1:死因の会
星新一氏に激しく憧れて、ショートショートを書いてみました。
思ったより大変なので、定期更新は難しそうなので、お気に召したらたまに覗いて貰えたら嬉しいですー。
宇宙よりもずっと上の方に、一つの世界があった
人間の魂がたどり着くその場所は、一般的に「あの世」と呼ばれるそれだった
太陽の光も届かないというのにそこは白く、光源があって明るいというよりは、光も影もないといった感じで、平坦な白い地面と白い空がどこまでも続いている
そんな場所に唯一存在する、これまた真っ白な川のほとりに、三人の死者がなにやら集まっている
仮にA、B、Cと呼ぶことにする彼らは、「死因の会」と呼ばれるクラブのメンバーであった
残りの二人を見回して、Aが口を開く
「さあ、これから死因の会のはじまりだ。では、おれから一つ、話させて貰うとしようか」
これだけ真っ白で退屈な世界にいると、死者たちも随分と持て余してしまうらしく、いろんなクラブやら集まりがあの世には存在している
この「死因の会」も、面白い死に方をした死者たちが立ち上げた、自分の死因について大いに語るという、へんてこな集まりであった
Aは話を続けた
「おれは生前、結構に名の知れたボクサーだった。なかなかきれいな奥さんを貰い、それは充実した人生だった」
「成る程、幸せな人生に訪れる悲劇。わくわくしますな」
Bが身を乗り出して相槌を打つ
「本当に、そうですねぇ。私なんぞ、普通のサラリーマンでしたから、うらやましい人生だ」
Cも目を細めて頷いている。Aは気分が良くなって、さらに大きな声で話を続けた
「いや、おれはリングの上で華々しく死んだわけではない。家内の浮気が原因だったのだ」
Aはまるで怪談でも話すかのように声を低くした
「浮気をしていたのには感づいたが、いかんせん証拠がなかった。それで探偵に調べさせたら、ずうずうしく家で会っているらしかった。そこでおれは、密会現場をおさえようとした」
「ほう、なかなかドラマチックじゃないですか。しかし、あなたが死ぬ理由が、まだはっきりしてきませんね。浮気相手や奥さんを殺してしまったならともかく」
「まあ、最後まで聞いてみましょう。きっと我々の驚く展開が待っていますよ」
BをたしなめるようにCが言う
「まあ聞いてくれ。おれはある日、妻に外出するとうそをついて、密会現場に押し入ったが、肝心の相手がいなかったんだ。多分、逃げた後だったのだろうな。だが、おれは妻を激しく追求し、威嚇のつもりで、側にあったサンドバッグを、窓の外に放り投げた。ところがのぼせた頭でいきなり力を出したから、そのショックでポックリと…」
その話を聞いたBが、驚きの声をあげた
「なんと、そうだったのか。いや、実にこの世は狭い…」
「どういうことだい?」
Aが不思議そうな顔をした
「いや、わたしは生前、ある女と浮気をしていたのです。いつものように夫の外出中にその人の家に行くと、いきなり旦那が帰ってきたのです。それで、とっさにわたしはサンドバッグの中に隠れました。そしたら…」
Aは目を丸くしていた
「なんと、まあ、そうだったのか…これは悪いことをした。本当に、この世は狭い。一つここは、お互いに水に流して、この縁を大事にしようじゃあありませんか」
Bは安堵の表情で、Aに握手を求めた
「そう言って貰えると、非常にありがたい。いや、縁とは本当に不思議なものです…」
Aが、申し訳なさそうにCに言った
「すみません。あなただけをかやの外に出してしまったようだ。さあ、あなたの死因を聞かせてください」
「ええ、ある日わたしがジョギングをしていたら、急にサンドバッグが落ちてきまして…」
頭が足りない…
という訳で、なんかどこかで聞いたような話になってしまったのは、星氏をリスペクトし過ぎたのでしょうか
多分また書きます
では