53:プレゼント
「う~ん・・・、皆さんの呼び名は個性的で、生活に支障はないのでしょうが、もしよかったら、お近づきの印に、僕から名前をプレゼントさせてもらえませんか?」
僕の言葉に興味をそそられたのか、赤髪のアーは、底知れない瞳にニヤニヤ笑いをして返事はなし。女の子二人は、興味があるのか、チラチラこちらをうかがっていた。僕だって喜んでもらえる人に贈り物はしたいので、一番年下のトーとホーの前にしゃがんだ。
「もう挨拶は先ほどしましたね。僕の名前は、モリア。」
「あたし、ホー!でも、名前欲しい!」
「トーも!」
かわいい。是非このまま育って欲しいものだ。
「それなら、ホーは〝ホヌ〟トーは〝トパーズ〟」
二人ともそれぞれ、何度か口の中で自分に与えられた名前を呟いていた。
「ホヌ、ホヌ、うん、かわいい!ねぇ、どうして、ホヌ?」
「ホヌは、ある遠い国で採れる天然石の名前で石言葉は、幸運、平和、長寿。トパーズは、友情、希望、成功。気に入ってもらえた?」
僕と、2人が地べたに座り込みながら、そんな話をしていると、お次はホヌより少し年上だろうか?ハーと呼ばれている子が、近づいてきた。
「なぁ、なぁ、俺は?」
「ハーだったね。う~ん、〝ハウライト〟石言葉は冷静。」
「えッ!冷静?ハーから一番遠い言葉じゃん!」
少しづつ距離を詰めて来ていたアー、ミー、ヒーがハウライトの名前を付ける頃にはだいぶ近くに寄ってきていた。野生動物を手名付けている気分。だが、アーの言葉にハーはムッとしへそを曲げてしまいそうだった。
「ハウライトは、心身を浄化して、肉体と精神のバランスを整えてくれる石で、心に閉じ込められた、負の感情を和らげて、悲しみを癒す効果があると言われているんだ。でも、イヤなら別なものに変えようか?」
「えー!ハウライト、ぴったりだよ!私が落ち込んでる時、すぐ気づいてくれるもん!」
「ボッ、ボクも!」
ホヌとトパーズの言葉に、ハウライトは驚いた後、照れた。ベリーショートで、前髪もおでこの真ん中位なので、頬も耳も真っ赤なのが丸見えで、先ほどまで警戒していたのがウソみたいだった。
「――・・・でぃぃ・・。」
「うん?」
「ハウライトでいい!」
僕はアーの方を向いて、
「君は、〝アンバー〟幸運の象徴、優しさ、愛。」
「――、はッ、呪いの象徴の間違いだろう!見ろよ!この髪色に目の色。本当に幸運なら、捨てられることもなかっただろうさ」
「いや、アンバー。君の愛は深い。愛を与えることができるという事は、その相手は幸運だ。だから、間違ってない。」
僕は揺れ動く赤い瞳を見ながら、きっぱり断言した。そうじゃないと、トパーズやホヌがこんなに純粋な訳がない。うるせぇと悪態をつくと、少し離れたところに腰を下ろした。
さて、残りは、双子の前髪の分け目によりミー、ヒーと名前を付けられたこの2人。だが、
「さっきまで、こっちがミーでこっちがヒーだったんだけど、この場合、どう名前を付けたらいいのかな?」
実は、ここしばらく、半分しか溶け込んでいなかった幻精が瞳に完全に溶け込んでしまった。まぁ、半分溶け込んでしまった段階で、取り出すことは不可能だったのだが、それが完全に溶けたことにより、僕の体にどのような影響があるのか、言葉は悪いが、実験中だ。
初めはもやだった。それが一体何なのか分からなかったのだが、日を追うごとに、見え方が鮮明になっていき、気づいたのは、そのまとっているものが魔力であり、人により大きさ、色、形が違うと言う事だった。そして今、新たなデータがとれた。そっくりな双子でも、魔力の形状はちがうと言う事だ。
双子は、顔を見合わせ、〝目は口ほどにものを言う〟そんな表現がぴったりな表情だった。
木の陰に隠れて、前髪の分け目を二人とも無くして出てきた。僕は、髪型で見分けているわけではなかったので、初めて見た時の髪の分け目で、
「こっちが、ミーで、こっちがヒー。」
目の前から無言で一人が消えた。どこかに隠れているらしい。残った方を当てればいいのかな?
「ヒーだね。」
一瞬で二人は入れ替わった。
「ミーだよね。すごい!服装も一緒だから、他の人は間違えるね。みんなは分かるの?」
そう言って、アンバーに聞いてみると、
「わかる訳ねーだろ。こいつら、そうやっていつも遊んでんだよ。見分けられたの、初めてなんじゃないか?」
「あたしも、いつも二人でいるから、わかんない」
「ボッ、ボクも・・・。」
なぜ二人がこのような事をするのか、誰もわからないらしい。それなら、聞いてみるしかないと、前を向くと、いつのまにか二人に戻っていた。
「どうして見分けがつかないようにしているの?」
何の感情もないかのように、凪いでいた二人の瞳が、初めて揺れた。今日会ったばかりで、答えてはくれないかなと、話題を変えようとした時、
「見分けが・・・、見分けがつくと、離れ離れになる。」
「一緒に居れなくなる。」
声もそっくりだった。この言葉からわかるのは、二人がお互いと離れたくないと言う事。
「ここには、君たちを引き裂く様な事をする人は、誰もいないよ。僕が、保証する。ミーは〝ミカゲ〟ヒーは〝ヒスイ〟。ミカゲは、攻め、守り、魔よけの意味が、ヒスイは、幸福、幸運、忍耐の意味がある。」
お互い初めて、個人的になにかをもらったのだろう。
「ヒスイ」
「ミカゲ」
喜んでもらえたようで、僕もなんだか嬉しかった。




