だけを返した。

 白龍は黒龍のこんな声を久しぶりに聞いた。それが嬉しかったのだ。


「蒼が修行期間に話しておったこと、どうせお前が話を大きくしたのだとばかり思っておったが」


 大きな溜息が長く狭い空間でよく響いた。若干反響しているのが、白龍の笑いのツボを刺激してくる。何歩かの間、実際呼吸を乱し、笑い転げた。

 黒龍はそんな白龍のすねを蹴るわけでもなく、持っている杖で背中を押すのでもなく。ただただ、ばつが悪そうにそっぽを向いていた。


「黒龍、おぬしの妹の桃香は桃源郷こきょうの外でも間違いなく、ずっとあの子であったよ。そして、その血は確かに、藍に、孫たちに引き継がれておる」


 上半身だけ振り返った白龍。笑っているようにも、泣いているようにも思える雰囲気を纏っている。実際のところは、ランタンは足下に向けられていて、黒龍からは表情は見て取れないが。

 だが、実年齢が十代半ばであったころからの腐れ縁である黒龍には、手に取るようにわかってしまうのだ。白龍の胸にある感情など。


「お前、その先が下り坂になっておる。緩いとは言え、老人の足だ。こけるなよ」

「なんじゃ、心配してくれるのか」


 今度はしっかりと顔元にあげられたランタンは、悪戯めいた色を浮かべている白龍がしっかりと映し出されている。ついでに、空いた片手で長いあごひげを撫でている。

 黒龍は先ほどまで纏っていた雰囲気を一変させ、口元をひくつかせた。他の者なら気がつかないだろうけれど、白龍はわずかな筋肉の動きも見逃さない。


「馬鹿をいえ。老人を抱えて荒野を歩くなどまっぴらごめんだからな」

「ほうほう。老人でなければ良いと」

「もっとごめんだ! どうせお前は悪びれた様子もなく、一部の婦女子が喜びそうだとか訳のわからぬことを言ってネタにするのだろう!」


 場面を想像してしまった黒龍は苦々しく叫んでしまった。ついでに思い出した嫌な記憶から、ブツブツと呟いていた。暗がりでもわかる位に青ざめて。

 一方、白龍は若い頃と全く同じ反応をしてみせた黒龍にぷはっと噴き出してしまう。ランタンは掲げたまま、腰に手を当て--年相応に落ち着いた笑みを浮かべている。

 

「外見が二十代青年の若いままだと、気持ちまで若くなるものか。黒よ。お前、あの時と全く同じ反応をしておるぞ? 魔道府長官ホーラといい、黒龍といい、長寿の一族はほんにおもしろい」


 『うらやましい』とは言わない白龍に、黒龍は安堵と少しばかりの寂しさを覚えた。

 黒龍はこの男こそ若い姿を保ち長寿であるべきであるのにと思わずにはいられない。それは何も能力や才能だけではない。白龍の尊敬すべきところは、次世代を育てる力と魅力がある部分だと黒龍は考えている。天才的な魔道力を兼ねそえ、独善的である面を持ちながら、人を育て守る心も持つ。

 本来であれば黒龍の妹であり白龍の嫁となった桃香も、長寿の一族だった。だが、純血に近い体質を持って生まれた桃杏は、桃源郷と呼ばれる地を出ては長く生きられなかった。それでも桃香は選んだのだ。白龍の手を取ることを。


――黒兄様、わたしは故郷を捨てるわけではないの。ただ、この人と生きたいと思えたの。白と一緒に笑って、同じものを見て、時には違うことを感じて、ぶつかり合ってもいい。同じでいたいい訳じゃない。ただ、すごく簡単で、でもきっと難しいことを願ってしまったの。私にとっても、もしかしたら、桃源郷ここでも、外でも――


 今でも鮮明に思い出せる妹の言葉。最後まで妹の嫁入りに渋った黒龍を前に、破天荒な妹が穏やかに口にした願いが思い出される。

 黒龍は冷たい岩肌をなぞっていた掌で顔を覆う。すると、途端に思考が鮮明になった。


(これは――)


 黒龍が顎に手をあて、足を止めていた。干渉を呼び起こす不思議な感覚の正体を見つけた気がして周囲を見渡した。


 いくらなんでも引っ張られすぎだ。

 

 数歩先を行っていた白龍が足をとめ、黒龍の名を呼ぶ。それは疑問ではなく、しっかりと呼びかけるものだった。ので、黒龍は疑問を口にせず足を動かした。白龍もある程度、察しているのだろう。


「話を戻すが。紅も蒼も、今回の一件を乗り越えたら、ぐんと大人になるだろう。まぁ、寂しくない訳ではないが、ただ見えないように守る必要はない。色んな事を選択し、背負える歳じゃ。もう、わしが守ってやる必要はないし、フーシオなんざおりてやる」


