56.グリムとの久しぶりの再会
気がつくと、真っ白な空間にいた。そこに佇む一人の女性を見て、ノエルはため息をつく。この空間も、この人とも久しぶりだ。
言いたいことは山程あった。ノエルは立ち上がり、自身の生みの親であるグリムをじっと見据える。
「あの、どうして精霊さんのこと教えてくれなかったんですか?」
グリムはわざとらしく顔を逸らした。
「状況が落ち着いてきたらと……」
「だったら昨日とか一昨日とかに話してくれてもよかったじゃないですか」
実際、昨日と一昨日は状況が落ち着いていた。魔薬事件が終結し、魔女の家の日常が戻ってきたのだから。カイにプレゼントとして小型転送機を買ったり、カイが黄金の歯車像を持ってきたり、ただ平和なだけの日だった。
精霊探しをしているのは知っているはずなのに、どうして教えてくれなかったんだろう、と文句のひとつも言いたくなる。ガウディウムに話が通っていたのなら、尚更だ。
「覚悟を試したかったのです、要らない心配でしたが」
「本当かなあ……どうもなんか変な気がするんですよね」
「娘に嘘は言いません」
「ならいいんですが、それで今日は何の用ですか?」
ノエルが肩を竦める。するとグリムは頬をぽりぽりと掻いて、目を逸らした。何か言いにくいことでもあるのだろうか、と訝しんでいると、彼女は意を決したように口を開く。
「残りの精霊の居場所を全てお教えしようと……」
「なんで今!?」
どうも、この救世主はタイミングが悪い。落ち着いたら教えると言いながらガウディウムのことは引っ張った割に、今度はこの立て込んでいる状況で残りの精霊の居場所を全て教えるという。
正直、覚えていられる気がしなかった。
「書面で教えてください……うつろに持たせるなりして」
「あ、その手がありましたか」
「だいたいなんで、こんな思わせぶりな空間に呼び出すんですか! せっかく良い夢見られそうだったのに!」
ふんっ、と言って腕を組んでグリムから顔を逸らす。頬を思い切りふくらませると、グリムが頬を突いた。口からぷひゅーと、間抜けに空気が抜けていく。
「カリカリしないでください、傷ついちゃいます」
「ふんっ! とにかく今精霊さんの居場所教えてもらっても、立て込んでるんで!」
「わかりました、後日うつろに書面で届けさせます」
「そうしてください! 教えてくれてありがとうございます! じゃあまた!」
ノエルは地面に倒れ込んで、ふて寝した。自発的にこの空間を去る方法がわからなかったから、苦肉の策だった。
「反抗期ですかね」
その言葉に思わずツッコミを入れそうになったが、構わず目を閉じる。
それからノエルは夢を見ることもなく、再び深い眠りについた。
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