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クコ皇国の新米茶師と、いにしえの禁術~心葉帖〜  作者: 笠岡もこ
― 第三章(最終章) クコ皇国の災厄 行き着くところ ―
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第98話 思慕1―誰が為の術―

 蒼は気を取り直して背を伸ばす。いつ彼らの意識がこちらに向いてもおかしくはない状況だ。なにより、萌黄が虐げられているのを放置できるほど、蒼の堪忍袋の緒は頑丈ではない。

 蒼は考える。紅が『心葉堂の者』として動けないなら、自分が打破する根拠を述べるだけだ。フーシオの家族として国防の義務が課せられるのは同じだが、魔道府から直接依頼を受けている紅と何も知らされていなかった蒼とでは、また立場が違う。


「もうこの際だから、私は好き勝手な意見を言わせて貰うね」

「蒼はいつも割と好き勝手発言はするだろ」

「紅、うっさい」


 兄のもっともな言葉に、蒼はぶっきらぼうな声をぶつけた。その反面、いつもの調子が戻っている紅が嬉しくてしょうがなくて、若干緩んだ音になってもしまったが。

 麒淵には目に見て明らかだったようで、ぷっと可愛い音を立てられた。


「こほんっ! 今回の事件に関して公的な情報を得ている訳でもないし、これは私の勝手な推測」


 蒼は紅と麒淵きえんの首に手を回す。ずいっと顔を近づけると、異なる反応が返ってきた。

 紅は「地味に痛い」とごちり、麒淵にはわずかに視線を逸らされてしまった。


「ついさっき、湯庵ゆあんは『このクコ皇国でこそ。今度こそ、おれの成就をはたす』って言ったよね」


 蒼が囁くように真似れば、紅はすぐさま目尻をあげた。優しい牡丹色の瞳に炎が宿ったようだ。あまりに強い視線に、蒼はじりっと自分の瞳が焦げたとさえ感じられたほど。

 逆に表情は氷を彷彿とさせる冷静さを浮かべているから、ぞくりと身震いが起きてしまった。これこそ、蒼が尊敬して遠いと感じていた魔道府勤務時代の紅を彷彿させる姿だ。


「あぁ。オレたちが推測していた術の効果とは違う。今まではクコ皇国中のアゥマを吸い上げ『元の萌黄』を復活させる反魂の術が施行されると推測していた。萌黄を愛する山梔子さんししの企みで」

「オレたちっていうか、麒淵と紅、それと魔道府だけどね」


 蒼が唇を尖らせて細かい訂正を口にする。

 国全体や心葉堂を巻き込んだ今回の件だ。蒼だってある程度の事態と華憐堂の関与は想定してはいたが、『オレたち』と含められるほど巻き込まれてはいない。むしろ、つい先ほどまでは蚊帳かやの外だった。


「うん、まぁ――ごめんって」


 紅は気まずげに頬を掻いた。てっきり、話の腰を折るなと叱られると思っていたのに。

 困ったことに、蒼はつい先ほどまでのような凜々しい紅も大好きだが、彼のこういった雰囲気にすこぶる弱い。本人が無意識だからたちが悪いと責任転嫁せきにんてんかする程度には、責める気が根こそぎ失せてしまうのだ。


「まぁ、いいや。口外できない事情があるのに頷くのも、心葉堂の茶師・・・としての義務だしね。一応付け加えておくと、別に妹として納得している訳ではないから」


 蒼は小さくぼやいて、紅の脇腹を叩くにおさめておいた。前半部分で、男性陣二人があからさまに安堵の息を吐いたのが少々気にくわなかったので、許される範囲の抵抗だろう。

 蒼の拗ねている感情など容易に想像がついたのは紅。特に反論はせず疑問を口にする。


「だが、湯庵の様子や態度からして、幾度も萌黄さんという存在のためだけに術を繰り返されていたとは考えがたい」

「さすが紅! 話が早い!」


 ぱちんっと、蒼が親指と中指を擦らせる。

 どこまでも軽い蒼に、紅は出てはいけない何かが出そうな勢いで溜息を吐く。どうして、この妹は目の前の謎に好奇心いっぱいに臨むのだろうかと。


(こういうところが、蒼の『欠落』なのだろうか。情に深いくせして、妙に事実を客観的に分析するし、感情が豊かにこたえる。その違和感)


 紅は込み上げてくる焦燥を飲み込む。自分についてしがらみを嚥下した途端、邪推を始めるのかと頭を振った。

 一方、守霊である麒淵は首を傾げるばかりだ。

 興奮する蒼の口を片手で押さえ、紅は説明する。


「麒淵。簡潔に言うと、この溜まりは愛する人間がどんな姿でも良いから生きながらえて欲しいという慕情から整えられたものじゃない。湯庵の『私欲にまみれた願望』を叶えるための装置だったってことだよ」

