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滅びの世界の調停者~迫害された魔女ノエル、最強になり世界を一つにする~  作者: 鴻上ヒロ
第5章:正史世界の魔女と騎士とアルラウネ【失われた記憶編】
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80.依頼完了!

 魔女の家に帰り、アイコと一緒に商会に向かった。依頼書にあった盗品を取り返したことと、盗んだ悪魔を殺したということを報告すると二人は静かに微笑んだ。


「本当は捕まえたほうがよかったよね……?

「殺してしまったのは少々残念ですが、まあ事情は説明してもらいましたし、構いません」

「商品が戻ってきただけでも御の字ですよ!」


 レンが漂流物の武器を見て目を輝かせている。レンもこういうのが好きなのだろう。少しだけ彼の感情が見えて、なんだか嬉しくなった。


「しかし一度人の手に渡った商品です。使用はされてないようですが、値下げは必要でしょうね」

「どのみち損害は出るわけね」

「盗まれた時点で損害ですから、こればかりは仕方がありませんよ」

「でも取り戻してもらったおかげで、損害も小さくなります!」


 レンが武器を大事そうに抱えながら、部屋を去った。商品として再び売るために、清掃などをするのだろう。


「本当にありがとうございました。これは報酬です」

「ありがとうございます」


 リンから報酬を受け取り、依頼書に完了のサインをしてもらい、依頼が完了した。スッキリとしないことが多い事件だったが、ひとまずはリンとレンの笑顔が見られただけでよしとするか、とリンに微笑み返した。


 そして、再び家に戻った。


 家に帰るとルミが酒を飲み始めているのが見えて、ため息が出た。

 またこの人は昼間から酒を……と思いながら隣に座り、彼女の顔をじっと見る。言いたいことが伝わったのかはわからないが、ルミが目を逸らした。

 しかし、酒は飲み続けている。


「仕事が終わった後の一杯が一番うまいんだ……許してくれ」

「まあ気持ちはわかるわ」

「わか……るけどさあ、体に悪い! せめて何か食べなさい! お昼ごはん食べてないんだよ!?」


 言いながら立ち上がり、ノエルは冷蔵庫から昨晩の残りを取り出して温めた。芋の煮物とボアピッグと野菜の炒め物、ノエルの自家製パンだ。


「せっかくだからノエルの手作りが食べたい」

「パンあるじゃんパン」

「作りたてがいいな」

「はあ……じゃあ簡単に作るから、それまでお酒は中断! わかった?」


 ノエルが言うと、ルミがこくりと頷いた。ルミの対面に座るアイコとサンディが大笑いしている。声を聞きつけたのか、二階からドタドタとうつろとカイが降りてきた。

 台所に立つノエルを見て、カイが「お昼ごはん?」とテーブルについている。


「今日は私が作るから、カイちゃんゆっくりしてていいよ」

「やった~! ノエちゃんの作るご飯好き!」

「二人とも聞いてよルミがさあ」


 料理をしながら二人に話すと、二人も笑った。

 正直なところ、ルミに言われたことはまんざらでもないのだ。料理を作るのは好きだし、美味しそうに食べる顔を見るのも好きだ。

 思えばはじめてルミに会ったときもそうだった。美味しそうに食べる彼女の顔を見て、嬉しかったのだ。


 お酒に合うように、だけどしっかりお腹にもたまるように、談笑する家族の声を聞きながらニワチキンの甘辛煮丼を作った。自分の分だけは丼にせず、昨日のパンに具を挟んで食べることにした。


「ありがとう、ノエル」


 ルミがパァッと顔を明るくして、丼を食べ始めた。フレンとラウダとアルはいないが、三人の分はとりあえずラップをかけて置いておいた。

 三人で依頼に取り組んでいるらしい。


「うまい! 酒に合う!」


 口元に米をつけて言うルミを見て、ノエルは「ふふっ」と笑いながら具を挟んだパンを食べた。米と酒に合うようにしたが、パンにもしっかり合う。少し固めに焼いたパンに、柔らかく甘辛い味に煮付けた肉と根菜が絶妙に合っていた。

 これなら酒も飲めそうだ。


「あ、カイちゃんのお師匠さんのことは結局よくわからなかったよ」


 言うと、カイの手がピタリと止まった。


「そっか~、あの人自分の足跡消すの好きだからな~」

「ごめんね」

「ううん、いいんだよ~ありがとね」


 言って、再び丼を食べ始めている。

 今回の事件はわからないことが多いし、いまいちスッキリとしない。もっとも、スッキリ爽やかに終わる依頼ばかりではないということは理解している。

 だから、この家族の温かな食卓と笑顔だけで、今は満足だった。


 サンディも、もう大丈夫だろう。アイコやルミともすっかり仲良くなって、談笑しながらご飯を食べている。そこには以前感じた遠慮はない。

 心から友達になれたことを、ノエルは喜ばしく思った。

もし面白ければ、ブックマークや評価をしていただけると大変ありがたいです。

よろしくお願いいたします。

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