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48:チェックメイト

「そうだ・・・。そうだよ!僕のスカーは、僕のしたことを否定するはずない。ありがとうって言って、誉めてくれるはず――。だからお前はちがう。彼と同じ顔だけど、お前じゃない!」


「―――ユリウス、君と過ごしたあの頃の思い出は、確かに楽しいものだった。純粋に未来の事を話したり、俺だけでは絶対に出来なかった、スリルあることだって2人で、時にはダンも交えてやったな・・・。楽しかった、今でもかけがえのない思い出だ。―――・・・だが、今の君は、敵だ」



苦しい、辛い、悲しい、だが許すことはできない。決別の時だ―――。


「お別れだユリウス。せめて君の事は、俺が捕まえる。」


スカーの覚悟が決まった。これで僕も、何の憂いもなく戦える。


「僕を捕まえる?君たちの様に学園で、ぬるま湯に浸かっている奴らと一緒にするな!」


腰に差さっていた短剣を抜き取り構えた。隣のスカーも長剣を構える。その時ユリウスの後ろに現れたのは、キャリー。空を優雅におよくクラゲの一種、あの笠の間に入ると、気配も姿も消える。


「お茶会に予定外のお客さんを参加させたのは、あなただったんですね。」

「そうだよ。あの時、死んでくれればよかったのに、ほんと邪魔。」


「と言う事は、スカーが確実に参加していないと、知っていたと言う事になりますよね?あなたの情報源は、いったいどこだったんでしょう?」


「そんな事、自分で考えなよ。」



その時、悲鳴が聞こえた。視線を向けると、敵味方関係なく、植物の弦が身体をがんじがらめにして、吊り下げられていた。



「・・・、やっぱりあなたでしたか、カタルフィー先生」

「ふふッ、ユリウス。もうこの子達は用済みなのでしょう?なんだか予定通りに行かないので、ここは一度放棄して、帰りませんか?」


「先生!なんで?なんでオレ達まで!」


吊るされながらも吠えていたのは、リシベルだった。


「オッ、オレは、先生の言う通り動きました!なのにどうして!」

「うーん・・・、思ったように動いてくれなかったので、もう結構です。」



こいつらがあの時話していた先方とは、たぶんだが先生の事だったらしい。そして、ユリウスの情報源も先生だったのだろう。


「モリア君は、気づいていましたね。どうしてわかったのですか?」

「誘導があからさますぎたから、でしょうか?5年前から友人になったアヴィ先生。まるで、そちらを疑ってくれと用意されているようで、違和感がありました。」



もう一つは、幻獣を見せてくれなかった事にも引っかかった。


「そこで、先生にもサプライズ。」


僕がそう言った瞬間、ダン先輩とダニエル様を縛っていた植物だけ、枯れた。ドラーマドの天敵、サンドリザードの攻撃だった。


「私たちは、幻獣まで相性が悪かったのですね。アヴィ?」

「あぁ、俺も知らなかったよ。契約していた幻獣が違うなんて事もな。」



そこにいたのは、リザニア帝国騎士の隊服に持を包んだアヴィ先生だった。


「リザニアの騎士だったのか・・・。モリアは気づいていたのか?」

スカーの疑問にすかさず、

「はい、怪我の手当ての時、剣ダコがあったので」


「でも、私を疑うにしては、あまりにも材料が少なくありませんか?」

「――・・いい加減その口調、やめてもらえませんか?姿も戻したらどうです?見た目の重さに対して、足音が軽すぎるんですよ。気持ち悪い。」


僕がそう言うと、ヒッヒッヒッと笑い出し、カタルフィー先生の姿が蜃気楼のようにゆらめき、老師があらわれた。


「愉快、愉快。ユリウス、この小僧、連れて行かんか?ワシ気に入った」

「「嫌ですよ」」



変な所でユリウスとハモッてしまい、気まずさが一瞬流れたが、


「おまえさんたち、実はとても気が合うんじゃろうな。同族険悪という奴か?」

「アヴィ先生、早くサクッとやっちゃって下さい。」



少し時間稼ぎが出来たので、その間に、ダン先輩とダニエル様が縛られた状態のまま落とされた3人を引きずりながら、戦線離脱した。それによりこの場に残ったのは、僕、スカー、アヴィ先生、老師、ユリウスとなった。



「して、ユリウス。この状況いったいどうするつもりじゃ?」

「・・・、多勢に無勢、撤退します。」


「アヴィ先生、そちらはお任せします。」

「捕まえた後は?」


「それも、すべてお任せします。」

「了解した。感謝する」



そう言うと先生の側に、2人ほど人が増えたので、気にせず僕たちはユリウスに集中することにした。まず走り出したのは、スカーだった。長剣の攻撃を、ユリウスは上手くよけながら、所々、短剣で反撃していたが、あまり殺意が感じられなかった。



少しずつ、少しずつ、ユリウスが図書館のある方へ向かって、後退している。僕たちは、そちら側へ行かせないようにしたが、もう残り数メートルの所に来てしまった。彼も勝ちを確信したのか、


「僕はまた、帰ってくる。何度だって態勢を立て直して、この国をつぶしてやる。」


そう言って、幻獣を呼び僕たちの目の前で姿を消した――。


「わぁー!!」



僕とスカーは図書館の中に設置した罠の場所まで移動した。


「何で?僕が最初に入った時には、こんなもの無かったじゃないか!おい、これはどういうことだ!」

「幻想圏で、幻獣を捕縛するための檻です。これは、間違って人間に使わないように、安全装置があるので、人間が通った時には作動しません。」



隠密行動をするユリウス。そんな彼が契約するなら、それに特化している生物だろうとあたりを付けていた。そして逃走の時には必ず、その幻獣を頼るだろうという事も計画に織り込み済みだった。チェックメイトだ。



「出せ!今すぐ出せよ。」

「残念ながら、僕たちはカギを持っていません。そしてこの檻は、その辺の幻獣の力では、びくともしません。例外は・・・、ドラグーン位でしょうか?」



まぁ、実質不可能だと言う事を、ユリウスに突き付けた。あとは、騎士団に任せよう。もうこれ以上は、学生が関与するレベルを超えている。終わった・・・。と安堵したのは、僕の心情で、そこにいた彼の心はさざめいていた。



「スカー、僕はアヴィ先生の様子を見てきます。しばらくここを離れますが、監視をお願いしてもいいですか?」


僕の言いたいことは、これで伝わったと思う。するとスカーは、ユリウスからは見えない場所に、僕を引っ張って行き、ぎゅっと抱きしめた。そして小さく


「ありがとう」



引き返していく背中を見送り、僕も、図書館から外へと出た。


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