「うん? あやつが黒幕であるのは理解できるが、だからといって、封印された溜まりで守霊を生み、萌黄を存続させることに重きを置いているという考えの方が理解出来ぬ。そもそも、大規模な術を繰り返してきたのは、人間の業を体現する他あるまいて。じゃから、我はそれを阻むために萌黄の振りをしていた守霊たちを聖樹に帰したのじゃが」


 麒淵の眉が、珍しく不機嫌さを隠しもせず歪んだ。

 成人男性の姿をとっているせいか、迫力が増している。いつもより薄くなっている色素も相まって、蒼は気圧されてしまった。見たことがあるようでない姿に。

 紅はさりげなく蒼の体に腕を回しながら、口を開く。


「恐らくだけど、そもそも麒淵とオレたちの認識の起点自体スタートが違うんだと思う」

「どういう意味じゃ?」


 麒淵の素朴な疑問に、蒼は「気を悪くしないでね」とめったにない調子で苦笑を浮かべた。

 軽口ならともかく、蒼が意味もなく麒淵を不快にさせる発言をしないのは重々承知だ。麒淵は躊躇なく頷いた。


「だれがための術、という点。麒淵は守霊だし、でも人の心にすごく近い存在だ。その境界の曖昧さが人間の号の深い部分を理解させ、反面、たった一人の愛する人を生きながらえさせるために大規模な工作をして偽の溜まりの生成を行うなんて『割にあわない』と思ったんだよね?」


 それはきっと、人間である紅と蒼だから気がついた思惑の違いだろう。ひいては陰謀の正体といえよう。それぞれの人間で術の認識違いが生じた――いや、生じるように仕組まれたからこそ、現状があるのだ。

 蒼も気を取り直し紅と顔を見合わせた後、未だに納得がいっていない様子の麒淵にずいっと額を近づけた。


「山梔子も萌黄さんも、ここの溜まりは萌黄さんの次の魂と作る術だと考えているだろう?」

「うっうむ」

「そんでもって、竜胆皇太子りんどうこうたいしはソレを横取りして、本来は萌黄さんを形作る新しい魂になるはずの守霊を妹君に入れようとしたの」


 蒼の囁きによって、守霊の中でも人の感情に聡い麒淵は全てを理解した。

 つまりは、湯庵以外の誰もが偽溜まりの本来の用途を理解していないということだ。それは今の今まで、心葉堂どころか魔道府の者を含めて。

 いや、と麒淵は頭上の光のひとつを見上げた。早い段階で真相を見抜いている、もしくは疑問を抱いた人間がいたからこそ、今がある。


 麒淵に全てを語り、蒼と紅を誘導し、紺樹をたきつけ、白龍に助力を仰いだ人物。そして――禁書の存在を示した、いや禁書という『物語』の作者であるあの人。どこまでが真実かは知る由もないが、彼女の性格からして特に感情的な面は少なくとも四割方は偽物フィクションだろう。


 守霊である麒淵には、正直ここまできてようやく彼女の意図が読めた。情けないと思うとのと同時、妙な笑いがこみあげてくる。


(おぬしは恐らくすべてを見抜いていたのだろうな。豊富な知識を持ち長い命を生きながら、いまだなお人里にあるおぬしならあり得る)


 魔道府に繋がる珊瑚色の光球を見上げて、麒淵はどうしてか胸が痛んだ。彼女とは白龍が生まれる随分と前からの付き合いだが、いまだに掴めない性格をしている。

 再び麒淵は軽く頭を振った。白龍よりさらに自由の塊のような彼女がクコ皇国の魔道府長官などという面倒くさい役職におさまっている理由。それは、すこぶる単純だ。


魔道府長官ホーラが、この国を宝と思うておるからに他ならない。それを害する者を排除するためなら、きっとあやつはだれでも利用するじゃろう。この国が聖樹に愛され――いつか遠い未来に聖樹の『糧』を出す定めの国であるから。実に歴史狂らしい理由じゃ)


 麒淵が人間の中で一番恐ろしいと思っているのは、魔道府長官だ。白龍は彼女に似てきているが、白龍の何倍も生きている彼女はその比ではない。

 外見と仕草の見た目の愛らしさに加え、飴と鞭の絶妙な人当たりに誤魔化されるが……そこまで考えたところで、蒼の声が麒淵の意識が戻った。


「これは私たちの直感でしかない。でも、あの湯庵がこの術を繰り返してきた理由と今の湯庵の状態と発言をすりあわせてみたの。そうしたら、この術の行く末が見えたよ」


 蒼は込み上げる理不尽さに手を握りしめた。

 蒼は楽天的だが、彼女のソレは状況を分析しないことに由来することではない。むしろ現状を受け止めた上で打開策を導き出すのが蒼の強さと言える。


(蒼は時に恐ろしいほど物事の本質を冷静に見抜く。物事だけじゃない。どちらかというとその人間の本質を射貫く。紺兄のことも、オレのことも。他の人たちのことも。蒼は無意識でやっているようだけれど……まったく末恐ろしい跡継ぎだよ)


