54:保護までの経緯と昼食会
※ちょっと心がモヤモヤする表現が入っております。ご注意ください!
さて、それでは、僕はガムロさんのお望み通り動くことが出来たのか、答え合わせの時間だ。
「これで満足いただけましたか?」
「上々だ。それから、そいつら全員、お前のだからな。」
「・・・、お断り――・・」
「ちゃんと許可はとってるぞ。そいつらは全員、お前さんのだ。好きにしろ」
人間六人を好きにしろと?許可を取っていると言う事は、母様も了承済みと言う事だ。何でさっき言ってくれなかっ・・・。僕がこうなる事が分かってて、あえて黙っていた、だろうな。昔ペット禁止を言い渡したのは母様だから、これで乗り切ろう。
それで、交渉に行ったのだが、あえなく撃沈。まぁ、口で敵う相手ではないのは、初めからわかっていた事だったのだが・・・。
※
「スカー、ダン先輩でもいいのですが、」
「モリア、男とは時に、諦めも肝心だぞ!」
「俺はモアで手いっぱいだ。それより、あのガムロさん、いったい何者だ?」
「う~ん・・・、僕も物心つく頃には、町にいましたし、いろんな人に聞いても、肩書が盛りだくさん過ぎて、どれが本当なのかわからないです。」
元傭兵、元盗賊、元海軍、元騎士、元暗殺者、元闇ギルドボス、元諜報員etc.・・確かに、それを疑うだけの、様々な技量を持っている所が厄介なのだ。
出身地も謎、年齢も謎。謎だらけで、解き明かす手立てもないので、僕にしては珍しく諦めたのだ。たぶんだが、母様は知っている様な気がする。本当に謎な人物に、僕を預けるはずがない。
「それで、あいつらどうするんだ?」
ダン先輩の言ったあいつらとは、アンバーたちの事である。ガムロさんが母様の所に行く前に軽く教えてくれた経緯は、こうだった。
…
今回、わざと隙を作り、エルラドから賊に扮した奴らが攻めてきた。その際、切込み特攻で、捨て駒にされていたのが、彼らだった。ミカゲ、ヒスイ、アンバーには服従の首輪が、ハウライト、トパーズ、ホヌには爆散魔術布で作られた上着を着用させられていた。
「実に胸糞悪いが、よく使われる手だ。」
そう言って話してくれたガムロさんの顔は、―――すごかった。
話を戻そう。瞬時に気づいたガムロさんは、まず服従の首輪をしていた三人の意識を刈り取った。気絶させれば、命令が無効になるからだ。それから、爆散魔術布の上着を繕ってある縫い目の所で切り裂いた。
言葉にすると陳腐だが、実際は、全速力で走っている馬の上から、手のひらサイズの的ど真ん中を狙うようなものだ。はっきり言って無理である。
そうして、保護した後、胸糞悪さも相まって、敵方を全滅まで追いやった一人である。何人かは敵方にわざと情報を流すために、逃がしたらしいから、完全にブチギレていたわけではない。とは本人談
「首輪、よく取れましたね。」
「あぁ、どうせ死ぬからと、粗悪品を使ってやがったのは、運がよかったのかもな。」
だが、首輪が外れてからが大変だったという。とくにアンバーがハウライト、ホヌ、トパーズを守ろうと、ガルガル状態がしばらく続き、ヒスイとミカゲがさらにそれを守ろうと、警戒態勢をしばらく解かなかった。
そこに、チョッカイをかけに行った町人が、何人か怪我をしたらしいが、警戒がゆるまないだろうが!とガムロさんに鉄拳を食らった・・・らしい。自業自得である。
「良く警戒解いてくれましたね。」
「モリーニア様が行った」
「あぁ、なるほど。」
うちの母様には特技がある。それは、動物でも、人でも、警戒心を解かせるという特技だ。どうやっているのかは、誰にもわからない。僕は、追いかけ回し過ぎて相手が根負けするか、より一層嫌われるの二択なので、うらやましい。
…
「しばらくは、ガムロさんが鍛えるといっていたので、預けることにします。」
「預けっぱなしにするなよ?おまえが主人なんだからな?」
「はい、朝交代で、食事の時間をとる事にしました。」
新学期が始まるギリギリまで領地にいる予定なので、その間に何とかなるだろうと考えている。スカーたちも、彼らに混ざってガムロさんの指導を受けるそうなので、良好な関係が築ければ、王都に連れて行っても、何とかなるだろう。
事件が起きたのは、次の日の朝の事だった。本館にいるはずの義兄の幼馴染、そして現在では、執事として働いている、マキシが尋ねてきた。
「おはよう、モリア。おかえり」
「マキシ、おはようございます。だいぶ久しぶりですね。今日は何かありました?」
僕がそう言うと、マキシは苦笑し、
「モリアがリームに提案したと聞いていたが、忘れたのか?」
そう言って僕に一通の招待状―――。
「ガスタルバーグ公子様と、団長子息様を昼食会にお招きいたしたく、主人より預かってまいりました。軽装で構いませんので、どうぞお越しください。」
心の中で〝あっ!〟と思ったが、表情には出さず、しかし、スカーには伝わっているだろうな~と思いながら、彼らが鍛錬しているであろう場所に急いだ。
※
昼食会の席に参加したのは、母様、義兄、義姉、甥、僕、スカー、ダン先輩だった。義兄がちょっと心配だったが、何とか昼食会は終了。
「それでは、私と子どもは先に失礼させていただきます。公子様、ダン様、ゆっくりおくつろぎください。」
そう言って、マーリア様とリムリスが退出して行った。まだ、リムリスも6歳。そして今日は参加していないが、下にもう1人、リディムがお留守番だったみたいだ。リディムはやんちゃな子で、もしかしたら参加できなくてへそを曲げているかもしれない。
談話室に移動した義兄と、スカーは今回の被害状況について、意見交換をしていた。後ほど、スカーはナダルグ様に手紙を書くのだろう。母様は黙って義兄の横に座っているだけだった。本来なら、母様が現当主のはずなのだが、義兄に任せていると言う事は、そういうことなのだろう。
世間話も交えながら、ある程度、話がまとまったのか、
「何分、田舎なもので思う通りの生活が出来ないとは思いますが、どうぞゆっくりしていってください。」
これでひと先ず、貴族としての体面と義務は終了だろう。スカーとダン先輩は慣れたものだった。お互い席を立ち、お礼を述べて、僕たちは帰路についた。
帰りの馬車の中、
「おまえの兄ちゃん、苦労してたんだろうな~」
「どういう意味ですか?」
ダン先輩になんとも失礼な一言をもらった。ガムロさんにお願いして、鍛錬を追加してもらおうと誓いました。




