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56:新たな門出

「ニック先輩、サリー先輩、卒業おめでとうございます。」


学園だけではなく、国自体も大きく揺るがしかねない事件が続いたため、今年度の卒業式は、卒業生とその関係者のみで執り行われた。どうして僕たちがいるのかって?それは、数日前にさかのぼる――。




「おい、モア。」

「なんですか?ガムロさん」


「おまえさんのパートナー、王都に屋敷を持ってるんだろ?」

「・・・、えぇ、僕もしばらくお世話になった事がありますが・・・?」


「それならちょうどいいな。ガキどもの拠点作りに行くのに、しばらく滞在したいから、よろしく」

「はぇ?えッ、ちょッ!えッ!」


本当にあの人は無茶を平気でゴリ押ししてくる。スカーに相談したら、すぐに手紙を出してくれ、返事はガスタルバーグの紋章付き馬車が我が領に二台やって来た。そこからすぐ、母様、義兄に挨拶して、予定より2週間早く僕たちは王都へと帰ってきた。


それからすぐガムロさんは、昔の馴染みに会いに行ってくると出掛け、トパーズとホヌを残して四人も出掛けてしまった。さすがに知らない街なので、お留守番を言い渡された二人はしばらく機嫌が悪かったのだが、なんとここで、スカーの妹君であるナディ様が王都の屋敷に領地から出てきたのだ。



「モリア様、お久しぶりでございます。その節は大変お世話になりました。」

「ナディ様、こちらこそ、またしばらくの間お世話になります。こちらの2人を紹介させてください。縁あって僕の家族になりました。ホヌとトパーズです。」


「ホヌです。」

「トパーズです。」


僕は、彼らに身の回りの世話を、頼むつもりは全くなかった。しかし、侍女や従者と紹介してしまうと、世話を頼まないといけなくなる。なので、詭弁上、家族と紹介することにした。


「まぁ、それなら、私と遊んで下さらないかしら?」


しばらく庭で遊んだ後、トパーズが女の子だと知ると、三人は仲良く屋敷に入って行き、ファッションショーを楽しんだのだとか―――。へそを曲げていた2人の機嫌も直り、本当に助かった。


その日は、結局誰も帰っては来なかったのだが、次の日、なぜか全員ガムロさんに首根っこをつかまれ、帰ってきた。



「モア、お前さんなんで、こいつら野放しにした?」

「何かありましたか?」


「根回しして、潜伏先にしようと思ってた場所の幹部とバチバチにやり合ってる最中に出くわした。」

「あぁ~・・・、それなら、潜伏させても、そのうちダメになってたはずなので、初めからわかってよかったですね。」


「ポジティブか!」


何故か僕は、ガムロさんに理不尽にキレられた。その時、ちょうど話を聞いていたダン先輩が、


「あの、俺の親父が別部隊で、潜入、情報特化型の隊を持ってるんっすけど、そこの王都支部に入れないか聞いてみましょうか?」


「・・・ダン先輩、基本そういう事は、機密事項なんですけど、堂々と言ってもいいんですか?」

「ん?あぁ、おやじが、なんかよくわからんけど、お前には食い込んどけって言われたから、ここかなと思って!」



渡りに船だと、お願いしてみた。しかし、ダン先輩のお父さん、今の所あったことはないのだが、出来たらこのまま会わない方がいいのかもしれないと、思ってしまった。


とにかく、これで王都にいる間の彼らの拠点は何とかなりそうだ。肩の荷が下りたところで、王都の街を散策しに行こうと言う事になり、街に出たのだが、姿が見えるように行動していたのは、僕とスカー、ダン先輩とホヌ、トパーズ、ナディ様だけ。他は隠密行動だったり、出掛けること自体パスと言われた。



ホヌとトパーズが初めての事に目をキラキラさせながら、嬉しそうに街を歩いていたのが何よりの救いだ。


「何か買おうか?」


露店の前で立ち止まった二人に僕が声をかけると、


「いらない」

「見れるだけで十分」


そう言って露店から離れて行ってしまった。すると露店の店主が、


「これとこれ、熱心に見てたよ。」

「それなら・・・」


こうして僕は必要なものの買い物を済ませ、合流した。しばらくまた歩いていると、


「あれ?モリアだー!」


聞き覚えのある声に振り返ると、そこには、兄弟と一緒に買い物をしていたサリー先輩の姿があった。


「領地に帰ったんじゃんかったの?」

「急遽、野暮用が出来まして、二日前に王都に帰ってきました。今は、スカーの屋敷にお世話になってます。」


「そうだったんだ!てっきり卒業式があるから、来てくれたのかと思った。」

「えッ?」


「あれ?知らなかったの?3日後卒業式があるんだ。淋しくなるね~。ニックもこんな別れ方はスッキリしないって言ってたよ。」


確かにニック先輩とも、長いこと会っていない。


「僕たちも学校の中、入れるんですかね?」

「制服着てたら大丈夫でしょ!」



そう言われたので、卒業式当日、僕、スカー、ダン先輩は卒業式が終わる時間まで、同好会の部室に隠れていたと言う訳だ。





「サリーが何か企んでいると思ったら、ありがとう。とてもうれしいよ」

「黙ってようと思ったのに、そわそわし過ぎてバレちゃった。」


胸元に青い炎のバラのコサージュを付けている二人は、卒業証書を手に部室に現れた。それから時間の許す限り、これまであったことを存分に話した。



「カタルフィー先生が内通者だったのにも驚きだったけど、老人だったというのはいまだに信じられない」

「部の発足を提案してくれて、尽力してくれてたのにね~。」


「先輩たちは卒業後の進路は決まっているんですか?」

「僕は父の仕事の補佐かな」


ニック先輩のお父様は外交官だ。


「俺は、補佐の補佐で雇ってもらうことになった」


卒業後も変わらずこの二人は一緒らしい。なんだかホッとした。


「そうだった、もうしばらくしたら、王家より発表があると思うけど、先に伝えておくね。今回の件で、他国も危機感が増したんだろうね。ドラグーンを中心に五か国同盟が可決した。」



ニック先輩の言葉に、もう一波乱ありそうな予感がした。



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