 紅は蒼の白い手にそっと掌を重ねて頷いた。


「ただね、麒淵が考えている偽溜まりがもたらす現象と、私たちが思い至った偽溜まりの役割はどっちも本当だと思うの。だれかにとっての比重が違うだけで。クコ皇国っていう世界屈指のアゥマが豊富な国で作られたからじゃない。元々、偽溜まりっていうのは、ある意味純粋な溜まりより歪んだ効果がもたらされるのかも」


 蒼は寒さのせいか、それとも恐ろしい事実のせいか、かじかむ唇を動かす。零れる自分の吐息にさえ身震いがおきてしまう。



 ひとつ。

 山梔子は死人アンデッドの萌黄を動かし続けるために、偽溜まりを作り、守霊を萌黄の体に取り込んだ。萌黄の肉体に偽りの命を吹き込んで。そして、守霊に萌黄を演じさせることにより、まるで萌黄が生きているかのように偽った。


 ふたつ。

 彼らは各土地で偽溜まりもしくは本物の溜まりを吸い上げて、萌黄の中に守霊を取り混み続けている。


 みっつ。

 守霊を取り込んだ萌黄の体だけではなく、山梔子と湯庵も同じ時を生きてきている。加えて、萌黄が精神を崩壊させていったのとあわせて、山梔子と湯庵は身体的な加齢を見せた。



 そう。三点目こそ見落としていたのだ。

 萌黄にばかり目が行っていたが、共にいる彼らにも着目するべきだったのだ。従者たちはともかく、萌黄に対して威圧感を隠しもせず放ち続けていた湯庵こそ注視すべき人物だった。

 とどのつまり、彼らに忠誠を誓っているわけでもなく、畏怖しているわけでもない湯庵が彼らを庇う理由。そんなものは自分の利権に他ならない。


「娘である萌黄さんを愛しく思っていない湯庵だもの。反魂の術に荷担しているのは自分が生きながらえるためとしか思えないよ」

「あぁ。しかも、今の様子を見る限り現在進行形リアルタイムで彼らは齢を重ねている。ということは、この術に若返りの術が含まれているのはあながち間違いでもないだろうな」


 『さらり』とではないけれど、それでも平然と取れる音程で会話を進める兄妹。麒淵は内心、戸惑いを覚えていた。

 人ならざる麒淵が覚えた戸惑いに、さらにこの場が異常なのだと思わざるを得ない。できるなら事態が面倒くさくなるのを承知で、一刻も早く『まだ自分よりは人に近い』と思える白龍や紺樹、魔道府長官に来て欲しいとさえ思う。


(常日頃から紅と蒼が優秀であることは理解しているつもりであった。しかし、今のこれはどうだろう。『有能』と一言で片付けられる反応だろうか)


 麒淵が案じているのは何も現状だけではない。このような人の理から逸脱した事件の後、蒼と紅は日常に戻らなければならない。

 守霊である麒淵をはじめ、魔道府やフーシオの白龍は別だ。もちろん守霊である麒淵と人間としてアゥマに関わる事件や不正に携わる魔道府かれらでは感覚も程度も異なる。けれど、おかしな表現をすれば、彼らにとってアゥマに関わる事件は大小あれども、ある意味では日常・・・だ。


 だが、蒼と紅の二人は違う。


 弐の溜まりの人間とはいえ、あくまでも平素は一般人だ。


(一度ズレた焦点ピントが完全に戻ることはない)


 麒淵が瞼の上に陰りを乗せるのと同時、しゃがれた声が空間に響き渡った。


「このグズがっ! はよう竜胆さまのために術を発動するのだ! そのためにお前の偽物の魂と本物の肉体が必要なのだ! はよう!」


 湯庵はほとんど九十度に曲がった腰をおさえ、異常興奮ヒステリックの状態で唾を飛ばす。目に見て明らかに老化現象が進んでいる。

 が、湯庵の近距離にいるはずの竜胆は彼の様子に疑問をもつ風もなく、何度も頷いている。


「うむ。萌黄とやらよ。我が愛するが生き返るための犠牲になれ。はよう衣服を脱いで、溜まりに沈むがよい。この本物で有り偽物でもある溜まりに守霊を生み、我が妹の魂を呼び戻すには必要なことなのだろう?」


 湯庵と皇太子の言葉に、萌黄は何度か瞬きを繰り返し――羽織から手を離した。華奢な肩から滑り落ちた羽織が音も鳴く地面に落ちていく。光が消えた瞳からは羽織を追って一滴だけ色のない涙が零れ落ちた。

