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6:夏休み計画

あんなに行きたくなと思っていた学園は、いざ行ってみると最高の場所だった。授業は・・・実は退屈だ。同好会にいる先輩にお願いして2、3年分の教科書すべてに目を通してしまったので、やる事が無くなってしまった。だが、先輩と同好会の入会条件の中に授業には出席するとあるのでサボる訳にはいかない――。



「モリア、今回の総合順位は6位だったね!」


そう言って話しかけてきたのはリズ・ベルトニー。なぜか入学式から懐かれてしまい、移動教室やグループ行動の時、良く話しかけて来てくれる。まぁ、僕が本を読んでいる時など邪魔をしないのでかまわないが



部屋割りの一人部屋特典は10位まで有効、それならわざわざ1位を取る必要がない。入試は母に騙されたからあの順位だっただけで、毎回の試験は手を抜いている。めんどくさい・・・それなのに、なぜだかディスペルは納得できないのか、毎度順位が出るたびにこちらを睨んでくる。ご苦労な事だ





「う”~ん・・・わからない」



放課後、同好会に顔を出すと3年のサリー先輩が何やら頭を抱えて唸っていた。


「こんにちは、どうしたんですか?」


「この問題が・・・全然わからん」


陣の配置に使う魔数学の計算だった。あぁ、使う公式を間違えてる・・・


「サリー先輩、こっちの公式使うといいですよ」


「・・・!!!」



解き終わった用紙を手に何度のお礼を言われ、提出してくる~と先輩は去っていった。

あのくらいなんてことないのに・・・、初めてのことに心がむず痒いような落ち着かないような――


「あれ?サリー、いなかった?」


そう言って入ってきたのは同じ3年生のニック先輩。


「今、問題が解けて出ていきました」


「あれ?解けたんだ!・・・あぁ、モリアが教えてあげたの?」


「?公式を教えただけですよ?」


「今回の順位は?」


「6位です」


「あれ、3年にならないと習わない高等魔数学なんだけど、1年の順位は6位。やっぱりモリアは面白いね」



この人は雲のような人だと思った。普段は実態が分からず漂っているふわふわした人。でも、雨も雪も雷だって内包している。適切な距離大事!ニック先輩にも宿題があるのか聞いてみたところサリー先輩だけだったらしい。なんで?



「あの教員、平民嫌いで有名だから」



そういったニック先輩の声音は温度も色もなかった・・・。

こんなつまらない話はやめようと話題を切り替えたニック先輩に聞かれたのはこれから始まる夏休みの計画についてだった。



「モリアは領地に帰るの?」


「いいえ、片道1週間もかかるし、往復で2週間の日程を考えると寮に残ってここの書物や図書の本を読みつくします」


「・・・?モリアは知らない?寮は夏休み閉鎖されるから必ず帰らないといけないのだよ?」



ほわほわした言い回しだが、とてつもない爆弾を落とされた





ニック先輩の言葉を疑っているわけではないが、今日は珍しく同好会のメンバー全員がそろったので聞いてみた。



「・・・先生、夏休み寮が閉鎖されるって本当ですか?」


幻想圏・特に幻獣を愛してやまない顧問のカーデル・カタルフィー先生、魔草薬学専門だ。何で幻獣の先生ではないのかって?愛しすぎて授業にならないそうだ。オタクは語ると早口になる。



「えぇ、そうですよ。なのでご両親にしっかり顔を見せに行ってくださいね」



普段は丸眼鏡に薄灰色の髪をサイドで結んでいる温和な先生なのだ。


「先生、僕、夏休みの間ここに住みます」


「・・・提案でもないのですね。でも、それは困りました。実は、職員もすべて追い出されます。う~ん、困りましたね」


先生が言うとさほど困ったように聞こえないから不思議だ。


「モリア、それなら家に来るかい?」


「お城はもっと嫌です。サリー先輩、泊めてください」


「えっ、ムリムリ。俺ん家、家族みんなで雑魚寝だよ」


ニック先輩の誘いはうれしかったが、とてもじゃないが落ち着かない。サリー先輩には断られてしまった。う~ん・・・どうしたものかと頭を抱えていると、


「それなら、俺の家に来ればいい」



先輩の言葉にニック先輩、サリー先輩、カタルフィー先生もピタッと口をつぐんだ。それから珍しいものを見るように3人が遠慮なしに視線をよこしている。



「来ないのなら、それでも構わないが」


「行きます!ぜひ行かせてください!」



こうして夏休みは先輩の自宅にお邪魔することが決定した。ちなみに夏休み後半にはニック先輩も来るらしい。先輩の実家であるガスタルバーグ領は海に面しており、別荘地および貿易などの輸入業で栄えている領地だ。その領地を治めている現当主ナダルグ・ガスタルバーグは海の守護者と言われている。



確か契約している幻獣が海龍リバティ・・・そういえば、どうして先輩は領地が海なのに山の属性であるスコティウェリルと契約をしたのだろう?



楽しんでもらえてますかね?お読みいただいてありがとうございます

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