異世界転生した女子高生、今日も異世界生配信します【収益公開あり】
気軽に読んでもらえるとうれしいです。
「はい、よっす。お願いします。今日も異世界から生配信していこうと思います」
スマホのカメラに向けて、私は敬礼のポーズを取った。
「今日の動画は私の給料ルーティーンというか
異世界に転生してから直近一か月の売り上げを公開したいという配信です。
目次としてはこんな感じ」
私は画面右側に配信目次と手書きで書かれたメモを出す。
①収入公開
➁引かれる税金額
③白竜退治
「まず収入公開、それから引かれる税金額、そして最後おまけの白竜退治。
この構成でお届けしたいと思います。
一番最初に私の簡単なプロフィール、
私、早瀬りなは、現在16歳で一人暮らしです。
今日の議題は異世界に転生して、はや一か月。どうにか生きてる私の収入を発表したいと思います」
金髪に染めた長い髪をひとつにまとめ、制服のリボンを結び直す。
なぜか持ってきたスマホが現代日本のネットにつながるという意味不明仕様。
しかも、魔石にタイプCのUSBをつなげば充電できる。
魔石には電気が流れているのか、それとも電気は魔力なのか…。
コメント欄が一気に流れた。
「金髪JKかわいい」
「制服のまま異世界生活してるの草」
「今日も背景がファンタジーすぎる」
「異世界で彼氏ができたのか教えてほしい。切に」
「そう、今日の背景は――あれ」
私はスマホを少し上に向ける。
山の稜線に、巨大な白い影が横たわっていた。
「最後に退治しに行く白竜です。今は寝てるみたいなので、みんな静かにお願いします」
「え?」
「ドラゴン?本物初めてみた!」
「こいつは油断ならんですよ」
「ちょっと無謀すぎる説」
「やろう…むちゃしやがって…」
「視聴数稼ぐためとは言え、無謀すぎる…」
「私の生活がかかっています。みんなの応援があれば倒せると思うのでスパチャお願いします!」
私はスカートを押さえながら岩場に腰を下ろし、スマホを固定した。
「今日は“異世界生活一か月記念”ということで――
冒頭でも言った収益公開をしたいと思います!」
コメント欄がざわつく。
「異世界でも収益あるのか?通貨どうなってるの?」
「収益公開助かる。すごく興味ある」
「異世界の配信って、夢あるの?」
「まず、今配信してるMeTubeからの収益。今月は――8万7954円でした!
これはスパチャ含みます。こう言っちゃなんだけど、みなの応援はまだ足りないよ!」
「でも、普通に稼いでるやん」
「異世界からの収益で日本円もらえるの意味不明」
「自宅警備員の俺からすると羨ましい」
「でも、異世界でその額は世知辛いwwww」
「私も意味わかんないけど、振り込まれてるから良しとする」
私はスマホを持ち直し、ため息をつく。
「で、問題はここから。
配信の収益をこの世界の通貨に交換するとき、手数料10%取られます」
「高い」
「異世界レートぼったくり、きた」
「闇ギルド案件?」
「その手数料は誰の懐に入っているのかすごく気になる件」
「さらに冒険者ギルドには、成功報酬から紹介料15%持っていかれます。
利益からではなく、売り上げから持ってかれる感じだからね」
「えぐ」
「ギルドってそんな取るの?」
「異世界ブラックすぎる」
「ペイペイの手数料がすごく安く感じる件」
「そして極めつけが――伯爵領の所得税。
60%。まあ、これは利益からだけどね
なので、今月、冒険者ギルドの依頼をこなして得たお金は白金貨2枚、金貨20枚、銀貨360枚、銅貨1200枚。
日本円にすると44万8000円かな?
そのうち、6万7200円がギルドの手数料で取られ、22万8480円が伯爵領の所得税として取られます。
残ったお金は15万2320円。MeTubeの収益から交換手数料を引いたら7万9159円なので、
今月の手取りは23万9479円です」
「俺より、手取りがよくて草」
「それだけあれば生活できる!」
「それでも、俺の手取りの半分以下だな」
「税金高すぎワロタ」
「日本より酷いwwww」
「で、ひと月の生活費なんだけど、まず食費がだいたい3万(冒険中の自炊含む)。
宿代が1日5000円の30日。冒険中に外泊して宿に泊まってなくても払わないといけない…。
残りは6万近くあるでしょ?と思うかもしれないけど、冒険のための道具や装備を考えると、
とてもじゃないけど足りない…。
ちなみに冒険者ギルドには、毎月2万の登録費を払わないといけません…」
「冒険者ギルドが諸悪の根源キタwwww」
「命懸ける冒険者が幸薄くて泣けるwww」
「賃貸とかないの?宿代に15万高すぎ」
「賃貸も考えてるんだけど、そうすると水代とか魔石代がかかってくるのよ」
それにね?となりの侯爵領は所得税40%らしいという話。
だから、そっちに移住することも考えてる」
「絶対そっち行け」
「20%の差はデカい」
「伯爵領やばすぎる」
「侯爵領良心的。それでも高いけど…」
「でも関所を通るのに、通行料がいるし、その間の旅費とか考えるとすぐには無理なんだよね…」
私はスマホに向かって苦笑いする。
「というわけで、今月の残高は…」
計算結果を画面に表示する。
「……ほぼ残らん、ということに」
「全異世界が泣いた」
「白竜倒してもかなり税金持っていかれるんじゃね?」
「異世界の税金重すぎ。健康保険も国民年金もないのにほぼ残高なしって…」
税金の世知辛さは私も重々身に染みています。
「さて、そろそろ最後の白竜倒しに行こっか」
私は立ち上がると足元に置いてあった大剣に手をかける。
「ちょ!武器は大剣って、それ絶対に5万じゃ足りないやつだろw」
「いったい、どこで手に入れたんだ?」
「盗み、ダメ、絶対!」
コメント欄が一気に荒れ始めたが私は気にすることなく
スマホを胸元のホルダーに固定し、スカートの中が見えないよう裾を押さえながら立ち上がった。
そのまま、体長20メートルはあろうかという白竜の首元へと近づいていく。
「どりゃあああああ!」
斬っ!!!
大きく振りかぶった大剣を上段から白竜に振り下ろす。
すやすやと眠っている白竜の首がそのまま、ずるりと胴体からすべり落ちる。
金髪が風に揺れ、制服のスカートがひらひらと舞う。
なかなか絵になる乙女の姿じゃないだろうか…。
「こいつ、寝込みを襲いやがった!!!!」
「ひでえええ。せめて白竜を起こしてから戦ってあげて!」
「やめてええ、白竜のHPはとっくに0よ!」
「いや、白竜を一撃で倒すなんて、とんでもなくすごいことだけども!!」
コメント欄がだんだん罵詈雑言になってきたようだが、私は気にしない。
「オー!ジャパニーズトイエバ、リメンバー、パールハーバー!!」
何か外人もコメント欄に現れるようになったようだ。
「というわけで、白竜も倒せたことだし、今日の配信はここまで!
次回の生配信はまた一週間後にするのでよろしくね!
それまでの間は、日々の生活や冒険の様子などの動画をアップしようと思っているので、
もしよかったら、チャンネル登録と高評価お願いします。
それじゃあ、また、バイビー!」
そう言って、私は配信を終えた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「この続きが見たい」「別の配信企画も読んでみたい」などあれば、ぜひ感想で教えてください。
★やブクマ、コメントなどの反応を、次の企画に活かしたいと思います。
5/9(土)の20時過ぎくらいに次の短編を投稿しようと思いますのでよろしくお願いします。