 随分と楽しげに笑う白龍。暗闇でもわかるくらい、楽しげに揺れている。

 空気がぐんと下がり、一気に吐く息が白くなる。。


「紅は当の昔に大人だろうに。背負わぬと決めたものをきっぱりとはね除けておる。その分……妹への過保護は相変わらず、やっかいな程らしいが」

「安心せい。紅が過保護なのは否定せぬが、蒼がおぬしのところに修行に行く前よりは余計な部分はない。やっかいな虫は追っ払ってくれるが、純粋に蒼を想う青年に対しては口を挟まぬ。……紺樹関係以外はな」

「それは、紺樹あいつの想い云々ではなく、態度が誠実でなくなったからだろう。自業自得な点もおおかろうに」


 黒龍の語気は突き放すものではなかった。むしろ、苦々しい声は紺樹庇うような口調であるとさえ白龍には思えた。

 白龍の昔なじみであり、白龍の妻である桃香の兄、そして蒼のアゥマ使役の師匠である彼だだ。当然、心葉堂の家族同然である紺樹とも懇意だ。別の事情からよく知っている仲でもあるが。


「まったく。紺樹の奴は世渡りが器用な分、根本が不器用過ぎる。白の爪先ほどのふてぶてしさがあれば、己の運命など関係なく好きなように生きることができように」

「なんとも失礼な奴じゃのう。せめて半分くらいといえ」


 白龍のぼやきを黒龍は鼻先で笑い飛ばした。

 紺樹が抱える事情を知る者は少ない。ただ、紺樹は白龍や黒龍とひどく似ていて、本当に大事な人には事情を隠す傾向があるのだけは、みな承知している。


「まぁ、若者のことは当人たちに任せればよい」

「そうだな。では、黒龍よ。心葉堂が取りつぶしになったあかつきには、放浪の旅に付き合え」


 白龍はそれが決して適うこともない願いだと知りつつ、にかりと笑う。だって、そうならない為に二人はここにいるのだから。


「まぁ」


 目と鼻の先には目的の場がある。それを承知していて、いや、わかっているからこそ黒龍は白龍の胸を叩いた。

 互いに理解している。ここでの話の全てが、場所が――もっというなら濃くなっていく特殊なアゥマがなせることであると。負の、いや、心の底にある願望を根っこから引き上がるような感覚。


「腐れ縁の俺と姪の子たちがいて、ある意味一族の分身なる子が共にある」


 少し前から勝手に動く口を自覚していた白龍と黒龍。

 されるがままに、しながら逆に頭は冷静になっていく。ここにいるのが、この二人だから。


「どうだ、皆が個性が強すぎて楽しいと思わぬか。どうだ。ここに眠る術を使えば、わしたちが望むものが全部帰ってくる」

「そうだな」


 重く響く声。 


「そうできる俺たちならな」


 黒龍は静かに笑った。漆黒の瞳に薄く膜が張っている。決して零れることはないが、透明な膜は黒龍の目を覆っていく。

 白龍は後ろから聞こえる、かすかに鼻がかった声に微笑む。


「わしは、わからんのだよ。あの家族と皇太子の願いを生者の勝手えごだと割り切ることができんのだ」


 ぽつりと落ちた声に、黒龍は同情も同調もする気はない。ただしたことと言えば、白龍の背を思い切り蹴り飛ばしただけ。

 つんのめった白龍がやり過ぎたと文句をつけようと振り返る。持ち上げたランタンに照らし出されたのは、真っ直ぐ白龍を見下ろす漆黒の瞳だった。


「なら言ってやろう。白龍、お前はここにある力を望んでいない。望んだところで、得られるものは所詮、偽物。擬態を望む白龍ではなかろう」


 よろけた白龍は尻餅をついた。後ろに体重をかけた途端、光が降り注いだ。

 急激な光に、白龍は空いた手を額にかざす。細めた視界に徐々にだだっぴろい光景が映り込んでくる。

 恐る恐る上がっていく瞼。ついさっきまでは色めいてみていた光景が、ただの風景になっていた。


(だからこそ、誰よりもわしが黒龍をつれてきたことを、おぬしが知っているのだな。ではければ、きっとわしはここにある術に引き込まれてしまう)


 白龍は無言で立ち上がり、目の前の光景に姿勢を正す。一歩踏み出した先には、とてつもなく大きな空間が広がっていた。

 そこはかつて溜まり――人の手によって作られ、瞬時に滅んだ溜まりの跡地だ。


「溜まりの底であったであろう場所に、このような陣がひかれているとはな」


人の願いによりつくられ、人の欲望によって国中のアゥマを吸い上げた魔道陣のあと。地面に残る焦げた線に、白龍と黒龍は息を飲んだ。



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