表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/56

46:彼の本性


「あの、ユリウスさん。僕、あなたに聞きたいことがあったので、ここに一人できました。僕の問いに答えてくれますか?」



モリア・クケルト。座学は優秀らしいが、魔力もなく、運動神経も並。ディスペルからの情報だと、こんな感じだった。遠目には何度か確認したことがあったが、近くで見ても、今の僕に始末できない事はない。時間もまだあるし、最近の彼の様子も気になるから、少しつき合うか。


「いいよ。僕に聞きたい事って?」


「ありがとうございます。では、5年前、ガスタルバーグ領の情報をリークしたのあなたじゃありませんよね。なぜ、偽装までして、姿を隠したのですか?」


「・・・なんで、僕の仕業じゃないって思ったの?」


「今までのあなたの仕事具合を見ていると、雑だったので。年齢によるものか、とも疑いましたが、あれは、人が違うというレベルだと思いました。」


「ふ~ん、君、運動面はいまいちだけど、頭はいいんだね。勧誘してもいいレベルだけど――・・・」


おまえは、僕に許可なく彼の隣に並んだから、気に食わない。だから無理だ。


「えぇっと、なんだったっけ?あッ、そうそうねぇ、君、僕の生い立ち知ってる?」

「――うわさ程度には・・・」


「そう、僕は、父が手を出した平民の子ども。母が早くに死んで、ほっといてくれればよかったのに、父親に引き取られた。そこには本妻と、同じ年の子どもがいて、もう地獄。でも、嬉しくないことに、僕、頭の出来が良かったみたいで、初等3年の夏の終わり、僕はクソみたいな親に隣国に売られた。」


あの毒親が、情報を売っている証拠を集めて、あの最後の夏、彼の父に助けを求めようと思っていたのに、逆に僕がしたことにされた。結局、僕には地獄しか待ってなかった。



「次の質問いいですか?」

「・・・、自由かよ。いいよ」


「ガスタルバーグ領を執拗に狙ったのは、なぜですか?まず王都から、エルラド側を制圧した後、ゆっくりガスタルバーグ領を追い詰めた方が、手間はかからないですよね?」



本当に惜しい人材だとつくづく思った。そう、本来の計画は、中央から半分を攻めて、その後に海側と挟み撃ちにして、制圧する計画だった。だが、そんな事をしたら、彼は確実にどこかで戦死してしまうか、負傷する。それなら、彼に被害の及ばない学生のうちに仕掛ければいいと、計画を急ピッチで進めたのだ。



「君、もう薄々分かっているでしょう?僕は、彼のためにしか動かない。国同士の争い?領土拡大?

?どうでもいい。僕は、昔彼が、僕に泣きながら訴えたことを、実現させてあげたかっただけだ。領主になりたくない。幻獣や幻想圏を思う存分研究できる研究者になりたい。だったら、納める領地が無くなれば、叶うでしょう?国が無くなったら、彼は自由だ。」



そうすればまた、僕と彼の時間が戻って来る。



「そんな事をしても、彼は喜びませんよ?むしろ、あなたを険悪するでしょうね。」

「そんなことない。初めは悲しむかもしれないけど、わかってくれる。だって、僕は彼を心から、愛してるんだもの。」


「あなたのそれは、愛なんですか?」


当たり前だ。僕は今まで彼のためにやってきた。これは、まぎれもなく愛だ。友愛も、もちろんある。だが、離れて、初めて気づいた。僕は彼を心から愛していたんだ。だから、どんな辛い事だって乗り越えた。彼のためだと思ったら、どんなことでもできた。だから、だから、彼はきっとわかってくれる――。



「あなたの愛は、ずいぶんと独りよがりな愛ですね。()()()()()には不要なので、お引き取りください。」



ずいぶんと長く話し込んでいたらしい、空が、紫がかってきた。夜明けが近い―――。


「彼は、僕のものだ!はっ、計画は順調に進んでいる。君とは、ここでお別れだ。大丈夫、僕がスカーと今後、幸せな人生を送るから、おまえはここで消えろ」



幻獣により、掛かっていた術が消えると、そこには僕を学園に手引きした3人がいた。



「やっぱりあなた方でしたか。ディスペル、スミス、リシベル。自分たちが何をしているかわかってるんですか?」


「やっぱりお前は気に食わない。クケルト、俺はバカじゃない。自分のしている事ぐらい理解している。」



さぁ、朝日が昇ると同時に、パーティーの始まりだ。僕はその瞬間が来るのを、胸を躍らせながら待ったのだが、いつまでたっても、その時が訪れることはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