 震える指が喉元の飾りにひっかかる。涙とは違い、飾りはけたたましい音を立てて地面で跳ねた。飛び散った翡翠の飾りを追って、山梔子の瞳が開いていく。


「萌黄……もえぎ」


 囁く山梔子。反対に湯庵の口は同じ名を呼びながら愉快だと三日月を形作る。

 蒼には萌黄の仕草と表情の違和感からして、自分の意志で指を動かしているようには見えなかった。白い肌が空気に触れる面積を広げる度、嫌だと嘆いている気がした。


「萌黄さん!」


 蒼の呼びかけが空間中に響き渡った。咎めではなく、届けと願う呼びかけ。

 萌黄は勿忘草色の瞳孔を開いたまま、顔をあげる。


――とめて。お願いだから、とめて。わたくしをではなく、悲しみの連鎖を断ち切って――


 震える唇は確かに、はっきりとそう動いた。助けを求めるのではなく、止めてと萌黄は願った。自分の感情からでも、大切な人を守るのでもなく、その先にある悲しみを想って。

 蒼はやるせなくなって、萌黄の手目がけて水系魔道を発動させた。


「どうして、こんなっ」


 蒼の手元ではなく、直接萌黄の手元に現れた水泡は真っ白で華奢な手を叩き落とし。

 かなりの高度な術の発動に、蒼の全身が汗まみれになる。頭皮がぐっしょりと濡れ、全ての毛穴から汗が流れ出る。

 湯庵はくんと鼻先を動かし、まるでかぐわしい花の香りを吸い込んだように悦にいった表情を浮かべた。


「ほぅ。これはこれは。心葉堂のお嬢さんはほんに優秀な器なようで」


 本来、術は体内のアゥマを掌や道具に集中させ、外気に漂っているアゥマと共鳴し術式を組むことで事象が発生する。

 それを己の体から離れた場所を起点として術を発動できるのは、上級魔道士アゥマつかいでも極限られた術者のみ。蒼はこの土壇場で、それをやってのけたのだ。しかも単純な攻撃ではない。力加減コントロールを必要とする程度で。


「蒼、おぬし――」

「麒淵、さっきは紅を止めたけどもう無理。だって、私はなんだかんだ言っても萌黄さんが好きだもの。結構強引で、でもだれかに一生懸命で、きらきらしてる萌黄さんが好きだから!」


 蒼の言葉を受け、最初に顔を上げたのは山梔子だった。脱力した体を持ち上げ、山梔子は蒼を見る。弱々しく情けない調子で。


「貴方もでしょ!」


 蒼は言い切る。だって、蒼は思ったのだ。山梔子から向けられたのは、助けを求める人の視線だと。弱くて弱くて、どうしようもなく弱い人の救いを求める縋るアゥマ。

 それは蒼自身が自分に視た弱さだ。両親を亡くした絶望の中で。


(萌黄さんは救ってと願う。山梔子さんは助けと求める)


 萌黄の願いと似て非なる者。蒼は受けたいと思った。二人の願いを。

 流れ続ける汗が目に染みてしょうが無い。蒼は乱暴に腕で拭いあげる。やはり汗は節操もなくあちらこちらに触れて痛みをもたらす。であるのに、不思議と嗅覚は遮断されている。汗臭さなど全く感じない。


「萌黄さんは道具じゃない! ここにいる萌黄さんが本来の萌黄さんじゃなくっても、彼女は私たちが知っている萌黄さんだもの! そんでもって、彼女は、山梔子に愛されたいって言っていた! なら、少なくともここにいる萌黄さんの想いは本物だ!」


 蒼は言い放つ。しっかりと足を開き、右足の膝を低く折る。正面を向いたまま腰を捻り、前に出した左方を低く保ち、いつでも踏み込める体勢をとる。


「彼女が、だれかの犠牲になることなんてないんだ! 守霊とか、偽物とか関係無いよ! 今ここにいる萌黄さんが助けを願ってくれたから、悲しみの連鎖を断ち切って儀式を止めるよ!」


 それが、だれかの絶望を導くとしても。蒼は偽物の反魂の術なんて施行させたくないと思った。

 十四歳の蒼は大事な人との別れが一時のものと疑わず、帰れば当たり前に迎えてくれる笑顔があると信じていた。けれど、もうすぐ十七歳になる蒼は承知している。それが日常ではないことを。それと同時に、己の後悔を理由にソレを叶えてはいけないとも知った。


「だれもが願うことだけれど、叶えてはいけないんだ。だって、だって」


 蒼は泣くことさえできなかった。自分が泣くのは違うと思ったから。代わりと言わんばかりに汗が滴り落ちる。


「生きて欲しかった人がソノ生を後悔しているなんて! 貴方が生きて欲しいと願う優しい人が、貴方が傷をえぐり続けることを願うかなって思うの!」


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