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胡蝶の会  作者: ATU
2/3

2:鳴かない鳥

不定期と言いながらこの更新のはやさ…


他に連載してる小説もあるのに、こっちばかり思いつくんです




西暦2300年、地球は大きな変貌を遂げていた


銀色の金属で覆われた地面には隙間なく銀色のビルが立ち並び、道路は空中につくられている


抜けるような澄み切った空は、紫外線などから地球を守る特殊フィルムに映されたものだったし、人間以外の動植物は既に絶滅していた


酸素などは機械で作り出せるし、生産性の向上で人類は殆ど働かなくても良くなった



そんな街では、何か珍しいものを持ち寄り、それでひまをつぶすのが、密かな流行になっていた


そんなことに人一倍熱心だったA氏のもとに、ある日一つの品が持ち込まれた


「おや、また珍しいものを持ってきたんだな」


A氏は品を持って来た男を、客間に招き入れた


男は、ピンク色をした何かを、両方の手で大事そうに抱えていた



「Aさん、これは“とり“という、大昔にいなくなったものです」


男は椅子に腰掛けるなり、うやうやしくそう言った


「成る程、わたしも初めて見るものだ…」


そう言ってA氏は、ポケットから小さな機械を取り出した


これは万能電子辞書で、言葉の意味から図鑑まで何でも載っていて、今の人はみんなこれに頼って生活しているものだ


A氏は辞書のボタンをいくらか弾いて、それからまた“とり“ を見た


「ふむ。“鳥“というのは、とてもきれいな声で鳴くという。ぜひとも聴いてみたい」


A氏は“とり“を指でつついたが、なんの反応も返ってこない


「鳴かないな…しかし、電子辞書にも、鳴かせる方法は書いていない。何しろこの“鳥“というやつは、数百年も前に絶滅してしまったものだから、辞書にも詳しく載っていないのだ」


そこでA氏は、知り合いの学者を数名呼んで、“鳥“を鳴かせようとした



A氏のもとに来た学者は、みな自分の電子辞書とにらめっこをしながら、様々な方法を議論した


「“鳥“は仲間を呼ぶために鳴くという。小突いてみるのが一番だ」


「まて、わたしの辞書には、縄張り意識で鳴く、と書いてある。広いところへ放してみたらどうだろう?」


「ばか、わたしの辞書はカーキ社製の最新型だぞ。餌だ、餌をやればいいんだ」



議論はいっこうにまとまらず、一人の男がこう言った


「そうだ、この近所に、昔ながらの生活をしている変わり者がいるらしい。そいつに聞いてみたらどうだろう」



その男はすぐにA氏の家に招かれ、男はこう言った


「あ、それはわたしのです。先日、盗まれて困っていたのだ」


男は喜んで“とり“をひっつかみ、帰ろうとした


A氏は彼を呼び止めた



「待ってくれ。“鳥“というのは、とても素晴らしい声で鳴くという。ぜひ、聴かせてもらえないだろうか?」



男は一瞬呆然としたが、すぐに承知してくれた


「そういうことでしたか。おやすいごようです。では、少し目をつむっていて下さい」


すぐに目を閉じた一同の耳に、「カーン」というとても響く音がこだました


「おお、なるほど。想像とは少し違ったが、悪くない。どうもありがとう。どうかお気をつけて」



そして男は、A氏に笑顔で送りだされた







家に帰った男は、呆れた顔でぼやいた


「やれやれ、最近のやつらときたら、辞書を片手に知ったかぶりをして、自分では何も覚えていないらしい…」


男はさっさとほうきで床を掃き、取っ手のついた平たい“とり“ でごみを集め、ごみ箱にすてて、さっさと掃除用具入れに放り込んでしまった







今回のオチは、なんとなく星氏のそれと近いような感じで、とても満足


いまあるアイデア2つを使い切ってから不定期更新にしよっかなと思いますー

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