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51:里帰り

「本館の方に泊まれば、何人かメイドがいますので、身の回りのお世話をしてもらえますが、ここは、自分の事はすべて自分でしてもらいます。大丈夫ですか?」


ここまで連れてきて、今更聞くのもどうかと思ったが、念のため聞いてみると、2人はこちらでいいと言ってくれた。食事は僕が作りますと言うと、


「おい、それ大丈夫なのか?」


ダン先輩がとても失礼な事を言い、スカーは、授業の時に一度経験しているので、頼んだと言ってくれた。


「それなら、ダン先輩は携帯食か、本館に行って食事してきてください」


僕がそう言うと、ウソウソ、オレもこっちで食べると訂正していた。2人を案内したのは僕の寝泊まりしている部屋から続きになっている場所を用意した。普段から手入れはしていたので、大丈夫なようだ。


「それでは、荷物を置いて、しばらく好きなように過ごしてください。」

「モリアはどうするんだ?」


「気は進みませんが、本館に挨拶に行ってきます。」

「俺達も一緒に挨拶に行こうか?」


「いえ、子息とはいえ今までこの領に、上位貴族の方が来たことがありませんので、慎重に行かないと、義兄が倒れかねません。」


僕の言葉に、そんな大げさな――・・・マジ?みたいな顔をしていた2人に、大きく頷いた。


「ですので、本館にお呼びできるまで、好きなように過ごしてください。誰かに遭遇したら・・・、僕の名前を出してください。戦闘狂(バーサーカー)みたいなのがいるので、十分気を付けてくださいね。」



本館に向かう僕の後ろ姿に、それどうやって気を付ければいいんだよ!というダン先輩の叫びが届いたが、構っている暇はない。嫌な事は早めに終わらせる主義なのだ。





「ただいま戻りました」


義兄と、母の居る執務室に向かうと、ナダルグ様から派遣していただいた、補佐官コウカさんとドウカさんがいた。


「モア、おかえりなさい。公爵様から手紙は頂いていたのだけれど、出迎えに行けなくてごめんなさい。」


母様たちは、先月あった賊との戦闘による被害状況確認、その他もろもろの業務で手が離せないようだ。


「僕は大丈夫です。義兄さん。ただいま戻りました。」


義兄は書類から顔を上げずに、あぁ、とだけ返事をした。僕もそれにたいしたリアクションはせず、必要事項だけ伝えることにする。


「母様も聞いていてください。手紙にも書かれていたと思われますが、ガスタルバーグ領の公子と騎士団長子息が一緒に来ましたので、お伝えしておきます。過度な歓迎は不要、宿泊も別館で大丈夫な様なので、しばらくの間よろしくお願いします。」



よし、最低限のマナーは守ったと、さっさと帰ろうと踵を返し、歩き出そうとした時、椅子が倒れる音がした。振り向くと、立ち上がる勢いに付いて行けなかったイスが、倒れたと推測できるような態勢で義兄が立ち上がっていた。


「―――モリア、誰が・・、来て、ると?」

「ですから、公子と、団長子息がいらしてますがって、母様、手紙に書きましたよね?」



嫌な予感がして、母様に問いただすと、


「あら~?伝えてなかったかしら?」


あの顔は、わざとの時の顔だ。そろそろ経理や領地運用を覚えることに、目途が立ってきたのだろう。次のステップに移るための、練習として、スカーたちを使うことにしたのだろう。これまで母様が請け負ってきた、社交界への進出だって、跡継ぎである義兄と義姉がこなしていかなければならない。



母様は、僕にだけ伝えていることがある。領地や社交界の引継ぎがすべて完了したら、クケルトの貴族籍から抜けるそうだ。その後どうするのかは、教えてもらっていないが、まぁ、なるようになるだろう。



「!!すっ、すぐに晩餐の準備を!!あぁ、その前に、挨拶か??マーリア、マーリアを呼んで来い」


義兄さんはプチパニック状態であわあわしている。


「義兄さん、義兄さん!落ち着いてください。今日は付いたばかりなので、疲れています。明日または明後日、昼食に招待してください。服装は、軽装で構いませんか?それなら先方にもそうお伝えしておきますので、僕はこれで一度下がらせてもらいます。」



あとの事は、母様に任せて僕は足早に本館を去った。疲れた・・・・






モリアはあっという間に本館へ行ってしまった。残された、俺とダンは、とりあえず荷解きのため、案内された部屋へと入った。お世辞にもキレイとは言えないが、整頓された清潔な部屋だった。移動の疲れも相まって、この静寂が心地いい―――



「モア―!!!!!」



俺はベットから飛び起き、窓の外を見ると、そこには山賊顔負けの大男が、ニヤリと笑いながらこちらを見ていた。いつの間に入ってきていたのか、ダンが後ろ居たのでそれにも驚いたが、まずは目の前の敵?からどうにかしなければ・・・。どうするか考えていると、ダンが(おもむろ)に窓へ近づき、



「おっさん、モリアに何の用だ?」

「あ”ぁ?俺は、おっさんじゃねぇ!ガムロさんだ。おまえらもそう呼べ!」


「オレはダン、ガムロさん、モリアになんか用か?」

「おぉ、お前ダンて言うのか!そっちの兄ちゃんは?」


「えッ、あぁ、スカーだ!」

「スカー()、よろしくな」


そう言ったガムロさんは、こわい顔をクシャッと笑顔にした。それでも怖かったが・・・、どこか海の男たちを彷彿とさせる。


「ダン、スカー()、お前たち暇か?」


スカー()、ではなく、スカーだといつ訂正しようか悩んでいる間に、ダンがヒマだと返事をすると、それならちょっと遊びにつき合えと、誘われたので、動きやすい格好をして、外に出ることになった。





外に出ると、ガムロさんの側には、全部で6人。上は俺達ぐらいの年齢から、下は10歳ほどの子どもが集まっていた。


「よし、そろったな。モアは、・・・あぁ本館か!それなら、仕方ない。あとで参加させるか。」


俺達から居場所を聞く前に、思い当たったらしい。モリアは抜きで始めると言っているが、いったい何をするつもりなのだろうか・・・?ダンは、何かウキウキしてないか?


「それじゃ、まずは、俺が鬼だ!時間は1時間。1人でも逃げきれたら、お前らの勝ち。全員捕まったら、お仕置きだからな?俺のスタートは5分後だ。」


唐突に、鬼ごっこが始まった。


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