第2話② 浄化物質と龍脈と、溜まり
浄化物質とは、命の源とも呼べる存在だ。太古の戦争のおり、世界のすべては汚染され生きとし生けるもの全てが、生命の危機に瀕した。
世界を救ったのが一本の大樹だった。その樹から溢れ出た粒子――それは空気や水と言えるかもしれない――は『アゥマ』と呼ばれ、あらゆるものを浄化する力を持っていた。
人類はアゥマを発見したのち、衣食住の生命活動すべてにおいて欠かせなくなった。戦禍より生き残った人々は『アゥマ』の溜まる場所や流れの上に国を築いていった。
けれども、すべての生命が『アゥマ』を扱えたわけではなかった。アゥマを扱えるものは特殊な浄化術―浄錬―を行える技術者として国に重宝され溜まりの番人として、また、『アゥマ』を応用した魔道を操ることも可能であったため、非常時には戦人としても戦争にも借り出された。
『アゥマ』の溜まりが濃い国や技術者が多く集まる場所は繁栄していった。けれど、世界の全ての場所に豊かなアゥマの通り道である龍脈や溜まりが存在するわけではない。生活や文化基準も大きく異なりをみせるようになり、それが原因で新たな戦が多く起きたという。
時は流れ、アゥマを生み出した『ヴェレ・ウェレル・ラウルス―生命の樹―』という大樹は伝説となり、『神』として敬われ人々の信仰を集め続けた。
大樹が存在した場所は『エテル・チュアン・トヴァ・フォンヴェレス』と崇められたが、それすらもさらに伝説となった今。世界の営みは澄清を取り戻していた。
『アゥマ』を扱う職人は、依然人々の生活の中で健在なものの、存在意義は生活水準を高めるためや娯楽などために力を使用されることが多くなった。ただ、食に関係する浄練だけは、未だに必需と言われているが。茶葉だけではなく、どの食物に関わる職業でも同じことだ。
そして、浄錬を行うのに必須条件であるのが、守霊が住む龍脈が集まる溜まりなのである。




