52:恐怖の鬼ごっこ
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俺とダン以外の子どもたちは、クモの子を散らす用に、それぞれ別方向に、あっという間に見えなくなってしまった。その場に立ち尽くしていると、
「早く逃げねぇと、お前らが一番に捕まっちまうぞー」
庭に置かれていた椅子に腰かけて、ニヤニヤしながらこちらを見ている。俺達だって、領地ではそれなりに訓練に参加したり、学園でも、騎士科の生徒に交じって鍛錬をしていたし、体力には自信があった。
・・・15分後、俺とダンは、仲良く待機場所になっている木の下に座っていた。この待機場所、出られないように、四隅にクズ魔石を置き、簡単な結界になっている。
「おい、おい、おい、おい!どうなってやがる」
俺達が逃げていたのは、裏手にある森の中。木が生い茂り、足場も悪く、逃げるのは悪手だと思い、しばらく行った先で、草陰に身を潜めていた。息を殺し、身動きをとらず、ジッとしていたのだが、ぽんと肩に手を置かれ、
「みーつけた」
待機場所に担いで連れてこられた。ダンとは最初で別れていたので、どこに逃げていたのか、知らなかったが、先に捕まっている所を見ると、俺と同じでどこかに身を潜めていたのだろう。ちなみに、ガムロさんは体長2m、胸板も厚く、鍛え抜かれた傭兵と言った風貌だ。性格はたぶん、よく言えば寛大、有体に言うと適当・・・。だが、ひとたび獲物を追う側になると、足音、気配が森に溶けた――。
…
「うっ、ぅッ・・・、ぐすッ、うぇッ、ふッふッ――・・・」
俺達のすぐ後に、捕まってきたのは、推定10歳未満の子どもだった。よっぽど悔しかったのか、ぼろぼろ泣いている。俺とダンはどうしたものかと頭を抱えていると、
「あ~ぁ!今日も捕まった!」
「あー!また、トーが泣いてる!」
ガムロさんの両肩に抱えられ、追加で二人やって来た。待機場が一気に託児所になった気分だ。
「兄ちゃんたち、トーより先に捕まったのか?」
「名前、なんて言うの?あたしねー、ホー。」
カッ・・・、カオスだ。ドッと疲れが押し寄せたような気がする。どうしようか、考えあぐねていると、
「こんにちは、なんだか楽しそうなことしてますね。僕も一緒に遊んでもいいですか?」
いつの間に帰ってきていたのか、後ろにモリアがいた。
「こんにちは、初めましてですね。なんで泣いてるんですか?」
俺達の次に捕まり、ずっと落ち込んでいた、トーと呼ばれていた子にモリアは話しかけた。
「・・・つかまった――トー、ダメなッ、子・・・」
それから今度は、俺達に向かって質問してきた。
「ガムロさんは、始める時、何と言ってましたか?」
「・・・鬼ごっこをしよう」
「捕まえるぞだったか?」
俺、ダンがそう答えると、モリアは、そばにあったクズ魔石を、思い切り遠くへ蹴り飛ばした。
「さぁ、これであなた達は自由です。次は、なるだけ遠くに逃げてください」
では、スカーたちも、またあとで、そう言って、モリアもあっという間に、消えてしまった。
約束の一時間後―――。
「はっはっはっはっは!俺の勝ちだー!」
最初のあれはお遊びだったと、二回目の時に身に染みた。
俺達は、モリアのおかげで脱出することができ、二度目のチャンスを手にしたのにもかかわらず、あっけなく捕まった。それも、子どもを抱えながらの隠密行動――。敢無くお縄になり、先ほどの待機場に行くと、モリア以下、全員が捕まっていた。
「ガムロさん、罰ゲームの話は後にして、まずは、この子達の事を紹介してくれませんか?」
俺はてっきり、モリアは知っている子どもたちなのか、と思っていたのだが、どうやら違うらしい。
※
本邸から帰り、ラフな格好に着替えた後、とりあえず声をかけに行ったのだが、どうやら二人ともいないらしい。いったいどこへ行ったのか、外に出てウロウロしてみると、何やら子どもの無く声が―――。近づくと、クズ魔石による簡単な箱型結界が展開されていた。
これは、ガムロさんが、面識のない子どもたちを仲良くさせるためによく使う方法だ。と言うか、スカーたちもガムロさんからしたら、この泣いている子どもと変わらない、くくりなのだろうか?と可笑しくなってきた。
二人が困っていたので、助け船をだし、僕が仲間に入る口実に、みんなを逃がし、僕自身も隠れながら森を進んだが、学園にいる間に鈍ってしまったのか、すぐに確保された。ニヤニヤするガムロさんに、
「おかえり、モア。罰ゲーム楽しみだな~」
飛び込み参加、早まったかもしれないと、思ったのは内緒だ。あっという間に、全員が捕まり、初めて見る子達ばかりだ。いったいどこから連れて来たのか・・・?罰ゲーム説明の前に、お互い自己紹介から始めることを提案した。
「年齢の小さいヤツから、トー、ホー、ハー、アー、ミー、ヒーだ。」
「トー・・・///」
照れていて、かわいい。クリクリのショート金髪に緑の瞳の、たぶん女の子だ。
「あたしは、ホーよ。」
活発そうなストレートボブの女の子。茶金の髪に、茶の瞳がキラキラしている。
「ハーだよ。よろしくね」
深青の髪は、眉上の前髪がかわいく、にこにこしているが、その薄茶の瞳の奥は、警戒の色が濃ゆい。それに輪をかけてヤバいのが、赤髪、赤目のこいつ。僕と同い年らしい。
「アー、呼び名がないと不便だからって、そう呼ばれてる。気に入らないなら、すきに呼んでくれ。こいつらは、ミーとヒー、双子だから顔はそっくりだけど、前髪の分け目で名前が決まったから、わかりやすいだろ?」
薄茶の肩ほどまである髪の毛を後ろで無造作に括っている。二人の瞳にこれと言った感情は見いだせなかった。こんなに癖の強い人員を、いったいどこから連れて来たのやらと、視線を向けると、僕が一体どうするのか、試しているかのように、どうにかしろと、ガムロさんは組んだ足の上に片手を乗せ、その手に顎を支えさせ、こちらを観察していた。




